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強度行動障害 行動障害 違い

行動障害と強度行動障害の違いについて-行動障害の背景にあるものとは?-

投稿日:2022年7月19日 更新日:

自傷や他害、パニックや激しいこだわり行動などを総じて〝行動障害″が見られるということがあります。

また、類似するものに〝強度行動障害“といった用語もあります。

 

それでは、行動障害と強度行動障害の違いとは一体どのように考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、行動障害と強度行動障害の違いと、行動障害の背景にある要因について理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「小林隆児(2017)自閉症スペクトラムの症状を「関係」から読み解く:関係発達精神病理学の提唱.ミネルヴァ書房.」です。

 

 

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行動障害と強度行動障害の違いについて

以下、著書を引用しながら見ていきます。

「行動障碍」という用語はさほど厳密に定義づけられているわけでなく、その行動がなぜ生じるのか理由がよくわからず、当事者あるいは周囲他者に深刻な負の影響を及ぼす場合に用いられる。その影響が甚だしい場合を「強度行動障碍」と称している。

著書の内容では、〝行動障害“の定義は厳密にあるわけではないとしています。

そして、〝行動障害“と〝強度行動障害“の違いについては、〝行動障害“の強さが甚だしい状態を〝強度行動障害“としています。

つまり、言葉から読み取れるように、〝強度“、つまり、問題となる行動の〝強さ”に違いがあるようです。

 

強度行動障害に関しては、「強度行動障害とは何か?療育経験を通して関わり方で大切な視点について考える」に記載しています。

 

 


それでは、行動障害の背景要因の理解がよくわからないと言われている中で(著書の引用より)、考えられる要因はあるのでしょうか?

次に、この点について見ていきます。

 

行動障害の背景にあるものとは

行動障害の中には、相手が嫌がることをして相手の注意を引くといった挑発行動などがあります。

こうした挑発行動なども含め、行動障害の背景には何があるのでしょうか?

 

著書の中では、以下の3つを主な要因としています(以下、引用)。

(1)甘えのアンビヴァレンス、〈知覚ー情動〉過敏、関係の悪循環

(2)臨戦態勢と原初的知覚による体験

(3)他者によって自分が動かされる恐れ

 

以下、(1)~(3)について見ていきます。

 

1.甘えのアンビヴァレンス、〈知覚ー情動〉過敏、関係の悪循環

甘えたいけれども甘えられないといった状態をアンビヴァレンスということがあります。

特に発達初期の子どもや、自閉症や知的障害など発達に躓きのある子どもたちは、感覚が過敏なことがあります。

そのため、養育者が関わろうとすると過敏さがゆえに反射的に避けてしまうことがあります。

一方、養育者の方もどのように接すればいいのかがわからずに、こうした状態が続くことが関係の悪循環になり、つまり、甘えたくても甘えることができない状態になってしまいます。

 

 

2.臨戦態勢と原初的知覚による体験

原初的知覚とは、感覚が未分化な状態のことを言います。

人間の五感は発達とともに分化され、それぞれの役割として機能していきますが、幼い子どもなどはこうした感覚がまだ分化されていません。

そのため、外界の刺激に対して、侵入的にうつってしまうことがあります。関わる大人の行動の意味や意図がよくわらないと、常に警戒心をもつなど臨戦態勢を取って過ごすことになります。

自閉症など発達に躓きのある子どもたちは特に、原初的知覚を有していることが多いと考えられています。

 

 

3.他者によって自分が動かされる恐れ

甘えのアンビヴァレンスや原初的知覚などを有していると、自分というものの境界が不確かであり、また、他者への信頼や安心感などを持つことが難しいため、他者によって自分が動かされる恐れを抱きます。

 

 


これら3つの背景要因は互いに関連づいています。

こうした背景要因が行動障害の理由として、著書の中では事例を通して記載されています。

著者の療育現場でもこうしたお子さんは少なからずおります。

特に、重度の知的障害のある自閉症の子どもたちには、感覚の世界が有意であり、感覚過敏もあり、大人との関係構築も難しい(自然と甘えることが難しい関係)ことがこれまでの著者の経験では多くありました。

しかし、こうした背景要因を理解していきながら、長い時間をかけて関係づくりをしていくことで、子どもの方から甘えてくる様子が増えていった経験も多くあります。

すると(甘えの関係ができると)、これまでとっていた自傷や他害、パニックや激しいこだわり行動などは減っていくという印象があります。

 

このように、行動障害を理解することはとても難しいことではありますし、背景となる要因もケースによって様々あるかと思います。

その中で、今回取り上げた関係性からの理解はとても参考になると実感しています。

今後も子どもたちが見せる負の行動の背景要因などを考えていきながら、より良い理解と支援を目指していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 


行動障害に関するお勧め書籍紹介

関連記事:「行動障害に関するおすすめ本【初級~中級編】

 

 

小林隆児(2017)自閉症スペクトラムの症状を「関係」から読み解く:関係発達精神病理学の提唱.ミネルヴァ書房.

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