日本では2007年4月から特別支援教育が実施され、発達障害児支援への教育・対策も進んできています。
それまで対象とはならなかったASDやADHD、LDなども支援の対象として考えられるようになりました。
そのことで、発達障害児など発達に躓きのある児童に個別の支援や配慮が実施されるようになりました。
しかし、学校などにもよりますが、支援学級などを見ていると、大変な児童の割合が多くても(特別なニーズの高い児童)教員の数が決まっているなど、支援の枠組みが固定化しているように感じます。
それでは、欧米ではどうでしょうか?
そこで、今回は、発達障害児支援の枠組みについて、臨床発達心理士である著者の経験談も踏まえながら、日米の違いから考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「本田秀夫(2022)学校の中の発達障害:「多数派」「標準」「友達」に合わせられない子どもたち.SB新書.」です。
発達障害児支援の枠組みについて【日米の違いから考える】
以下、特別支援教育から日米の枠組みの違いについて著書を引用しながら見ていきます。
欧米では、子どもになんらかの教育的なニーズがある場合、(中略)個別に評価することが多いです。そして、一人ひとりの評価を合算して、学校での対応を決めます。支援を必要とする状況が多ければ支援者を増やし、そうでなければ支援者を減らすという形で、合理的に対応しているわけです。
日本の場合には、特別支援教育では先生一人に対して子どもが何人といった枠組みが決まっています。そのため、どのようなタイプの子どもが入ってきても、その枠を超えた対応は基本的にできません。
著書からもわかるように、日本では、子どもの数と教員の数の枠が予め決まっているのに対して、欧米では、子どものニーズを評価した結果、教員数の増減を調整しているという違いあります。
日本では、平均や基準から支援の枠組みが作られている傾向があることがわかります。
しかし、大切なことは、子どもの一人ひとりのニーズの把握です。
こうしたニーズの把握による評価を行い、支援の枠組みを設計し直す必要があります。
特に、ニーズの高い児童がいる教室では、先生の負担が大幅に高まります。
そうなると、ニーズの高い児童を気に掛ける頻度が増し、結果、他の生徒が置き去りになってしまうという負の連鎖が生じることも出てきます。
制度上の問題もあるため、簡単には解決が難しいかもしれませんが、子どもたちの実情をしっかりと評価して、それに基づく学級の体制づくりが必要です。
それでは、次に著者の療育現場での経験談から、支援の枠組みを深掘りしていきたいと思います。
著者の経験談
著者は現在放課後等デイサービスで療育をしています。また、以前は、未就学児を対象に障害児保育をしていました。
その中では主に、個別療育ではなく、集団療育を行ってきました。
こうした体験から、子どもと大人の人数比から、単純にクラス(一日の活動集団)を構成する発想では支援がうまくいかないことが多くありました。
中でも、大変な児童(ニーズの高い児童)には、その子への対応に支援者が一人つくのが前提となります。
また、こうしたニーズの高い児童が多い活動日やクラスだと、その日の体制づくりが非常に難しくなります。
単純に支援者の数を増やすことは様々な理由から難しいため、現在所属している支援者間で大切作りをしていく必要があります。
もちろん、支援者の人数も重要ですが、それに加え、支援者の力量も同様に重要です。
その中で、著者が行っている取り組み方法としては以下、様々あります。
・時間帯に応じた子どもの導線を考える
・活動環境を分けて対応する
・繋がりそうな子どもたち同士をまとめる
など、これらの内容を具体化していくとさらに詳細な内容になっていきます(具体的な内容について今回は割愛します)。
療育で大切なことは、一人ひとりのニーズを把握した支援の枠組み作りです。
これは、特別支援教育とも同様だと思います。
限られた支援者による体制作りの難しさは、学校現場とも似ている点も多くあるかと思います。
長年、療育現場に勤めている著者の実感としては、前述した欧米の取り組みのように、支援ニーズを評価した上での体制づくりをさらに行っていくことが大切だと感じます。
もちろん、取り組まれている部分もあるかと思いますが、まだまだ改善の余地はあると感じています。
以上、発達障害児支援の枠組みについて【日米の違いから考える】について見てきました。
発達障害児支援において、個別のニーズの把握に伴った支援と配慮がとても大切です。
そして、クラスや集団という単位を考える場合に、うまく集団がまわる体制作りが非常に重要です。
私自身も、まだまだ未熟ですが、今後も子どもたちにより良い支援を行っていくために、支援の枠組みを見直し続けていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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本田秀夫(2022)学校の中の発達障害:「多数派」「標準」「友達」に合わせられない子どもたち.SB新書.