発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

こだわり 自閉症

自閉症のこだわり-学童期前後以降の特徴について-

投稿日:2022年5月9日 更新日:

自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)とは、対人・コミュニケーションの困難さとこだわり行動を主な特徴としています。

こだわり行動の主な特徴としては、物の配置へのこだわり、道順へのこだわり、予定のこだわり、特定の関わり手へのこだわりなど、様々なものがあります。

関連記事:「自閉症児のこだわり行動についてその意味を考える

 

自閉症スペクトラム障害のスペクトラムとは、「連続体」という意味ですので、自閉症の特性が強い方もいれば弱い方まで地続きだということになります。

もちろん、こだわり行動においても、個々において強さや内容は異なります。

関連記事:「自閉症のこだわり-こだわりの強さとその対象について考える-

 

それでは、自閉症のこだわり行動は年齢などの影響を受け、変化することはあるのでしょうか?

 

そこで、今回は、著者の体験談も含め、自閉症のこだわりについて、学童期前後以降によく見られる特徴についてお伝えします。

 

 

今回、参照する資料は、「本田秀夫(2017)自閉スペクトラム症の理解と支援.星和書店.」です。

 

 

学童期前後のこだわりの特徴について

著書の中では、学童期前後以降には、社会的行動の中に、こだわりが埋め込まれることがあると記載されています。

どのような特徴があるのか、以下に著書を引用します。

知的遅れのない子どものこだわり

学童期前後以降、「社会的行動」の中に埋め込まれる

・ルールや決まりごとを頑なに守る

・他者のルール違反に強い不安感を覚える

・他者にルールの遵守を強要する

・勝つことや1番になることに強くこだわる

著書の中では、知的に遅れのない状態において、社会的行動の中に、こだわりが埋め込まれることが、学童期前後以降にあるとしています。

学童期前後以降には、他者との関わりや、集団行動なども徐々に増えていき、集団活動や集団行動にはルールが必要になることが増えるため、ルールや勝ち負けなどにこだわりが移行する場合があるということです。

これまで、こだわりと言えば、時間(予定)や場所、人、動作(手をひらひらさせるなど)、興味関心の狭さといった内容が多かったかと思いますが、それが社会的なルールにもでる場合があるということになります。

 

 

著者の体験談とコメント

著者は長年、療育現場で多くの子どもたちと関わってきていますが、前述したルールを頑なに守ろうとしたり、勝ち負けなどに固執する自閉症の方もいました。

それも、学童期前後以降のお子さんです。

中でも、多かったのが、勝つことや1番になることに強くこだわるというものでした。

絶対に一番でないと嫌だ!負けると癇癪を起こすという子もおりました。

昔、こうした状態を「一番病」といっていたこも書籍などで読んだことがあります。

小学校ではゲームな運動競技など勝ち負けがつくものが多く存在します。

著者が見ていた子どもの中には、最初は負けると癇癪を起こしていた子が、少しずつ負けを受け入れることができるようになった子もおりました。

こうした変化は、急に起こるのではなく、気がついたら受け入れられるようになってきたという感じです。

おそらく、負けてもそれほど悪いことは起こらないということを学習したのかもしれません。また、ゲームでの勝負そのものを楽しめるようになったのかもしれません。

なぜ、こうしたこだわりが減ったのかの理由はよくわかりませんでしたが、本人なりに何かを納得したのか、他のこだわりに注意が向いたのかもしれません。

少なくとも、自閉症の子どもの中には、こうした社会的なルールや勝ち負けなどに固執するケースもあるということを知っておけば、関わり手の不安感も減るかと思います。

そして、負けるという経験をゲームなどで少しずつ練習し慣れておくことも必要だと思います。

著者も子どもと関わるときには、手を抜いて勝たせるときもありますが、負けを経験させることも重要だと思っています。

その際に、その子が勝ち負けに対して、どのように反応しているのかをよく観察するようにしています。

そして、負けても大丈夫!次がある!など、肯定的な意味づけをするようにしています。

 

 


自閉症のこだわり行動は、個々によって、強さや内容も様々ですが、ルールや勝ち負けなど、社会的なものもあります。

私自身、こだわり行動への理解を深めていきながら、自閉症の特性への理解と、こだわり行動を強みに変えていけるような視点を身につけていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

関連記事:「自閉症児・者のこだわり行動の強みについて

 

本田秀夫(2017)自閉スペクトラム症の理解と支援.星和書店.

-こだわり, 自閉症

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

自閉症へのコミュニティ支援の重要性について考える

人とコミュニケーションをとることを苦手としている自閉症の人たちは学校や会社、地域社会という集団環境の中で様々な配慮が必要になるかと思います。 私自身、療育現場などで多くの自閉症の人たちと関わる機会があ …

【自閉症の心の理論の困難さについて】認知的な心と情動的な心から考える

「〝心の理論″とは、他者の意図、欲求、願望、信念、知識といった心の状態を推論する能力」のことを言います。 自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)の人たちは、心の理論の獲得に困難さがあると言われていま …

【自閉症児への支援】ソーシャルシンキングを例に考える

自閉症の人たちは、〝暗黙のルール″を苦手としています。 〝暗黙のルール″とは、他者との距離感や人が話している時は静かに聞く、など多くの人が自然と身につけているルールのことを指します。 自閉症の人たちへ …

自閉症児との関係性の構築について:現場での実際の取り組みから考える

人との関わり方が難しい、相手の意図や考えがよくわからない、相手の表情が読み取りにくいなど対人関係の難しさを特徴とした自閉症といわれる人たちがいます。 職業柄、私は自閉症児・者と関わる機会が多くあります …

【自閉症児の遊びの特徴について】療育経験を通して考える

〝自閉症(自閉スペクトラム症:ASD)″とは、対人コミュニケーションの困難さとこだわりを主な特徴とした発達障害です。 著者が療育現場で関わる子どもたちの中には、自閉的な特徴を持った子どもたちが多くいま …