自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)とは、対人・コミュニケーションの困難さと〝こだわり行動”を主な特徴としています。
〝こだわり行動”の主な特徴としては、物の配置へのこだわり、道順へのこだわり、予定のこだわり、特定の関わり手へのこだわりなど、様々なものがあります。
自閉症スペクトラム障害のスペクトラムとは、「連続体」という意味ですので、自閉症の特性が強い方もいれば弱い方まで地続きだということになります。
もちろん、こだわり行動においても、個々において強さや内容は異なります。
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それでは、自閉症のこだわり行動は年齢などの影響を受けながら、変化していくことはあるのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症のこだわりについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、学童期前後以降の特徴について理解を深めていきたいと思います。
今回、参照する資料は、「本田秀夫(2017)自閉スペクトラム症の理解と支援.星和書店.」です。
自閉症の学童期前後のこだわりの特徴について
著書の中では、学童期前後以降には、社会的行動の中に、こだわりが埋め込まれることがあると記載されています。
どのような特徴があるのか、以下、著書を引用しながら見ていきます。。
知的遅れのない子どものこだわり
学童期前後以降、「社会的行動」の中に埋め込まれる
・ルールや決まりごとを頑なに守る
・他者のルール違反に強い不安感を覚える
・他者にルールの遵守を強要する
・勝つことや1番になることに強くこだわる
著書の中では、知的に遅れのない状態において、社会的行動の中に、こだわりが埋め込まれることが、学童期前後以降にあるとしています。
学童期前後以降には、他者との関わりや、集団行動なども徐々に増えていき、集団活動や集団行動にはルールが必要になることが増えるため、ルールや勝ち負けなどにこだわりが移行する場合があるということです。
これまで、こだわりと言えば、時間(予定)や場所、人、動作(手をひらひらさせるなど)、興味関心の狭さといった内容が多かったかと思いますが、それが社会的なルールなどに見られるようになると言えます。
著者の体験談
著者は長年、療育現場で多くの子どもたちと関わってきています。
その中で、前述したルールを頑なに守ろうとしたり、勝ち負けなどに固執する自閉症の人もいました。
それも、学童期前後以降の子どもによく見られるといった印象があります。
中でも、多かったのが、勝つことや1番になることに強くこだわるといったものです。
絶対に一番でないと嫌だ!負けると癇癪を起こすといったケースもありました。
こうした状態を「一番病」と表記していることが昔はありました。
小学校では、ゲームや運動競技など勝ち負けがつくものが多く存在しています。
著者が見てきた子どもの中には、最初は負けると癇癪を起こしていた子どもが、少しずつ負けを受け入れることができるようになったケースもありました。
こうした変化は、急に起こるのではなく、徐々に負けを受け入れられるようになってきたというゆっくりとした変化です。
変化の要因としては、負けてもそれほど悪いことは起こらないということを学習した可能性があります。また、ゲームでの勝負そのものを楽しめるようになったのかもしれません。
このような、こだわり減少の理由は個々に応じて異なるものだと思いますが、本人なりに納得できる点が見つかったのか、他のこだわりに注意が向くようになった可能性もあります。
少なくとも、自閉症の子どもの中には、こうした社会的なルールや勝ち負けなどに固執するケースもあるということを知っておけば、関わり手の不安感も減ると思います。
そして、負けるという経験をゲームなどで少しずつ練習し慣れておくことも必要だといった視点も出てきます。
著者も子どもと関わるときには、手を抜いて勝たせるときもありますが、負けを経験させることも重要だと思っています。
その際に、その子が勝ち負けに対して、どのような反応を示しているのかをよく観察するようにしています。
そして、負けても大丈夫!次がある!など、肯定的な意味づけをするようにしています。
以上の内容は、自閉症の人の〝こだわり行動″の一部でありますが、年齢のと共に、こだわりの対象が変わることを教えてくれた経験だと言えます。
以上、自閉症のこだわり-学童期前後以降の特徴について-見てきました。
自閉症の〝こだわり行動‟は、個々によって、強さや内容も様々ですが、ルールや勝ち負けなど、社会的なものもあります。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も、こだわり行動への理解を深めていきながら、自閉症の特性への理解と、こだわり行動を強みに変えていけるような視点を身につけていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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本田秀夫(2017)自閉スペクトラム症の理解と支援.星和書店.