自閉症の人たちには様々な感覚の問題があることがわかっています。
感覚の問題で代表的なものに、感覚過敏や鈍感さといった感覚調整障害があります。
関連記事:「発達障害の感覚調整障害について【4つのタイプから考える】」
著者の療育現場にいる自閉症の子どもたちにも様々な感覚の問題が見られます。
それでは、こうした感覚の問題は年齢と共に改善するなど変化はあるのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症の感覚調整障害について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、年齢による変化についてお伝えしていきたいと思います。
今回参照する資料は「岩永竜一郎(2014)自閉症スペクトラムの子どもの感覚・運動の問題への対処法.東京書籍.」です。
自閉症の感覚調整障害について【年齢による変化はあるのか?】
以下、著書を引用しながら見ていきます。
これまでの報告を参照すると大人の方が子どもよりその問題は見られにくいようです。著者のこれまでの経験の中でも、二次障害が顕著でない人は年齢が上がるにつれて感覚調整障害が軽減することが多いと感じています。ただし、感覚調整障害が完治したというより、感覚過敏の傾向はもちつつも刺激に過剰に反応しなくなったという人が多いように思います。
著書の内容から、自閉症の人の感覚調整障害について、子どもから大人になるにつれて、感覚の問題は減ることが多いと記載されています。
一方で、完全になくなるわけではなく、その傾向は残ることが多いとも記載されています。
それでは次に、上記を踏まえた上で、著者の経験談から感覚の問題について見ていきます。
著者の経験談
著者はこれまでの療育経験を通して自閉症を含め様々な感覚の問題がある子どもたちと関わってきました。
同時に、発達障害(自閉症を含め)の成人当事者とも関わる機会が多くありました。
こうした子どもから大人までの自閉症の人たちの感覚の問題を振り返って見ると、著書に記載が合った通りに、割合として、子どもの頃に感覚の問題が多く見られ、成人後には(大人になるにつれて)、感覚の問題が少なくなっている人が多いといった印象があります。
しかし、少なくなったからといって完全になくなっているかというとそうではなく、例えば、大きな物音が苦手、特定の触感が苦手など、感覚の問題は残り続けているように感じます。
こうした実感は、成人当事者の行動を見て感じたり、実際に、成人当事者からの声を聞いての実感になります。
また、成人当事者は、様々な感覚の問題に対して対処方法を見出しており、苦手な感覚が自然となくなった、あるいは減少したというより、自分なりの対処方法を試行錯誤によって見出し軽減したという人も多くいます。
このように、感覚の問題は、大人になって減少するケースが著者の実感でもありますが、減少した要因は様々あるように思います。
以上、自閉症の感覚調整障害について【年齢による変化はあるのか?】について見てきました。
感覚の問題ははっきりとは目に見えるものではないため、理解しにくいこともまた特徴だと思います。
子どもの頃には、感覚による問題への表出はストレートであっても、大人になるにつれて、適応方法などを身につけているケースも多いため、表面上は目立たなくなっている場合もあるように感じます。
それでも大切なことは、感覚による問題は残り続け何らかの形で生活に支障が出ている可能性があるということです。
そのため、感覚の問題は非常に侮れない問題だと感じます。
著者も日々の療育経験を通して、感覚の問題への理解を継続して深めていきたいと思っています。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
岩永竜一郎(2014)自閉症スペクトラムの子どもの感覚・運動の問題への対処法.東京書籍.