療育現場で子どもたちと関わっていると、子どもたちの問題行動(問題とされている)に頭を悩ませる場合が多くあります。
例えば、自分の思い通りにいかないと癇癪を起こしたり、他児を叩くなど、私が担当してきた子どもたちによく見られる行動でした。
こうした行動には様々な背景がありますので、理解や対応もケースによって変わってくるかと思います。
そうした中で、危険行為や怪我に繋がる場合など環境調整だけでは対応が難しく、大人からの注意が必要なこともよくあります。
今回は、発達障害児が大人の注意を理解していく過程について療育現場から私の実体験をもとにお伝えしていこうと思います。
今回はA君とB君の2事例から考えていきたいと思います。
①A君の事例(当時:5~6歳、自閉症)
A君は私が療育現場で担当したお子さんで、最初の大人しく自分の興味関心が強いといった印象があり、自分の思い通りにいかないと癇癪を起こしたり、他児を叩くなどの行動が目立ちました。
私はA君の興味関心に寄り添いながら、A君にとって安心できる存在になることを目指しました。
次第に信頼関係ができてくると、A君は私が注意すると最初は私の少し怒った声を聞くなり、何故か笑みを浮かべて逃げる場面が出てきました。
こうした特定の人の声に耳を傾け、行動を変えるということは、発達につまずきのある子どもでは難しいと感じます。
ですので、私は自分の声が何らかの形でA君に届き始めていると感じ、A君の対人意識の面での成長を感じていました。
さらに、A君は私の声だけではなく怒った表情を見るようにもなりました。
正直、他児を叩くなど怪我に繋がる行為への注意が減ってきたのは、私の怒った表情を理解できるようになった頃からだいぶ減ったように感じます。
②B君の事例(当時:5~6歳、知的障害)
B君も私が療育現場で担当したお子さんで、全体的な発達がゆっくりという印象がありました。B君は視力が悪く、遠くの情報を取り入れることが難しく、いつも遠くの情報を取り入れるときには、その対象に顔を非常に近づける必要がありました。
私はB君の全体的な発達を遊びや食事など様々な視点から支援をしていきながら、途中でメガネの着用を促しました(担当医からの指示が前提にありました)。
B君は他児が大声を上げると不安になるのか癇癪を起こすなど、一度、癇癪を起こすと非常に長い時間混乱が続きました。
その中で、物を投げるなど危険行為もあったため、私は、その伝え方では危ないということを教えるために、環境調整だけではなく注意することも並行して行いました。
当時は、私や他の職員が注意するとさらに癇癪がエスカレートしたため、大人たちが非常にB君の対応に神経質になっていました。
そんな試行錯誤の中である変化がB君に起こりました。
B君の癇癪が止まらず、物をたくさん投げるなどの行為が見られたため、私はB君を抱きかかえて、狭いおもちゃの倉庫に入りました。その中で、私が一言怒った声でB君を注意しました。すると、B君は急に静かになり私の表情を恐る恐る見ました。
その瞬間に私の声と表情がB君に伝わったと実感しました。
その後、なぜ伝わったのか、その要因を考えるとあることが思い浮かびました。これまで、注意しても広いクラスの中だったので、私の声に注意を集中して向けることが難しかった、もう一つは、抱っこの状態で非常にB君と私の顔が近距離だったため、視力の悪いB君でも表情が理解できたことが考えられます。
その後は、癇癪が起こり危険行為が生じた際には、抱っこをして狭い室内に移動し、注意をすることを継続しました。注意と言っても、一言、二言、声をかける程度です。
これを繰り返すことで、次第に、広い教室でも私の声や表情に注意を向けることができるようになり、癇癪を起こしても物を投げることは減ったり、自分でイライラを抑えようとする様子も出てきました。もちろんメガネの着用が進んだこともこうした変化に寄与していると思います。
その後は、大人の注意が理解できるようになり、行動を変えるなど見違える変化を遂げました!
以上、A君とB君の事例から大人の注意を理解していく過程について私の実体験をお話してきました。
上記の2事例から学べることとして、発達につまずきのある子どもの発達はゆっくりではありますが、対人意識が高まり、人の声や表情の理解が進むことで、大人の注意が理解できるようになる可能性があるということです。
こうした子どもたちの育ちを様々な角度から長期にわたって理解し支えていくことが大切だと思います。
今後も発達支援の現場で、発達につまずきのある人たちのことをより深く理解していけるように、経験からどんな意味があったのかを、私なりに考察していきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。