発達障害児の中には、不器用さが多く見られることがあります。
「不器用」という用語も、様々な文脈で使われますが、今回は運動の分野に限定していきたいと思います。
最近では、運動の問題を主とした障害として、発達性協調運動障害という発達障害も少しずつ聞かれるようになってきています。
発達性協調運動障害は、その名称通り運動を主とした障害ですので、診断のある人たち全員不器用ということになります(発達性協調運動障害について詳しくは、「不器用さについて考える:発達性協調運動障害とは?」に記載しています)。
それでは、他の発達障害について不器用さは見られるのでしょうか?
今回は、不器用さとの関連として、自閉症、学習障害、ADHD、知的障害、それぞれについて見ていきたいと思います。
今回参照する資料は「宮原資英(2013)特集,不器用さのある発達障害の子どもたちへの支援.総説,不器用さのある発達障害の子どもたちへの支援.アスペハート,33,12‐18.」、「辻井正次・宮原資英(監修)(2019)発達性協調運動障害(DCD)-不器用さのある子どもの理解と支援-.金子書房.」です。
①自閉症児と不器用について
海外の研究結果より
- 自閉症児の中には、運動能力が普通かそれ以上に優れている子もいる
- 自閉症児には、運動能力が低い子が多いが、運動に問題がないどころか優れている子もいる
②学習障害児と不器用について
- 学習障害の診断や療育が進んだアメリカにおいては、学習障害と手先の不器用さといった運動の問題を直接的に結びつけるなど、学習障害児の中には、手先の不器用さが多いと考えられている
海外の研究結果より
- 粗大運動(全身運動)に関しては、学習障害の診断基準を充たす子どもの中には、能力の低い子、まったく問題のない子もいる
- 学習障害児の大半には、運動の問題があるが、そうでない子もいる
③ADHD児と不器用について
海外の研究結果より
- ADHD児の中の多くに、不器用さなど運動能力の低下が見られるという結果が認められている
その他
- ADHDと発達性協調運動障害の2つの特徴がある場合、DAMP(Deficit of Attention, Motor control and Perception)症候群と言われることもある
- しかし、中には、子どもだけでなく大人も、運動が得意であったり、一流の運動選手やミュージシャンなどもいる
④知的障害児と不器用について
国内外の研究結果より
- 知的障害児の運動能力は同一年齢の定型発達児より低く、特に、平衡機能や手指の運動のような微細な制御が必要とされる領域の遅れが顕著である
以上、簡単にではありますが、様々な発達障害と不器用の関連について見てきました。
概観すると、発達障害児の多くが不器用さといった運動の問題も併せ持っているケースが多いことが推定されます。
DSM-5 より(2013)より、こうした発達障害と発達性協調運動障害といった運動の問題の発達障害の併存診断が認められるようになりました。
ですが、国内においてはまだまだ不器用さといった運動面の問題への理解や支援、そして、配慮が乏しいのが現状です。また、大人に関しては、ほとんど現状把握すらされていないのが現状かと思います。
今後は、様々な発達障害において、運動面への理解や支援の高まりを期待したいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
宮原資英(2013)特集,不器用さのある発達障害の子どもたちへの支援.総説,不器用さのある発達障害の子どもたちへの支援.アスペハート,33,12‐18.
辻井正次・宮原資英(監修)(2019)発達性協調運動障害(DCD)-不器用さのある子どもの理解と支援-.金子書房.