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【行動障害の理解と対応について】太田ステージを例に考える

投稿日:2020年8月7日 更新日:

自傷や他害、パニック、感覚の異常など行動上に問題が生じる状態を〝行動障害”ということがあります。

著者が関わる療育現場でも、思うようにいかないと壁に頭を打ち付けて泣き叫んだり、他児を叩く蹴るなど他害をする子だどもがこれまで少なからずいました。

関わる大人(保護者や支援者など)が対応の面で非常に困る場面だと言えます。。

こうした〝行動障害”について様々な知見から対応方法などが述べられています。

 

それでは、行動障害への理解と対応方法にはどのようなものがあるのでしょうか?

 

そこで、今回は、行動障害の理解と対応について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、太田ステージを例に理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「立松英子(2011)発達支援と教材教具Ⅱ 子どもに学ぶ行動の理由.ジアース教育新社.」です。

 

 

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行動障害の理解について(太田ステージより)

太田ステージでは、感覚運動期(StageⅠ)から概念を獲得した時期(StageⅢ‐1からStageⅣ)までの認知の発達をいくつかのステージに分けています。

そして、各ステージごとに見られる状態像や対応方法などが記載されています(詳しくは、「太田ステージから障害児の発達を考える」に記載しています)。

 


太田ステージの各ステージと行動との関係には、次のようなものがあります(以下、著書引用)。

  • StageⅠ➢睡眠障害が多い
  • StageⅢ‐1➢きまり、こだわりがピークに見られる
  • すべのStage➢こだわり、感覚の異常、手や体の決まった動き、パニック、自傷、他害

 

以上の各ステージと行動との関係は、行動障害もあれば、行動障害へと発展するものもあります。

行動の問題(行動障害も含めて)は、「やむにやまれぬ行動」とも言えるため、やみくもに禁止するよりも、全体的な発達を促進する中で「減弱する」「変化していく」ことを期待する方が有効であると考えられています。

つまり、「どうしたらやめさせられるか」から「どうしたら順調な発達を支えていけるか」という視点の転換が重要だと言えます。

 

 

行動障害の対応について

以下、行動障害への対応として(重度の知的障害や自閉症児を対象に)大切な視点をお伝えします(以下、著書引用)。

  1. 行動そのものへの対応よりも予防的対応を重視する
  2. 予防的対応で優先するのは、適応行動を身につけること
  3. 適応行動を身につけるには、達成感が必要
  4. 達成感を経験するには、達成可能な目標とわかりやすい環境設定が必要
  5. 達成可能な目標とわかりやすい環境設定のためには、子どもの「わかり方」を詳細に知ることが必要

 

著書の内容から、行動障害への対応でまず優先されるべき対応は〝予防的対応“です。

つまり、未然に行動障害が発生する要因を分析して、行動障害が発生しないように環境調整をしていくことです。

その次に、達成可能な目標を見据えて、適応行動の学習を促していく工夫(子どもの理解のしやすさへの工夫)が必要になります。

 

 

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著者の経験談

上記に見た対応内容を踏まえると、改めて子どもたちがどのような発達段階にいるのかといった現状の理解が重要だと感じます。

著者自身、以前は、自傷や他害などに対して、行動の背景や発達の理解をすることが難しく、力任せに止めるなど、とにかく無理やりやめさせるような対応を無意識的にとっていたこともありました。

見る視点➢悪い行動・いけない行動、対応➢とめる・やめさせる、という一方向的な見方だったと言えます。

一方で、行動障害に関して学びを深めていく中で(太田ステージを例に)、行動の背景やその子の認知の発達などを考慮していくことで、著者の対応内容も少しずつ変化していきました。

例えば、環境が変化しパニック行動を起こしていた子どもに対して、その状況を理解できる段階ではないといった認識のもと、その子にとってわかりやすい環境設定をするために、環境を細分化し、その中でその子に何があるとわかりやすいのか、安心できるのかを詳細に検討していきました。

そして、その子にとって安心できる環境(わかりやすい・理解しやすい)を少しずつ整えていきました。

その結果、以前は環境の変化でパニックを起こしていた行動も少しずつ軽減していきました。

このような変化は急激には起こりませんが、対応する大人が長期的なスパンで子どもたちを支えていくといった心構えを持つことがまずは大切だと感じています。

大人が子どもの環境に対する「わかり方」を理解するには時間がかかります。

行動の問題(行動障害も含めて)は、現場で関わる人たち(当の本人も含め)すべてが、日々悩み苦戦するものです。

太田ステージは、こうした子どもたちの行動上の問題に対して新たな視点や気づきを与えてくれるものだと言えます(認知の発達を中心として)。

今後も子どもたちの行動の意味について、背景要因も考慮にいれながら地道に考え対応策を実行していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 


行動障害に関するお勧め書籍紹介

関連記事:「行動障害に関するおすすめ本【初級~中級編】

 

 

立松英子(2011)発達支援と教材教具Ⅱ 子どもに学ぶ行動の理由.ジアース教育新社.

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