私が義務教育を受けていた時代はスマホやタブレットなどがない時代でもあり、紙ベースの学習が中心でした。当時は、テクノロジーがこんなに進歩するとは予想していませんでした。
最近は技術の進歩により、学校でも積極的にICTを活用しているところも増えてきているようです。私の身近な学校でも特別支援学級で生徒一人一人にiPadを普及し、それを使って学習しているところもあります。
今回は私が発達障害児・者との関わりを通して、時代の変化に応じてICTの活用の良さや難しさなどについて考えてみたいと思います。あくまでも私の経験則からの話になります。
私はこれまで、未就学児を対象とした療育施設や小学生を対象とした放課後等デイサービスなどで、発達障害など発達につまずきを抱える子供たちを支援する仕事に8年以上にわたり携わってきました。
そうした経験から、まだまだ現場にはICTの活用という認識や理解が私も含めて少ないのが現状だと実感しています。当然、療育ならではの身体を使って学習するという良さもありますが。
そうした大人の認識や理解とは逆に子供たちは、ipadやスマホなど日々の生活の中でテクノロジーを使う頻度が増えてきています。実際に、子供たちから使っているエピソードなどの話が多くあがります。中でも、YouTube人気は非常に高く、事業所でもYouTubeごっこなど、工作でカメラを作っての撮影ごっこなどをして遊ぶ様子も多いです。スマホも同じで、携帯ごっこもよくやる遊びの一つです。中には、将来の夢はユーチューバーと話す子供もおり、何を投稿するのかを考えている子供もいます。
子供たちの工作内容や作った物での大人とのやり取りや、子供同士の遊びを見ていると、非常に彼らは新しいテクノロジーに慣れるのが早いという印象があります。また、テクノロジーへの興味や関心も高い印象があります。
機械の操作を見ても、なかなかうまく話すことのできない子供が、スマホなど視覚的な操作は得意で大人の想像を超えるスピードで学習しているという話を保護者から聞くこともあります。私も機械操作が得意な発達障害の子どもを見ていると、紙ベースの学習ではなく彼らの認知にあったテクノロジーを活用した方が非常に有効だと感じることもあります。
学校現場でも、ipadを使っている子供に話を聞くと、「楽しい!面白い!」など、使っているアプリについて話してくれます。確かに、少しアプリを調べてみると、人が工夫して教えるより、よほどわかりやすい、優秀なアプリも多くある印象を受けます。しかも中には、無料でダウンロード可能なものもあります。
まさに、ICTを活用することは、新しい世界を見せてくれるという良さや、苦手なところをサポートしてくれる、そして、得意なところをさらに引き延ばしてくれるという良さがあると思います。それは、これまで話してきた通り、療育現場で子供たちの姿を見ていると感じるところでもあります。
こうしたICTの活用で難しい問題が、教える側の問題だと思います。つまり、それが一つの限界を規定してしまうことになります。
今の大人はテクノロジーが今より進んでいなかった頃の時代であるため、そうした技術への理解や活用が苦手な人も多くいるかと思います。私も人のことは言えませんが、技術への理解は療育現場や今後の教育において非常に重要なテーマだと思っています。
自分たちが学んできた学習をテクノロジーを活用することでどれだけ効率よく楽しく、そして、個々に応じた学びができるかという発想が重要だと思います。
発達障害児・者は様々な生得的な特性上、認知に偏りがあります。そうした認知の偏りを、一般的な学習内容で均一化された環境で学ぶことじたいが本人にとって厳しい話になります。
例えば、読み書きが難しい人たちには、それを代替する方法を学習する支援や環境が重要になります。また、日本語学習で非常につまずいている場合など、英語学習はいっそのことやめるなどの発想も重要だと思います。
また、子供にあった学習環境が保障されないと、学びへの意欲が低下してしまうという問題も生じます。せっかく良い技術があったとしても、それを周囲が教えられない、教える環境が作れないと、学びへの意欲が低下してしまうと思います。
大切なのは、これまでやってきた内容を批判的に見ながら、時代の変化を認識し、技術に慣れ、人に応じてICT活用を柔軟に組み込むことなのだと思います。
今後、発達障害児・者へのサポートとして、ICTの活用がさらに普及してくるかと思います。その際に、技術でできること、人がすべきところを考えながら、より良い発達理解と支援を目指していきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。