発達障害児の多くは感覚の問題があると言われています。
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感覚に問題があると、無意識的に不足した感覚刺激を欲っしたり、情緒の不安定さなど様々な所にマイナス面の行動が見られることがあります。
そのため、関わる子どもがどのような感覚の問題があるのかを理解し、それに対する対応をしていくことが大切になります。
それでは、発達障害児の感覚への支援にはどのような方法があるのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害児の感覚への支援について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、公園遊びを例に考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「木村順(監修)(2014)発達障害のある子どもの運動と感覚遊びを根気よくサポートする!.日東書院.」です。
発達障害児の感覚への支援【公園遊びを例に】
公園には、子どもの感覚を満たす遊具が多くあります。
それでは以下に、様々な遊具とその遊具がどのように感覚支援に有効なのかをお伝えしていきます。
1.砂場遊び
以下、著書を引用しながら砂場遊びで期待される効果を見ていきます。
触覚の「識別系」が活性化され、その結果、防衛反応が軽減されやすくなります。
「手の識別系」を活性化させること自体が「手の器用な動き」を引き出してくれるのです。
著書の内容では、砂遊びの有効性は「識別系」の機能の活性化と、「手の器用な動き」を引き出すことだと考えられています。
「識別系」とは、触覚を通して、物の形や大きさ、硬さなどを理解することです。
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砂場遊びには、山やトンネル作り、泥だんご作りなど様々な遊び方があります。
著者も未就学児を対象に療育をしていた頃は、手でダイナミックに砂遊びをする子もいれば、バケツやシャベルなど道具を使う子もいました。
また、最初は手を使って遊んでいた子が成長と共に道具がうまく使えるようになった子もいます。
砂場遊び一つとっても、感覚刺激の活性化や手の巧緻性を高めるなど、発達上ポジティブな要素が多くあることがわかります。
2.トランポリン遊び
以下、著書を引用しながらトランポリン遊びで期待される効果を見ていきます。
「平衡感覚」を受け止める脳の回路の活性化をはかると、運動回路として働いている「姿勢調節」機能や「目を動かす」機能が育っていきます。
「自己刺激行動(多動やつま先立ち)」が改善します。
著著の内容では、トランポリン遊びの有効性は、「平衡感覚」が活性化され、それによって、「姿勢調節」機能や「目を動かす」機能の育ちに貢献し、また、「自己刺激行動」の改善にも効果があると考えられています。
トランポリン遊びというと、バランス感覚を鍛えるということは想像できるかと思います。
著者がこれまで見てきた子どもたちの多くはトランポリン遊びが大好きです。
トランポリン遊びができる公園などは少ないため、室内用の一人用トランポリンでもいいかと思います。
中でも、多動性のある子どもは、トランポリンを少し跳ぶと落ち着く傾向があるように思います。
そのため、子どもが落ち着きのない時など、トランポリン遊びをして少し感覚刺激を入れた後に次の活動に誘うことが有効であるように思います。
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3.ブランコ遊び
以下、著書を引用しながらブランコ遊びで期待される効果を見ていきます。
基本的には「平衡感覚」遊びという点では変わらないので、トランポリンと共通の効果が期待できます。「姿勢調整」機能や「目を動かす」機能が育ち、「自己刺激行動(多動やつま先立ち)」が改善します。
著者の内容では、ブランコ遊びの有効性はトランポリンと同様の効果が期待できるとしています(「姿勢調整」機能や「目を動かす」機能が育ち、「自己刺激行動(多動やつま先立ち)」の改善)。
療育現場には、公園遊びと言えばブランコ遊びというくらい、ブランコが大好きな子どもたちが多くいます。
著者が見ている子どもの中には、非常に多動で落ち着きのない子がいますが、著書にあるように確かにブランコ遊びをした後は落ち着く様子が増えている感じがします。
また、乗る回数を重ねていくことで、乗り方が安定してきた様子を見ると、姿勢を整える力にも大きく関与しているのだと実感できます。
4.すべり台遊び
以下、著書を引用しながらすべり台遊びで期待される効果を見ていきます。
トランポリン、ブランコに引き続き、「平衡感覚」を活用した遊びです。「姿勢調節」機能や「目を動かす」機能が育ち、「自己刺激行動(多動やつま先立ち)」が改善します。
著著の内容では、すべり台遊びの有効性はトランポリンとブランコと同様の効果が期待できるとしています(「姿勢調節」機能や「目を動かす」機能が育ち、「自己刺激行動(多動やつま先立ち)」の改善)。
著者が見ている子どもたちもすべり台遊びが好きな子どもは多くいますが、繰り返し遊び続けるには、トランポリンやブランコの方が、人気が高いようい思います。
一方で、階段を登るという行為が楽しい子もいます。著者が未就学児を対象に療育をしていた頃に、階段上の所を登る行為を楽しむ子どももいました。
こうした子どもには、すべり台で繰り返し遊ぶことで(行為:登る⇒結果:滑る、がわかりやすい)充足感が持てるように思います。
こうしてみると、同じ感覚刺激を得られるものでも、子どもが好き・楽しい・身体にとっってわかりやすいという遊具が大切なのだと感じます。
5.ジャングルジム遊び
以下、著書を引用しながらジャングルジム遊びで期待される効果を見ていきます。
またぐ、くぐる、よじのぼるという活動は、自分の手・足・体のサイズや輪郭を感じ、力の入れ加減、曲げ具合、伸ばし具合などの学習となります。
ボディイメージの発達を促すだけでなく、バーにつかまるときの握り=パワーグリップの活動が手先の器用さの基礎を作ります。
著書の内容から、ジャングルジム遊びで活性化する身体機能はボディイメージの促進です。
ボディイメージとは、身体イメージとも言いますが、体の様々な部位を意識して動かす土台になるものです。
また、バーにつかまる際のグリップによって固有覚が育ち、手先の巧緻性にもポジティブな影響を与えます。
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著者が見てきた子どものたちも、高い所が大好きな子が多くいたため、自分で試行錯誤しながら、ジャングルジムの頂上めがけて登る練習をしていた子もいました。
今思うと、ボディイメージを獲得していたのだと思います。
以上、発達障害児の感覚への支援【公園遊びを例に】について見てきました。
公園遊びといっても上記に示したもの以外の遊具も様々あるかと思います。
今回は、その中でも、よく公園で見かけるもの(トランポリンは除きます)を例に見てきました。
私自身、こうしてこれまでの公園での遊具遊びを振り返って見ると、子どものたちの感覚・運動発達に大きく寄与していたのだと考えさせられます。
今後も、子どものたちの発達に貢献できるような理解と支援を目指していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
木村順(監修)(2014)発達障害のある子どもの運動と感覚遊びを根気よくサポートする!.日東書院.