自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)の特徴の一つに〝こだわり行動″があります。
関連記事:「自閉症児のこだわり行動についてその意味を考える」
こだわり行動は、融通が利かず周囲からすると関わる上で大変だと感じることもあります。
著者の周囲にもこだわり行動のある自閉症の方が複数おります。
こうしたこだわり行動があると、一度ルールを決めるとそのルールを徹底してしまうことから、柔軟に変更などが難しかったり、自分なりのやり方・考え方にこだわるなど、仕事関係・対人関係上大変だと感じることもあります。
一方で、こだわり行動には利点もあります。
それでは、一見するとネガティブに捉らわれてしまう「こだわり行動」の利点や強みなどはあるのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症児・者のこだわり行動の強みについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参考にする資料は、「本田秀夫(2018)発達障害:生きづらさを抱える少数派の「種族」たち.SB新書.」です。
こだわり行動の強みについて
以下に著書を引用します。
こだわりが強い人には、よくも悪くも融通がきかないところがあります。(略)
「融通がきかない」と考えるのではなく、「手を抜かずコツコツと努力できる」という長所としてとらえればよいのです。
こだわりが強い人は、自分の興味があることや納得できることに関しては、かなり高い集中力を発揮します。(略)
「手を抜かない勤勉性」や「定められた規則を守り、初志貫徹できるところ」を生かして環境調整すると、うまくいきます。
著書の内容から、こだわり行動の強みとしては、地道に努力を継続できるところや、興味関心への集中力があるとされています。
それでは、次に著者の体験談についてお伝えします。
著者の体験談
こだわり行動のあるAさんは、自分の決めたルールへのこだわりが強いことから、急な変更や他者の意見を柔軟に取り入れることが難しい特性があります。
一方で、一度仕事でルーティンワークに慣れると周囲よりも淡々と長時間作業をこなし続ける特徴があります。
几帳面なため、手を抜かず、集中して作業に取り組み、正確性も高いため、周囲からの信頼は日に日に高くなっていきました。
著者もこうしたAさんの活動状況を見て、人として信頼できる、仕事をしっかり真面目にこなしてくれるといった信頼があります。
Aさんは特性上、発達に凸凹がありますが、上記のような凸の部分をうまく発揮できれば、社会の中で、能力を発揮できたり、周囲からの信頼を構築できると感じます。
こだわり行動のあるBさんは、自分の興味関心に直ぐに没頭してしまい、仕事上、支障がでてしまうことがありました。
例えば、やるべきタスクがあった時に、自分の興味関心からそっちに神経がいってしまい、タスクを忘れてしまうことがありました。
しかし、業務のやり方がわかり(興味が湧く)役割がしっかりと与えられることで、持ち前の高い集中力を発揮し、周囲の声が入らないほど業務に邁進する様子がでてきました。
こうした特性を周囲が知ることで「○○の業務はBさんにお願いしよう」という意見が多くでるようになりました。
こうしてBさんのこだわり行動は、業務上、高い集中力として発揮される場面が増えたと感じます。
以上が著者の体験談となります。
こだわり行動は、一見すると融通の利かないものであり、デメリット感が強い印象を受けますが、裏を返すと、コツコツと努力できる、興味が湧くと高い集中力を発揮するなど強みがあるのも確かです。
周囲の人は、こだわり行動の凹の部分だけに目を奪われずに、凸の部分に目を向けることも大切だと思います。
私自身、日々の仕事や生活が忙しいとどうしてもこだわり行動に対して、ネガティブな印象をもってしまいますが、強みの部分にもしっかりと目を向けることが大切だと感じます。
今後も、発達特性の理解において、強みの部分にも目を向けながら、日々の発達理解を進めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
本田秀夫(2018)発達障害:生きづらさを抱える少数派の「種族」たち.SB新書.