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自閉症 視覚過敏

自閉症の視覚過敏について【療育経験を通して考える】

投稿日:2022年11月10日 更新日:

自閉症の人たちの中には、感覚過敏や鈍感さといった感覚の問題が多くみられます。

例えば、大きな物音が苦手、ツルツル・ベタベタなどの特定の触感が苦手、○○の食材は味覚としては苦手などがあります。

 

関連記事:「自閉症の感覚:感覚探求と低登録について考える

関連記事:「自閉症の感覚:感覚過敏と対処方法について考える

 

もちろん、感覚の苦手さは誰にとってもあるかと思います。

一方で、自閉症の人たちの感覚の問題は生活に困難さが生じるレベルとなることもあります。

感覚の問題にも、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚、前庭感覚、固有覚など様々なものがあります。

こうした様々ある感覚の中で、人間は視覚優位だと言われています。そして、自閉症の人たちは視覚的な情報処理を得意としている人も多くいます。

 

それでは、自閉症の人たちにはどのような視覚の問題があると言われているのでしょうか?

 

そこで、今回は、自閉症の視覚過敏について、臨床発達心理士である著者の経験談も踏まえて考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「熊谷高幸(2017)自閉症と感覚過敏 特有な世界はなぜ生まれ、どう支援すべきか?.新曜社.」です。

 

 

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自閉症の視覚過敏について

著書の中には、自閉症の視覚についてのアンケート調査結果が記載されています。

以下、引用しながら見ていきます。

新しい場所や視界の変化を恐れる

急に何かを思い出す様子がある

物の置き場にこだわる

好きな物のコレクションを作る

パズルや積み木の構成を好む

文字や図形の記憶がよい

絵や粘土の造形がうまい

 

著書の視覚過敏のアンケート結果から、上の方はどちらかというと、ネガティブな印象、下の方はむしろ得意といったポジティブな印象を受けます。

この中で、特に上記の三つは、自閉症の視覚過敏の強さから生活に支障が出る代表例かと思います。

 

「新しい場所や視界の変化を恐れる」は、新しい環境に行くことや、学校の行事などがあります。新しい環境(場所)は、視覚的な変化が非常にあるため、変化に過敏な自閉症の人たちは不安感が高まることが多いとされています。

「急に何かを思い出す様子がある」は、自閉症の人たちに多く見られます。これは、自閉症の人たちの記憶力の良さと関連しており、時折、フラッシュバック的に過去の映像を思い出すことがあります(聴覚記憶にもあります)。

「物の置き場にこだわる」は、配置や道順や手順などに強いこだわりを示す自閉症の人たちの行動特徴でもあります。特に、物の配置は視覚的情報処理といった視覚関連の記憶が有意に働くため、変化を苦手とする自閉症の人たちは、物の配置に規則を作るなど、こだわり行動として映ることがあります。

 

一方、引用箇所の下記の三つはむしろ自閉症の人たちの強みだと考えられています。

映像記憶の良さや、パズルや積み木など視覚情報処理に関連するものなどです。

 

 


それでは次に、著者の療育経験から自閉症の視覚過敏についてお伝えしていきます。

 

著者の経験談

著者はこれまで多くの自閉症の人たちと関わってきています。

その中で、環境の変化が苦手な自閉症児・者がとても多いといった印象があります。

例えば、園での行事(運動会・誕生日会・遠足・お楽しみ会など)や、放課後等デイサービスだと、外食、○○見学、などがあります。

自閉症の人たちはこうした普段慣れ親しんでいる環境から他の環境に変わると、通常では見られない不安を見せることがあります。

中には、行事には参加が難しい、○○見学の場所の前に来ると入れないなどがあります。

そのため、著者はこうした子どもたち一人ひとりの配慮を心掛けるようにしています。

また、何かを急に思い出す(のように思える)こともよくあります。

これは、映像といった視覚情報もあれば、音といった聴覚情報による記憶の想起があります。

少なくとも、今何か嫌なことが合ったわけでもないのに、突然泣き出す、過去のエピソードを急に話始めるなどがあります。

こうした行動の背景には、視覚過敏(フラッシュバック)があるということが考えられるため、現在の様子も含め、不安となっているものはないかなどを確認しながら、フラッシュバック的反応も考慮する必要があるように思います。

このように著者の経験からも自閉症の人たちの視覚過敏はよく見られる行動の一つだと実感しています。

 

 


以上、自閉症の視覚過敏について【療育経験を通して考える】について見てきました。

視覚を通した環境の変化は自閉症の人たちにとって脅威となることがあります。

一方で、こうした視覚過敏への配慮を受けていくことで、少しずつ行動範囲が広がっていった方も多くいます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育経験を通して、感覚の問題への理解と配慮を通して、子どもたちの将来に繋がる良い支援をしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

熊谷高幸(2017)自閉症と感覚過敏 特有な世界はなぜ生まれ、どう支援すべきか?.新曜社.

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