知能検査で代表的なものに、ウェクスラー式知能検査(WISC)があります。
WISCで測定できるものに、言語理解、知覚統合(知覚推理)、ワーキングメモリー、処理速度の4つの群指数と、これらすべての合計得点から算出される全検査IQがあります。
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4つの群指数のうち、知覚統合(知覚推理)は、イメージで考える力になります。
実際の検査では、図形やパズルの検査の実施により、パズルの組み立てや関連性のある図形を推論するなどの課題を行います。
こうして見ると、知覚統合は、視覚的情報・視空間的情報の処理といった印象を受けます。例えば、パズルや図形問題、地図を理解する力、数学や物理などです。
しかし、知覚統合のイメージする力は、上記に上げたもの以外にも私たちの生活の広範囲にまで影響してきます。
それでは、知覚統合といったイメージする力は、私たちが生きていく中のどうようなことに影響するのでしょうか?
そこで、今回は、知能検査から見た知覚統合について、イメージする力は何に影響するのかについて考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「岡田尊司(2022)発達障害「グレーゾーン」 その正しい理解と克服法.SB新書.」です。
知能検査から見た知覚統合について【イメージで考える力は何に影響するのか?】
今回は、著書を参照しながら、1.コミュニケーション能力、2.物事を俯瞰的・客観的に捉える、の2点について見ていきます。
1.コミュニケーション能力
以下、著書を引用しながら見ていきます。
知覚統合は、場の状況や暗黙の意味に気づくためにも重要な能力である。知覚統合が弱いと、周囲の状況や言外の意味を読みとったり、語られない意図を察知したり、状況判断したりすることが難しくなる。
著書の内容から、意外かと思われるかもしれませんが、知覚統合は対人・コミュニケーション能力とも関連してくるということです。
図解やパズルといった視覚的な情報処理だけではなく、人との関わりの中でも、状況理解や言葉の裏側にある意図を汲み取る力にも影響してくるということです。
対人・コミュニケーションでは、言葉以外にも、身振り手振りといった非言語的要素、そして、その場の雰囲気などの状況把握も大切になります。
こうした理解において、知覚統合といったイメージする力が影響するということが著書の内容から考えられます。
2.物事を俯瞰的・客観的に捉える
以下、著書を引用しながら見ていきます。
ものごとを図式化して考える知覚統合の能力は、ものごとのベースにある構造や関係を把握する能力でもある。したがって、知覚統合が弱いと、細かな一つ一つの事実にとらわれすぎて、全体の構造が見えてこない。主観的な視点にとらわれてしまい、客観的にものごとを俯瞰するということが難しくなる。
著書の内容から、知覚統合が強いと、物事を俯瞰的・客観的に捉えることが得意であり、逆に、知覚統合が弱いと、細かい部分に捉われ、主観的な視点になることが多いと言えます。
そのため、知覚統合が弱いと、物事の全体的な構造を把握することが困難になります。
例えば、対人関係などでAさんBさんCさんなどの複数の関係性の理解や、Aさんがどのような意図でBさんに思いを伝え、それによってどのようなことが生じているのかなど、対人関係における全体的な構造を俯瞰的・客観的に理解することが難しくなります。
そのため、自分の主観的な感情や理解に左右されるなど、自分の視点から離れて物事を考えることが困難となります。
以上、知能検査から見た知覚統合について【イメージで考える力は何に影響するのか?】について見てきました。
著者は、知覚統合というと、検査内容や言葉の持つイメージから、図形やパズルを解くなど視覚的な情報処理能力を測るものだと思っていました。
もちろん、それも間違いではありませんが、知覚統合の力は、対人・コミュニケーション場面での非言語的な情報の理解や、物事を俯瞰的・客観的に捉える力など非常に広範囲にまで影響していくるということです。
それだけ、イメージする力は社会生活に必要不可欠といってもいいほど重要な能力だということを改めて考えさせられました。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も知能検査の持つ意味を深掘りしていきながら、今いる療育現場での子どもたちの理解に繋げていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
岡田尊司(2022)発達障害「グレーゾーン」 その正しい理解と克服法.SB新書.