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行動障害へのアセスメントについて【行動支援計画から考える】

投稿日:2022年12月12日 更新日:

行動障害(Challenging Behaviour)とは、自傷や他害、パニックや癇癪、器物破損など、その行動が自他に悪い影響を及ぼすものだとされています。

また、行動障害と強度行動障害とを定義上分類している方もおりますが、今回は、以下の参照資料に基づいて「行動障害」に統一して話を進めていきたいと思います。

 

関連記事:「行動障害と強度行動障害の違いについて-行動障害の背景にあるものとは?-

 

行動障害への対応方法に、適切行動支援アプローチがあります。

関連記事:「行動障害の対応について【適切行動支援アプローチとは?】

 

適切行動支援アプローチを行うためには、まずは行動支援計画の作成が重要だとされています。

 

それでは、適切行動支援アプローチのために行う行動支援計画とは一体どのようにして作成していけばよいのでしょうか?

 

そこで、今回は、行動障害へのアセスメントについて、行動支援計画を取り上げながら、その作成内容についてお伝えしていきます。

 

 

今回参照する資料は「英国行動障害支援協会(編)清水直治(監訳)ゲラ弘美(編訳)(2015)行動障害の理解と適切行動支援 英国における行動問題への対処アプローチ.ジアース教育新社.」です。

 

 

行動障害へのアセスメントについて【行動支援計画から考える】

それでは以下、著書を引用しながら〝行動支援計画“について見ていきます。

〝行動支援計画“とは、知的障害のある子どもや大人が示す行動障害をよく理解したうえで、最適な支援を行うために作成される文書のことです。

 

行動支援計画は、行動の機能分析の結果にもとづいて作成します。行動支援計画の内容は、大きくは<予防方略>と<緊急対処方略>とに分かれます。

 

著書の中には、行動支援計画(適切行動支援計画)を作成するためのシート(文書)と、記入例があります。

行動支援計画は、著書にあるように、<予防方略>と<緊急対処方略>の二つがあります。

<予防方略>とは、行動障害の問題行動を未然に防ぐための方略で、<緊急対処方略>とは、問題行動の発生後の対応になります。

行動支援計画では、両者の二つのうち、<予防方略>をより多く使用するとなっています。

また、作成にあたっての対象年齢などはなく、どの年齢の方でも使用可能となっています。

活用に当って大切なことは、関わる人たちが共有の認識をもって、行動支援計画を共通して活用していくことです。

共通のアプローチをとることで、適切な行動の学習を可能にしていきます。

 

 


それでは次に、〝行動支援計画“の作成の手順について簡単に見ていきます。

作成の手順には次の8つのステップがあります。

 

ステップ1:問題とされる行動を描写する

行動観察や他の環境からの聞き取りをもとに、どういった行動(問題行動)がどのくらいの頻度・時間・程度、起こるのかを記録していきます。

 

 

ステップ2:行動障害の機能を推定する

行動の目的(機能)は複雑そうに見えますが、注目、逃避、要求、感覚の4つに集約されると著書に記載があります。

特定の行動がこの4つの中のどれに相当するのかを推定します。

 

4つの目的(機能)についての詳細は以下の記事を参照して頂ければと思います。

関連記事:「行動障害の原因について【行動に至る4つの目的とは?】

 

 

ステップ3:予防のための「緑信号」方略を立てる

先ほど、行動支援計画は、<予防方略>を多く使用するとありましたが、「緑信号」→情緒が安定している時に、<予防方略>を活用することが大切となります。

 

情緒の状態を著書では〝信号“に例えています。詳しくは、以下の記事を参照して頂ければと思います。

関連記事:「行動障害の特徴について【発展段階から考える】

 

 

ステップ4:早期信号「黄信号」方略を立てる

「黄信号」→問題行動が生起する前の段階のことを言いますが、この時に早期の対応方法を考え介入することが必要です。

例えば、気になる行動を取り除く、他のものに注意を逸らすなどがあります。

 

 

ステップ5:緊急対処「赤信号」方略を立てる

赤信号→問題行動が生起した段階のことを言いますが、この時に<緊急対処方略>を活用していくことが必要になります。

例えば、周囲に被害が及ばないように一人落ち着ける所に環境を分け、興奮状態の沈静化をはかるなどです。

 

 

ステップ6:回復「青信号」方略を立てる

青信号→問題行動が行った後に少しずつ状態が安定してきた段階のことを言いますが、この段階にはできるだけ早くに緑信号に戻すような対応が必要です。

 

 

ステップ7:行動支援計画に同意する

このステップは、行動支援計画に携わる人たちと協議して合意を得ていく必要があります。

 

 

ステップ8:行動支援計画を見直す

行動支援計画は定期的に見直す必要があります。アセスメントは、そもそも評価→実行→再評価→実行を繰り返していくものですので、行動支援計画も同様に再評価が大切になります。

 

 


以上、行動障害へのアセスメントについて【行動支援計画から考える】について見てきました。

詳細は、以下の参考資料(引用)を参照して頂ければ良いかと思います。

著者自身、今回取り上げた行動支援計画の8つのステップを見てきて、実際に行動障害のある人(その傾向のある人)に非常に有効であると思いました。

それも、著者が断片的に行っている対応が漏れなく網羅されているという実感があったからです。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も行動障害へのアセスメント・対応の質を高めていけるように、日々の療育現場での実践を大切にしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

英国行動障害支援協会(編)清水直治(監訳)ゲラ弘美(編訳)(2015)行動障害の理解と適切行動支援 英国における行動問題への対処アプローチ.ジアース教育新社.

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