自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)とは、対人コミュニケーションの困難さとこだわり行動を主な特徴とする発達障害です。
自閉症スペクトラム障害の〝スペクトラム″とは、連続体のことですので、自閉症の特徴が強い方から弱い方まで状態像は多様です。
それでは、自閉症を理解するためにはどのような専門的な知識が必要なのでしょうか?
そこで、今回は、自閉症児・者と関わりが豊富な臨床発達心理士である著者が勧める自閉症を理解するために有益なおすすめ書籍5選【中級~上級編】を紹介していきます。
実際にこれから紹介する本を通して著者自身、発達障害への理解が深まった、支援の役に立った等、有益な知識を得ることができました。
ぜひ、参考にしていただければ幸いです。
1~5の番号はランキングではありません。紹介内容を見て入りやすい本から手に取って頂けるといいかと思います。
1.自閉症の関係発達臨床
この本では、〝関係発達″という視点を踏まえて自閉症の特徴を深く理解できる内容となっています。
例えば、自閉症の行動特徴である、対人関係の障害やこだわり行動について、〝関係発達″から説明すると、これまでとは異なる自閉症の状態像が見えてきます。
また、書籍には、子どもから大人までの具体的な事例も豊富に載っており、さらに、最後の章では、様々な質問について答えていくというQ&Aもとても学びの濃い内容となっています。
日本の発達心理学者として著名な〝鯨岡峻さん″と〝小林隆児さん″が手掛けた本であることもあり、内容の質がとても高く、そして、臨床現場で自閉症児・者と関わる方にとって多くの示唆を与えてくれる本です。
2.自閉症スペクトラムの症状を「関係」から読み解く:関係発達精神病理学の提唱
関係発達臨床で大変著名な〝小林隆児さん″の本になります。
この本も1で紹介したものと同様に、〝関係″をキーワードにしています。
その中で、自閉症(自閉症スペクトラム障害)を取り上げ、自閉症に見られる様々な精神病理の背景には、〝関係の問題=甘えのアンビヴァレンス″があるとして様々な事例を通しての説明があります。
事例の対象も子どもから大人まで多様なライフステージが記載されています。
臨床現場で、自閉症児・者と関わる中で、関係性が取りにくいと感じている方、関わり方に難しさを抱えている人を相手にしている方に特にお勧めです。
3.自閉症と感覚過敏―特有な世界はなぜ生まれ、どう支援すべきか?
自閉症には様々な感覚の問題があると言われています。
その中でも、この本では、自閉症の〝感覚過敏″に焦点を当てています。
〝感覚過敏″は、単発の症状だけではなく、こだわり行動やコミュニケーションの問題にまで影響する(感覚過敏→こだわり→コミュニケーション障害)といった順序性があるとこの本では紹介されています。
また、後半には、〝構造化″をキーワードに支援についての考え方も多く載っています。
〝感覚過敏″から見えてくる自閉症の世界について理解を深めることのできる一冊です。
4.もういちど自閉症の世界に出会う:「支援と関係性」を考える
自閉症の原因は脳の機能障害にあると言われています。
一方で、脳機能に原因があるといった理解や自閉症の行動特徴のみで自閉症のことが分かったというものでもなく、多くの事例を通して支援者との関わりの中でこそ見えてくる自閉症の世界があるということを教えてくれる本です。
自閉症について日常生活での関わりを通して理解を深めたいと考えている方にお勧めです
5.自閉症 心理学理論と最近の研究成果
海外の書籍の翻訳本です。
この本では、自閉症研究の歴史、自閉症の行動レベル・認知レベル・生物学的レベルについて様々な研究から見えてきたことがまとまっています。
非常に多岐にわたる研究内容が紹介されているため、自閉症の心理学研究について詳しく知りたい方にお勧めです。
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