特別支援教育が進む中、発達障害児への教育もまた進歩しています。
教育で大切なことは、子どもの力を伸ばすことにあります。
一方、子どもたちの能力や性格や環境は多様であるため、人それぞれ能力を伸ばすには様々な要素があるかと思います。
それでは、発達障害児の教育の中で、一体何が特に大切なものとして考えられているのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害児の教育で大切なこととして、臨床発達心理士である著者の経験も交えながら、モチベーションの重要性から考えを深めていきたいと思います。
なお、モチベーションの重要性は、発達障害児の教育だけではなく、すべての子どもたちとって共通に重要なものです。
今回参照する資料は「本田秀夫(2022)学校の中の発達障害:「多数派」「標準」「友達」に合わせられない子どもたち.SB新書.」です。
発達障害児の教育で大切なこと【モチベーションの重要性】
以下、著書を引用しながら見ていきます。
子どもはモチベーションを持てることなら、どんどん学習していくものです。そういう意味で、大人がやるべき教育とは「子どもの意欲を引き出すこと」なのではないでしょうか。
著著にもあるように、教育で大切なことは、子どもたち一人ひとりのモチベーションを引き出すことにあります。
モチベーションは、ある行為を行い、その行為によって得られた体験(楽しさ、ワクワク感、感動、驚き)の結果、次への行動が強化されます。
ですので、モチベーションを高めて何かを行うというよりは、ある行為を行った結果、何かを得られた体験が重要だということです。
例えば、料理動画を見てやる気になっても、実際に料理を作りその結果、おいしい料理が完成したなど、自分の行為と結果が結びつく体験がなければ、モチベーションが高まり、そして、維持することは難しいでしょう。
このようにモチベーションとは、行為と結果が好ましい形で結びつくことで、さらに、次への行動が強化されるものです。
そのために、子どもと関わる大人は、子どもたちに様々な体験をさせることが重要です。
子どもたちが何に興味を持つかは、やってみないと分からないからです。
著者が勤める放課後等デイサービスにもモチベーションが高まった子どもの例は多く存在します。
例えば、工作遊びが一度うまく行きその結果さらに良い作品を作ろうとした子ども、集団遊びでうまく遊べた結果さらに集団への参加に意欲的になった子どもなど、詳細は割愛しますが、様々な例があります。
こうした遊びは、支援者が意識的に取り組んだものもありますが、どちらかというと、最初の一歩は偶発的なものが多いように感じます。
それは、関わる支援者は子どもが何に興味を示すのかは、やってみないと分からないからです。
そして、一度、興味の火が付くと、そこから派生して関連性のある興味のある遊びを行うケースが多くあります。
それでは、発達障害児への教育という視点に枠を絞った際に、どのようなモチベーションの高め方があるのでしょうか?
次に、著書を参照しながら発達障害への取り組みを例にお伝えします。
以下、著書を引用します。
ショプラ―先生は、発達障害の人たちの「自分はこれができるんだ!」という気持ちと、その気持ちから生まれるモチベーションを大事にされていました。「できる」という気持ちに基づくモチベーションを持たせるために、視覚的構造化を活用しているとおっしゃっていました。
著書の中で、出てくるショプラー先生とは、自閉症療育で世界的に有名な方です。
中でも構造化は様々な国で認知されており、自閉症の視覚的有意な能力を活用して、環境を構造化(空間・時間・手順などを)するものです。
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こうした構造化を行うことで、自閉症を中心とした発達障害の人たちが、環境からの意味を理解し、より意欲的に行動できるということが、ショプラー先生によれば、その人たちが「わかった!」、「できる!」という感覚を生み出し、モチベーションを高めることに繋がるのだということです。
著者が勤める放課後等デイサービスもまた、子どもに応じて環境を構造化しています。
子どもに合った環境を整えることで、子どもたちは安心して集中して活動に取り組むことができます。
そして、うまくいった経験をもとに、さらに、自ら意欲的に行動します。
はじめは大人の支えのもと、一緒に取り組んでいた子どもが自分から進んで取り組む様子が増えていきます。
こうした変化は、短いスパンで見られるものは少なく、どちらかというと中・長期的なスパンで見られるものが多いと感じます。
以上、発達障害児の教育で大切なこと【モチベーションの重要性】について見てきました。
これまで見てきた通り、発達障害児だけではなく、すべての子どもたちにおいて、教育で大切なことはモチベーションを高めることです。
そのために、モチベーションの源泉となるものを様々な体験を通して発見することが重要です。
さらに、発達障害児の例からも見てきたように、子どもたちにとって、「わかる!」「できる!」といったことが基盤となり、モチベーションが高まることがあります。
そのため、子どもたちにとってわかりやすい環境づくりや子どもたちの理解度に応じた課題の設定を調整していくことが大切です。
私自身も、療育現場で子どもたちが何に興味があり、興味を継続できるためにはどのような工夫が必要なのかを手探り状態で模索している状態です。
まだまだ未熟ではありますが、少しでも自分の取り組みが、子どもたち一人ひとりのモチベーションに繋がっていけるように今後も試行錯誤を続けていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
本田秀夫(2022)学校の中の発達障害:「多数派」「標準」「友達」に合わせられない子どもたち.SB新書.