【自閉症児と合意を取ることの意味について】療育経験を通して考える

「合意」とは、誰かの提案に他者が同意することを言います。

「提案」は指示や命令ではなく、「同意」は服従ではありません。

提案するには自律的判断が必要です。また、他者の提案に同意するには、提案内容が自分にとって納得できるものかという判断と、他者と自分の意見の照合が要求されます。

他者との間で合意が成立するためには、「自律スキル」と「ソーシャルスキル」の両方が必要だと考えられています。

「自律スキル」とは、自分で自分をコントロールすることです。

一方、「ソーシャルスキル」とは、社会性のことで主なスキルは「ルールを守れること」と「他の人に相談できること」を指します。

自閉症児は、他者の視点獲得が困難で暗黙のルールなどの理解も難しいとされています。

そのため、昔から自閉症児には構造化された環境を作ることが重要だと言われてきました。

「構造化」とは、物事に一定の秩序を持たせるために、その秩序がわかりやすくなるような枠組みを示します。

我々の生活の中にも、道路標識や信号機、看板など構造化されたものが多くみられると思います。

自閉症児は発達特性から見て、視覚的な情報の理解が得意とされています。

そのため、支援者はイラストなどで分かりやすく構造化を行うことが多いのではないかと思います。

ちなみに、著者の職場でも、その日のスケジュールや何か作業をするときの手順、物の置き場などはできるだけイラストを添えるようにしています。

こういった子どもたちへの理解のしやすさ、わかりやすさという側面が構造化でもありますが、著書の本田さんは構造化が合意を教える最初のステップであり、情報を提示された際に、子どもたちが行動をとるのは、理解するだけではなく「合意」するからだと述べています。

その意味でも、構造化の手法を活用する目的は、合意形成の習慣を身につけることだと述べています。

さらに、構造化の方法を活用する際のポイントとして、「先に大人から情報を提示すること」（後手に回ると子どもがパニックになることもある）や、子どもたちのやる気を高めるための内容とタイミングが重要であり、こうした関わりをしてくれる大人とは信頼関係が生まれると考えられています。