自閉症(自閉症スペクトラム障害)とは、コミュニケーションやこだわり行動などを特徴とした発達障害のことを言います。
詳細:「神経発達症/神経発達障害とは何か?」
自閉症など発達障害があるお子さんは他者への理解が難しい面があるため、自他の認識が定型児よりもゆっくり育つケースが多いとされています。
つまり、周囲の理解や自己への理解が進むのがゆっくりであるということです。
こうした理解は思春期頃に理解が進むと考えられています。思春期頃になって、ようやく自他への理解が進むなど、周囲が見えてきます。
以前の記事:「自閉症児が思春期を乗り越えるために大切なことについて考える」で思春期について述べています。
そこで、今回は自閉症の人への思春期以後の対応として大切な視点について、著者の意見も交えながらお伝えします。
もちろん、自閉症以外の発達障害のある方にも活用できる視点かと思います。
今回参考にする資料は、「本田秀夫(2017)自閉スペクトラム症の理解と支援.星和書店.」です。
思春期以後に大切な視点
それではさっそく著書を引用致します。
思春期を越えてきますと、子ども本人にだんだん自分でいろいろやってみたいという気持ちが芽生えてきます。そして、周りが反対しても何でもとにかく自分でやりたいことをやりたいという気持ちが強くなってきます。
ここから先は、むしろ本人の試行錯誤を重視すべきです。家族はそれを黒子のような形で支えていきます。
(略)
私はこの方針を、「支援つき試行錯誤」と、名づけています。
思春期より前は、保護的に環境を調整することに重きを置くのに対して、思春期以後は、試行錯誤する本人の思いを大切にしながらも、支援する部分もある程度必要とする考え方が「支援つき試行錯誤」ということになります。
思春期より前に蓄えたエネルギーが多いほど、何でも自分で取り組んでみたいといった気持ちが育まれます。
思春期以後は、こうした気持ちを尊重していきながら、ある程度の失敗は許容しながらも、失敗しすぎないように周囲が支えていく必要があります。
著書のコメント(体験談)
思春期以後に大切な視点として、「支援つき試行錯誤」があると前述しました。
思春期までに意欲のエネルギーが育っていれば、自ら行動してみたいという気持ちが強くなります。
著者の弟であるAさん(自閉症と診断)もまた思春期以後に自ら挑戦する行動が増えてきました。
当時のAさんの口癖は「とにかく何でも自分でやってみる!」というものでした。
Aさんは、様々なアルバイトをこなし、失敗しても次のプランを考え実行していました。
当時のAさんは、自分が挑戦する姿に高揚感を覚えている印象があり、行動を積み重ねることで自信がついている印象がありました。
また、挑戦の中で様々な体験や人との出会いがありこうした経験からたくさんのことを学んだのだと思います。
しかし、試行錯誤の面が強すぎてしまい、周囲の支援の部分がおろそかになっていたように感じます。
それは、挑戦の行きついた先が「失敗経験」という形で終わってしまったからです。
こだわりの強いAさんは何か助言をしてもなかなか言うことを聞かない面がありましたので、当時、周囲が支援するということはほとんどなかったかと思います。
今にして思えば、もう少し支援の面があった方がよかったと思います。つまり、本人が気づかない形で、あるいは、気づきにくい形で何かフォローができたのではないかと思います。
大切なことは、本人が自分の意志で物事を決めることであり、後で後悔しない人生を進むことだと思います。
周囲のスタッフや理解者などのサポーターは、こうした本人の思いをくみ取りながら、いかに支援できる部分を試行錯誤できるかだと思います。
こうした部分はとても難しいと思いますが、専門力とはこうした点を考えられることだと思います。
私自身、まだまだ未熟ですが、こうした著者の身近な事例からの学びを今後の支援の現場に繋げていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
本田秀夫(2017)自閉スペクトラム症の理解と支援.星和書店.