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運動の困難さはなくなるのか【発達性協調運動障害を例に考える】

投稿日:2022年11月1日 更新日:

発達性協調運動障害(DCD)といった発達障害が最近注目を集めるようになってきました。

発達性協調運動障害とは、簡単に言うと、粗大運動(全身運動)や微細運動(手先の細かい運動)などの協調運動に問題があり、それが生活上、支障が出ている状態のことを言います。

自閉症やADHD、学習障害と同じで発達障害の一つに含まれます。

 

それでは、発達性協調運動障害といった運動の問題は年齢とともに困難さはなくなるのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達性協調運動障害を例に取り、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、運動の困難さはなくなるのかどうかについて考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「辻井正次・宮原資英(監修)澤江幸則・増田貴人・七木田敦(編著)(2019)発達性協調運動障害[DCD]不器用さのある子どもの理解と支援.金子書房.」です。

 

 

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運動の困難さはなくなるのか【発達性協調運動障害を例に考える】

DSM-5によると、発達性協調運動障害の内容には以下のような記載があります。

有病率は、5~11歳の子どもで5~6%であり、発症は乳幼児期であるが、児童期、青年期、成人期まで継続する。

 

DSM-5によれば、発達性協調運動障害の有病率は5~6%となっています。

この割合は、例えば、自閉症よりも高い(1~2%)のに対して、運動の問題は、まだまだ社会的認知が低いということが言えます。

さらに、こうした要因には、自閉症は、発達凸凹やグレーゾーンなども含めると、自閉症の特性を持つ割合も増加するなど、研究の進捗や社会的な理解が進んでいることもまた、運動の問題が他の発達障害よりも理解が遅れている要因だとも考えられます。

しかし、問題となるのは、青年期や成人期以降も、運動の問題が残存するということです。

つまり、運動の困難さはなくならないケースが多いということが言えます。

 

 

引き続き著書を引用します。

発達性協調運動障害の子どもが抱える運動の問題は成長とともに自然に解消することは難しい。その点で、何らかの支援が必要になる。

 

著書の内容から、発達性協調運動障害など、運動の問題には、何らかの支援が必要だと言えます。

支援といっても、何か運動の特別なプログラムを必ずやらなければならないというわけではないと思います。

運動の困難さから生じる生きにくさに対して、環境を調整するなどして、問題を軽減・予防していくことがまずは最も重要だと考えられます。

 

 


そう考える著者の経験談を次にお伝えしていきます。

 

著者の経験談

著者はこれまで様々な療育現場(発達支援の現場)で様々な運動の困難さを抱える人たちと関わってきました。

その中には、大人になっても運動の困り感が残り続けている人たちが思いのほか多いといった実感です。

しかし、大人になると、困難さへの何らかの対処方法を獲得していたり、苦手さを周囲に伝えることができたり、また、未然に防止する方法などを持っているケースもあるため、子どもよりかは目立たないことがあります。

こうした人たちの中には、スポーツで自分に合った練習方法で運動スキルが上昇した、楽器の演奏を通じて手の機能が向上した人たちもいます。

この人たちに共通するのは、まずは練習する対象そのものに興味があることや、練習を通して少しずつ上達していくことの楽しさを実感しているなどがあります。

こうした練習を通してスキルを上達する以外に、さらに大切なことは、運動の困難さからくる自信や意欲の低下を防ぐことです。

運動そのものが嫌いになってしまうと、体を使う頻度が自然と減ったり、周囲に自分が運動しているところを見られたくない、体を使うことそのものに意欲が湧かないなど、生活の様々な面で困難さが増してきます。

運動の問題への発信をする当事者の姿を見ていると、周囲(社会)が運動の問題への理解を示すこと、こうした人たちに配慮をしていくことが大切だと思います。

青年期・成人期以降にも、運動することの楽しさを見出している人、運動の困難さを周囲に発信し理解を受けている人は、運動から生じる生きにくさが軽減されているといった印象があります。

 

 


以上、運動の困難さはなくなるのか【発達性協調運動障害を例に考える】について見てきました。

発達障害の中でも、運動の問題は比較的軽視されている傾向があるように思います。

しかし、これまで見てきたように、運動の問題の割合は比較的多いこと、そして、青年期・成人期以降にも高い割合で持続するなどを踏まえると、個々に応じた早期の配慮が必要であると思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育現場で運動の問題についても学びを深めていきながら、子どもたちに必要な支援を考えていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

関連記事:「不器用さについて考える:発達性協調運動障害とは?

 

辻井正次・宮原資英(監修)澤江幸則・増田貴人・七木田敦(編著)(2019)発達性協調運動障害[DCD]不器用さのある子どもの理解と支援.金子書房.

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