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発達性協調運動障害 知能検査

知能検査から見た発達性協調運動障害について

投稿日:2022年12月28日 更新日:

知能検査で代表的なものに、ウェクスラー式知能検査(WISC)があります。

WISCで測定できるものに、言語理解、知覚統合(知覚推理)、ワーキングメモリ、処理速度の4つの群指数と、これらすべての合計得点から算出される全検査IQがあります。

 

関連記事:「ウェクスラー式知能検査とは【発達障害の理解と支援で役立つ視点】

 

それでは、知能検査から発達障害との関連性となる指標などを知る手がかりはあるのでしょうか?

 

そこで、今回は、様々ある発達障害の中で、発達性協調運動障害(DCD)を取り上げ、知能検査との関連性について考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「岩波明(監修)小野和哉・林寧哲・柏涼ほか(2020)おとなの発達障害 診断・治療・支援の最前線.光文社新書.」です。

 

 

知能検査から見た発達性協調運動障害について

まずは、発達性協調運動障害(DCD)についてですが、発達性協調運動障害とは、粗大運動や微細運動といった協調運動の困難さが社会生活に持続的に問題が生じている状態のことを言います。

 

関連記事:「不器用さについて考える:発達性協調運動障害とは?

 

それでは、知能検査(WISC)から見た発達性協調運動障害の関連性について、以下、著書を引用して見ていきます。

動作性下位検査では、「符号」「記号探し」の得点が低い場合は動作性処理速度に問題があり、「積木模様」の得点が低い場合には視空間認知に問題があるといったことがわかります。

 

そして、そのような動作性、すなわち運動機能系や視覚認知の問題などがある場合には、「発達性協調運動障害」(DCD)の可能性を考えます。

 

著者の内容から、知能検査の中でも、処理速度(符号や記号探し)や知覚統合(積み木模様)に問題がある場合には、運動系や視覚認知の問題が想定され、「発達性協調運動障害(DCD)」の可能性があるとしています。

著書にある〝動作性“とは、WISC-Ⅲまで使用されていた用語であり、動作性の下位項目には、処理速度と知覚統合(知覚推理)がありました。

つまり、発達性協調運動障害と関連性が高いものは、知能検査(WISC)の中では、処理速度や知覚統合(知覚推理)ということが考えられます。

 

 


著者の周囲にも、発達性協調運動障害の診断を受けたわけではありませんが、不器用さが見られる人たちがおります。

こうした人たちの行動を見ていても、手と目を使った処理のスピードがゆっくりであるという印象があります。

処理速度は仕事に影響してきますので、処理のスピードが遅い、作業効率が悪いとどうしても仕事のパフォーマンスが低下してしまいます。

こうした不器用さに対しても今後ますます周囲の理解といった合理的配慮が大切になってくると考えます。

また、目で情報を捉えるという視覚認知も、運動に不器用さがある人たちによく見られる特徴でもあります。

人の視知覚系の発達は、目と手の協応動作の積み重ねにより、手の動き・目の動きを連動させて発達していくものでもあるため(例えば、積み木遊び・パズルなど)、手先の動作と視覚認知には関連性が強くあることが考えられます。

 

関連記事:「発達性協調運動障害と視覚情報処理に困難を抱える子どもたちへの対応

 

注意点として、知能検査と発達性協調運動障害の関連性は、あくまでも想定されるというレベルの話ですので、上記の得点が低いイコール発達性協調運動障害というわけではありません。

発達性協調運動障害への診断には、医師による総合的な評価が必要になります。

 

 


以上、知能検査から見た発達性協調運動障害について見てきました。

知能検査と様々な発達障害の関連性などは今後さらに研究が進んでくると感じています。

その際に、検査からわかること、その検査は何を測っているのかという正しい理解、そして、検査の限界などを理解していくことも大切だと感じます。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も知能検査からも療育で活用できる情報を収集していき学びを深め実践に繋げていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

岩波明(監修)小野和哉・林寧哲・柏涼ほか(2020)おとなの発達障害 診断・治療・支援の最前線.光文社新書.

-発達性協調運動障害, 知能検査

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