著者は長年、療育現場で発達障害など発達に躓きのある子どもたちと関わってきています。
その中で、子どもたちへの関わり方には、発達特性や発達的視点を活用したアプローチや、感覚統合や愛着などの関係性からのアプローチなど、様々なものがあります。
上記の内容はある程度、知識と実践経験が必要な面があるため、専門的な力量が求められるものだと思います。
一方、こうした専門的な力量の必要性を踏まえながらも、一人の人間に真摯に向き合う姿勢も非常に重要だと思います。
それは、つまり、その子のパーソナリティを理解していくということでもあります。
パーソナリティとは、その人の良さや、好き・嫌い、苦手さなど、○○くんとはこういう人、○○ちゃんとはこういう人、という内面のことを言います。
それでは、こうしたパーソナリティの部分を理解し、その子の良さを育てていくには、どのような関わり方が必要になってくるのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害児への関わり方で大切なこととして、臨床発達心理士である著者の経験談から、子どもの良さを伸ばすためにできることについて考えを深めていきたいと思います。
発達障害児への関わり方で大切なこと【子どもの良さを伸ばすためにできること】
それでは、以下、1.子どもの良いところを見つけ育てるということ、2.子どもの苦手なところを見つけ支えるということ、3.子ども同士の関係を繋ぎ育てるということ、の3つの視点から発達障害児への関わり方で大切なことをお伝えします。
1.子どもの良いところを見つけ育てるということ
○○くんは、ゲームが得意、車や電車に詳しい、スポーツが得意など、人によって得意なものがあります。
得意は好きと非常に近い関係があるため、好きなことを探すことも大切です。
また、○○ちゃんは、年下に優しい、優しい言葉がけを人にできる、人の悪口を言わないなど、内面の良さも得意な面としてあります。
著者が勤める療育現場には、上記に記載した得意なことを持つ子どもたちが多くいます。
こうした得意なところを見つけていく中で大切なことは、人との比べないということ、そして、関わる大人がその子の良さを見つけようとする(それは些細な行動からでも良い)姿勢が大切だと思います。
子どもの良いところを見つけ、肯定的な声をかけ続けるためには、日頃の子どもたちの様子をよく観察しておく必要があります。
こうした関わり方を継続していくことで、その子の内面には、周囲からの肯定的な言葉が蓄積されていくように思います。
そして、周囲もおのずと大人がかける言葉を聞いているため、○○くんは○○の良さがある、○○ちゃんは○○といった良さがある、という印象が定着していくように思います。
それは、何も子どもたちだけではなく、関わる大人たちにもその認識が浸透していきます。
つまり、パーソナリティといった、人の得意や好きなところや人としての良さは、子どもに向けた関わり方(言葉がけなど)によって、徐々に育っていくように思います。
2.子どもの苦手なところを見つけ支えるということ
得意なところがあれば、もちろん、苦手なところもあります。
得意なところを見つけ伸ばすことができる人は、子どもの苦手なところにもしっかりと目を向け、支える力がある人だと思います。
療育現場では、子どもにたちは、様々な失敗や周囲からみて好ましくない行動を見せることがあります。
こうした苦手さの背景は人それぞれですが、関わり方で大切なことは、パーソナリティを傷つけないようにしていくことです。
つまり、○○する○○くんは駄目だ!という考えではなく、○○くんが○○すると○○ちゃんが○○のような嫌な思いをする、○○くんとうまく遊べなくなってしまうなど、よくない行動のみに着目して伝えるという意識が重要です。
そして、可能であれば、○○した方が良いと思う、○○する方法はどうかな?など代替案を提示していくことも大切です。
こうした関わり方は、大声で注意するというよりも、できれば、個別で冷静に伝えていくことが重要だと思います。
あくまでも、行動を指摘する、ということが大切であり、パーソナリティを否定する声掛けはしないように心がける必要があります。
このような関わり方は、すぐに効果がでる場合とそうでない場合があります。
しかし、長期的に見れば、行動への指摘と、改善行動への指摘の方が好ましい関係を維持しながら、心の成長に伴い、次第に良い行動へと修正していくことを可能にするのだと思います。
3.子ども同士の関係を繋ぎ育てるということ
ある程度、集団での関わり方ができる子どもたちは、些細なきっかけから互いの結びつきが強くなることがあります。
それは、好きな遊びが共通している、話していて楽しい相手である、何となく一緒にいて楽しい、居心地が悪くない、など、相手の良さを何らかの形で認識することができたことが大きく作用しているように思います。
著者はできるだけ、子どもの良いところを他の子どもにも伝えるようにしています。
こうした大人の言葉を日頃から聞いている子どもたちは、自然と相手の良さを認識するようになっていくと感じます。
さらに、子ども同士の繋がりができてからも、互いの繋がりをより強固にしていく関わりが重要だと思います。
それは、お互いの気持ちのすれ違いなどがあるため、継続してお互いの認識の穴を埋めることを大人がしていくことが大切です。
こうした子どもたち同士がお互いを意識できるような声掛け、遊びや活動を通して接点を作るということは、療育の中ではとても大切だと思います。
子ども同士の関わりを通して、様々な人がいて、その人なりの良さがあるということを学ぶきっかけを作ることができます。
さらに、他児との関わりを通して自分を見つめる、自分を知るということにも繋がっていきます。
こうした点から、子ども同士の関係を繋いでいくことは、その後の、多様な人がいるという社会を知ることにも繋がっていくのだと思います。
以上、発達障害児への関わり方で大切なことについて見てきました。
繰り返しになりますが、著者は発達障害児への療育をしています。
発達障害があろうがなかろうが、パーソナリティとしての人の良さや得意・不得意、好き嫌いは人それぞれ様々です。
そして、今回取り上げた関わり方もまた、発達障害があろうがなかろうが、共通して大切なものだと思います。
ただ、一つだけ補足するとすれば、発達障害児においては、上記の3点の関わり方により丁寧さが求められるということです。
上記の3点を丁寧に実践していくことは、子どもたちの心の成長にとって、必ずポジティブな影響を与えるものだと実感しています。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育(発達支援)の現場から子どもたちに良い関わりができるように、私自身の良さ・苦手さにも目を向けていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。