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【自閉症のコミュニケーションの問題は誰の問題か?】発達障害児・者支援の経験を通して考える

投稿日:2020年9月6日 更新日:

 

自閉症とは、社会コミュニケーションやこだわり行動などを特徴としており、例えば、暗黙の了解事項がわからない、一方的な会話をしてしまう、自分のやり方や手順にこだわるといったものが挙げられます。

他にも、感覚の過敏性や鈍感さなどがよく見られるのも特徴です

自閉症は現在、自閉症スペクトラム障害/自閉スペクトラム症(ASD)という用語で統一されています。

こうした中には、自閉症と診断された人から、自閉症の特徴(特性)がある人(強い・弱い)など、様々なタイプの方がいると言われています。また、他の障害、例えば、ADHD、LD、DCDなどと併存する割合が高いとされています。

自閉症の中心的な症状は、対人関係など、社会コミュニケーションの問題を主としています。

 

今回は自閉症のコミュニケーションの問題に焦点を当てて、そもそもコミュニケーションの問題とは一体どういったことか、誰が問題としているのか、ということについて考えていきたいと思います。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

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【自閉症のコミュニケーションの問題は誰の問題か?】発達障害児・者支援の経験を通して考える

私がこの問いについて考え始めたのは、先日、ある自閉症の方から、「自閉症のコミュニケーションの問題は当事者の問題というより、周囲の問題もあるのでは?」という問いかけを受けることに始まりました。

私自身、これまで療育現場で様々な発達障害の方を見てきており、その中には、自閉症の方(子どもから大人まで)も多くいました。

そうした職場内での会話の多くは、コミュニケーションの問題が取り上げられ、自閉症の人がいかに自分と他者との違いを理解していくのかについて、できるサポートや配慮などを話す機会が多くありました。

つまり、当事者側(ASDの方)が周囲に合わせるにはという発想に近いもののように感じました。

これは、逆の視点から考えると違和感があります。

当事者側からすると、なぜ自分たちばかり周囲に合わせないといけないのか?合わせることを強要されるのか?という思いが強くあるようにも感じます。

結局のところ、マイノリティ(少数派)とマジョリティ(多数派)の話になるかと思います。

社会の多くのルールや仕組みやマジョリティ側が生活しやすいものに設計しています。つまり、マジョリティ側の世界観が強調された世界というわけです。

コミュニケーションの問題も自閉症の当事者にとっては、コミュニケーションの独特さは本人にとってみると当然の振る舞いであり、それを問題とするかどうかは周囲の認識や、さらに広く言うとどのような社会なのかによって変わってくるものかと思います。

こうして考えてみると、自閉症のコミュニケーションの問題は当事者の困り感というよりは、周囲の困り感として捉えることもできます。

コミュニケーションとは、一方的ではなく、双方向的であるため、両方の視点に立った理解が大切です。

私たちは、さらに当事者側に立って物事を見つめなおすことをしていくことが大切なのだと思います。

そうすることで、コミュニケーションの問題の本質や、誰が問題としているのかということに対して、以前とは違った見方、より発展的な見方ができるようになると思います。

冒頭にお伝えした、自閉症の方からの問いかけの当事者は私の弟です。

私自身、もっとマイノリティ側に立って物事を見ていく必要があるのだと考えさせられました。自分自身が未熟である、思慮が浅いのだと、当事者の方と話していると多くの気づきがあります。

こうした当事者の方とのコミュニケーションの積み重ねが大切であり、今後も継続していく中で、多くの発見をしていきたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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-コミュニケーション, 自閉症

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