自閉症の人たちには様々な感覚の問題があると言われています。
例えば、そうした感覚の特徴を知ることで、療育現場での子どもたちの理解や対応方法が変わってきます。
私自身、感覚の理解を深めることで言葉で理解しにくい子どもたちの行動の特徴などの理解が非常に深まったと実感しております。
もちろん、感覚の問題は子どもたちだけではなく、大人にも見られます。
それでは、自閉症の人にはどのような感覚の特徴があり、それに対する対応方法などのあるのでしょうか?
そこで、今回は自閉症の感覚過敏と対処方法について事例を踏まえながら説明していきたいと思います。
感覚過敏とは
感覚過敏とは特定の感覚に強い抵抗を示すことを言います。
例えば、子供の泣き声や騒ぎ声を聞くとパニックになる、特定の匂いに敏感である、ベトベトやつるつる、ざらざらした触感が苦手などがあります。
逆に、非常に反応が弱いといった鈍感さを持つ場合もあります。
自閉症児・者の感覚の特徴
自閉症の人たちの中には、こうした感覚の特徴を持つ人が多く存在すると言われています。
私が経験した療育現場でも様々な感覚過敏を持つお子さんたちがおりました。
なぜか急にある場所から走り出して逃げてしまう、急にパニックになる、遊びの集団の輪から離れていくなどよくよくその行動を状況を踏まえて考えると共通の背景要因が見えてくることがあります。
それでは以下に著者の療育現場での体験談についてお伝えします。
著者の体験談
小学生男子A君の例
A君は感覚の中でも聴覚が非常に敏感であり、中でも子供の騒ぎ声や怒った声などへの反応が強いです。
例えば、子供同士のけんかを見てもあまり気にすることはありませんが、そこでのやり取りが大声や奇声などになるとA君はその場から全速力で走り去ります。また、よく怒鳴り声などを上げる他児を見ると、その日を境にその他児から常に離れたところにいようとします。
そうした中で、A君への感覚過敏への対処法は環境調整が重要になります。
感覚過敏は一種のアレルギーと同じで経験で克服が難しいところが強くあります。
そのため、A君が安心できる静かな環境にいられるように苦手な音と距離をとれるように大人側ができれば事前に環境を調整していくことが大切になるかと思います。
そうした対処法をとった後、A君は安心できる様子が増え、また、他児が怒鳴り声を上げる以外の場面は同じ空間にいられるようになりました。
A君自身が困ったら安心できる場所があるということを大人側が伝えていくことが重要だと思います。
小学性男子B君の例
A君との違いはA君以上に音への敏感さが強いということです。
例えば、子供の泣き声やにぎやかな声などに強く反応しパニックになることが多くあります。
そのため、環境調整は当然のこととして、それだけでは過敏さに対する対処が難しく、常にイヤーマフ(防音具)を携帯していました。B君への対処法は環境調整とイヤーマフをつけることになります。
さらに、イヤーマフをどういったタイミングで付けたほうがいいのかを教えていくことも重要になります。
本人ではコントロールが難しい局面が多くありましたが、できるだけ大人と相談してというところから始め、少しずつ自分の判断で付けたり外したりできるようになりました。
未就学児のCちゃんの例
Cちゃんとは療育施設で私が担任になった時に出会いましたが、彼女はベトベトした感覚が苦手でした。
療育ではよく粘土遊びなど感触遊びをするのですが、Cちゃんはいつも粘土を見ると部屋の隅に行きそこから他児が粘土で遊ぶ様子を見たり、違う遊びを始めます。
Cちゃんへの過敏さへの対処法は、まずは無理に触らせないことを前提に、直接手で触らなくても遊べる状態を作ることです。
例えば、ゴム手袋の使用や粘土を切ったりこねたりする道具を見せ、これなら直接触らなくても大丈夫だということをモデリングして伝えていけるといいと思います。
実際に、そのように伝えていくことでCちゃんは道具を使って粘土遊びを楽しく行うことができるようになりました。そして、粘土遊びの中で、時々指で触ってみるなど直接手で触れるという行動もとれるようになりました。
以上の3人の事例はあくまでも一部ですが、自閉症の人たちの中には感覚の過敏さが見られることがよくあり、それは人によって種類や強度が違います。
この3人には嗅覚過敏や触覚過敏、聴覚過敏など他にも過敏さがありました。
今回はそのうち個々の中で特に強いと思われる感覚の過敏さを取り上げました。
重要なのはその過敏さゆえに生活に困り感を抱えていることをよく知ることだと思います。それは本人のせいではなく生まれ持っての特性だという理解です。
感覚の過敏さに配慮した環境を作ること、そして、対処法などを考えていくことで少しずつ自分の感覚への認識や理解が深まっていくと思います。
また、成人の当事者の方々と話す機会が多くありますが、その中で、感覚過敏さの話も多く上がります。彼らは自分の感覚への理解や様々な対処法を考え実践しています。
私自身も子供たちが将来的に自分で過敏さをコントロールできるように、一緒に対処法を考えサポートしていきたいと考えています。そして、人それぞれ多様な感じ方があるということを深く感じ学んでいこうと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございます。