人が外界から入力する情報の約7割が視覚情報だと言われています。
視覚の世界は非常に奥が深く、視力検査などではかる視力以外にも様々な機能があります。
そして、発達障害のある方の中には、視覚情報処理の機能低下が認められる割合が高いと報告されていますが、現時点で、視覚情報処理障害につける診断名はありません。
それでは、視覚情報処理にはどのような機能があるのでしょうか?
今回は視覚情報処理についての概要をお伝えしていこうと思います。
以下の1.視機能、2.視知覚/視覚認知、3.視覚から運動出力、の順に見ていきと思います。
1.視機能
- 外界からの視覚情報を取り入れるための機能で、視力、視野、色覚、調節、両眼視、眼球運動などがあります。
- 視力:注視している対象を細かく見分ける力
- 視野:目を動かさないで視覚的に認識できる範囲
- 調節:水晶体の厚さを変化させ、焦点を合わせる機能
- 両眼視:右目と左目由来の映像を重ね合わせて、立体視や遠近感を得る機能
- 眼球運動:衝動性眼球運動(saccade)➢飛び移るように視線を移動させる目の動き(板書や音読、黙読の時に使う)、滑動性眼球運動(pursuit)➢ゆっくりと動く対象を正確に追う目の動き
2.視知覚/視覚認知
- 入力された視覚情報を分析する機能
- 対象物を背景から切り分けてひとまとまりのものとして捉える視知覚の段階
- 視知覚で認識した像の意味の理解や名称と結びつける知覚認知の段階(視覚的注意や視覚記憶も視覚認知の一部と捉えることが可能)
- 視知覚と視覚認知とは、一連の脳機能過程であるので明瞭に区分することは難しいが、情報処理過程には階層性があるという理解が重要
3.視覚から運動出力
- 視覚情報を運動アウトプットに繋げることであり、「目と手の協応」とも言われる
- 例えば、ラケットで飛んできたボールを目で捉え(視覚情報)、それを打ち返す(運動出力)など
以上、視覚情報処理の機能について見てきました。
現在、視覚情報処理に関しては、専門家でも用語の統一がされていないのが現状になっています。そして、社会的認知としてはまだまだ低い傾向にあります。
しかし、例えば、学習障害といった、文字の認識に関わる障害では、文字といった形態(形)を認知するときに、視覚情報処理からの影響も強いため、アセスメント内容などに視覚情報なども含める必要があると考えられています。
また、視覚から運動出力といった関連から見ても、視覚と運動には強い関連があるため、例えば、発達性協調運動障害といった運動の障害においても、視覚情報処理にも困難さが見られるなどの知見が出てきています。
こうした領域は、発達障害の中でもまだまだ途上ですので、今後、発展していくことが期待されています。
私自身、今後、発達障害への理解をさらに深めていくためにも、視覚情報処理にも目を向けていく必要があると思っています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
文献
若宮英司(2017)特集 限局性学習症(学習障害) LDとDCD,視覚情報処理障害.児童青年期精神医学とその近接領域,58(2),246-253.