発達障害児の中には、友達関係など対人関係に苦手さを持っている人たちがいます。
代表的なものに、自閉症があります。
自閉症とは、対人コミュニケーションの困難さとこだわり行動を主な特徴としています。以前は、自閉症や広汎性発達障害、アスペルガー障害、高機能自閉症などと様々な呼び名がありましたが、現在は、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)に名称が統一されました(2013年のDSM-5から)。
自閉症の人たちは、人と関わる際に、暗黙の了解の理解や場の空気を読んで行動することが苦手と言われています。また、自分の興味関心の強さや、自分のやり方や手順などにこだわるのも特徴です。
それでは、自閉症の人たちの友達関係はどのような特徴があるのでしょうか?そもそも友達関係を築くことはできないのでしょうか?
今回は、私の療育経験の中での3つの事例から自閉症の人たち友達関係についてお伝えしていこうと思います。
自閉症児の友達関係について
事例①(自閉症児A君)
A君は、私が放課後等デイサービスで3~4年にわたって関わってきたお子さんになります。自閉症の特徴は非常に強く、自分の興味関心を一方的に話す、他児にはあまり興味をもたない様子でした。
しかし、長年見ていく中で、他児との関わりが見られる様子が増えてきました。
最初は、自分の興味(ゲームや漫画について)について、共有してもらえる、あるいは詳しい人がいると、質問したり、一方的に話すなどの関わりが見られました。
最近は、戦いごっこなど他児と一緒に体を使って遊ぶことに楽しみを見出すようになり、そこで、特定の他児との関わりが増えてきました。事業所につくと、「○○くんいる?」「○○くんと遊びたい」など自分から他児に対して関わりを求めることが増えてきました。今では毎日のように遊んでいます。
事例②(自閉症児B君)
B君は、私が療育施設の仕事をしているときに二年間担任をしたお子さんです。最初は、他児に対して興味を示すことがなく、関わりは一切ないという感じでした。
しかし、担任をして、二年目にある変化がありました。それは、他児が遊んでいる姿に興味が出てきたということです。
次第に、B君は、その他児の遊びを真似するようになりました。さらに、活動内でその子を意識して近づいたり、他のお子さんにも興味が出てきました。まだまだ、友だち関係とまではいきませんでしたが、他の子供に興味が出てきたという意味で成長を実感した事例になります。
事例③(自閉症者Cさん)
最後は大人の方の事例になります。
Cさんに関しては、子ども頃から知っており、現在まで長期的な関わりがあります。
昔のCさんは、友だち関係を求めるも他児の言っていることが理解できない、遊びのルールについていけないなど多くの困難さがありました。ですので、友だちと遊ぶことはあっても、Cさんの望むような友だち関係ではありませんでした。
しかし、成長するにつれて、様々な環境で自分の思いや、興味のある話を共有できる友だちに出会う機会があり、今でも継続して友だち関係を続けることができています。
以上、3つの事例から自閉症の人の友達関係について見てきました。
非常に短い紹介になりましたが、ここでお伝えしたかったのは、自閉症の人はコミュニケーションなど人と関わることが苦手というよりも、関わり方が独特であるということです。
それは、自分の興味関心が強いため、人よりも物に興味が向きやすいこと、興味関心などを通じて他者との関係を深めることができるという実感があります。
つまり、関係構築の過程が独特ということです。
もちろん、自閉症の人も多様であるので、すべての方が上記のような内容に該当するわけではありませんが、傾向としてあるのではないかと思います。
今後も療育を通じて、人と関わることや友人関係についての理解を深めながら、より良い発達理解と支援を目指していこうと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。