発達障害児は、様々な感覚の過敏さや鈍感さといった感覚の問題を持つことが多いと言われています。
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それでは、発達障害児の感覚の問題に対して、どのような支援の視点があるのでしょうか?
そこで、今回は、発達障害児の感覚の問題への支援について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、感覚の過敏さへの支援について考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「岩永竜一郎(編著)(2022)ハンディシリーズ 発達障害支援・特別支援教育ナビ 発達障害のある子の感覚・運動への支援.金子書房.」です。
発達障害児の感覚の問題への支援【感覚過敏(過剰反応)について】
以下、著書を引用しながら支援のポイントを見ていきます。
支援は、感覚刺激を少なくする「引き算の支援」と感覚刺激をとりこむ「足し算の支援」、「認知的な支援」に大きく分けることができる。
それでは、次に、1.感覚過敏(過剰反応)、2.感覚鈍感(過小反応)、3.感覚探求のそれぞれの感覚の問題の中で1.感覚過敏(過剰反応)を例に取り、「引き算の支援」、「足し算の支援」、「認知的な支援」からのアプローチについて説明していきます。
感覚過敏(過剰反応)への支援方法
「引き算の支援」
感覚過敏への対応として、真っ先に思い浮かぶのは、過敏さが要因となっている感覚刺激を減らすことです。
感覚刺激を減らすという意味で、引き算の支援とも言います。
著者が現場で関わる子どもたちの中には、聴覚過敏の子どもたちが多くいます。
こうした聴覚過敏への対応方法は、苦手な音刺激を減らす・防ぐということです。
まずは、苦手な音がする対象と物理的な距離をとることが大切です。
どうしても、距離をとるなど遮断が難しい場合などは、イヤマフや耳栓などが有効かと思います。
またその他、感触遊びなど粘土遊びをしたいが粘土のベタベタした触感が苦手な子には、手袋を貸すという方法もあります。
このように、感覚過敏に対する、「引き算の支援」は非常に現場でよく行われるものだと思います。
「足し算の支援」
以下、著書を引用しながら見ていきます。
集団生活を基本とする学校では、視覚、聴覚、触覚、嗅覚などの感覚刺激を少なくするには限界がある。
著書にあるように、前述した「引き算の支援」、つまり、苦手な感覚を減らす・遮断する取り組みには限界があるとし、以下の「足し算の支援」への重要性も指摘しています(以下、著書引用)。
この支援の方法としては、休み時間などを活用し、感覚刺激の蓄積をリセットし、覚醒や情動を整えることが重要である。
著書には、感覚過敏のある子は、日中の学校などで多くの刺激を無意識的に取り込んでしまうため、こうした感覚を一度リセットする必要があるとしています。
そのため、その子の好む刺激を「足し算の支援」より、取り込むなどが有効だとしています。
著者の療育現場にも、学校が終わり、多くの感覚情報を取り込んできたこともあり、非常に疲れている子もいます。
こうした子どもたちには、その子の好きな感覚を知り、好きな感覚を取り入れることで情緒が安定していくことがよくあります。
例えば、好きな音楽を聴く、ブランコや自転車遊びなど好きな感覚刺激を取り入れる、好きな感触遊びをするなどがあります。
「認知的な支援」
苦手な感覚を知っておくことで事前にその子の行動を予測した関わり・対応ができます。
「認知的な支援」とは、事前に苦手な感覚に関する情報を相手に伝えることでもあります。
著者が関わる子どもの中には、苦手な音(例:子どもの声)が予測できる場合には、その子のいる時間や活動場所などを事前に伝えることもします。
そうして事前の見通しを知ることで、本人が安心するということはよくあるように思います。
以上、発達障害児の感覚の問題への支援【感覚過敏(過剰反応)について】見てきました。
感覚の問題への支援にも、様々な方法があり、その中でも、足し算・引き算という視点は、関わり手にとって分かりやすい内容であると思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どものたちの様々な感覚情報を知っていきながら、感覚の問題からのアプローチも継続して実践していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
感覚統合に関するお勧め書籍紹介
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岩永竜一郎(編著)(2022)ハンディシリーズ 発達障害支援・特別支援教育ナビ 発達障害のある子の感覚・運動への支援.金子書房.