発達障害への社会的な認知・理解が高まってきています。
発達障害というと、ASDやADHD、学習障害などを思い浮かべる方が多いと思います。
そうした中で、昔ながらの重度の自閉症や知的障害、そして、愛着障害なども発達障害に位置づいて(隣接している)いるため、これらを分類していくことで発達障害への更なる理解と支援に繋がると考えます。
それでは、上記の発達障害の分類の指標などはあるのでしょうか?
そこで、今回は医師である杉山登志郎さんの著書を参照しながら、発達障害の3つのグループ分けについて、臨床発達心理士である著者の療育経験も交えながら、考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「杉山登志郎・白柳直子(2021)教えて 発達障害・発達凸凹のこと.IAP出版.」です。
発達障害の3つのグループについて【療育経験を通して考える】
それでは、以下、著書を引用していきます。
・<発達障害>と診断される子どもたちには、三種類ある。
<病気>として対応すべき【器質系発達障害】
<正常からの偏り>として対応すべき【発達凸凹】
逆境体験が背景にある【トラウマ系発達障害】
以上、3グループに著書では分類しています。
さらに、著書を引用しながらそれぞれ補足していきます。
・器質系発達障害に当てはまるのは、昔から言われるタイプの自閉症と、IO五〇以下の知的障害でどちらも特別な配慮が必要。ただし該当する人は少ない。
・<発達障害>と診断される人の大半は、発達凸凹かトラウマ系発達障害。
以上を踏まえて以下に3つの発達障害の分類を記載します。
- 器質系発達障害→昔ながらの重度の自閉症やIQ50以下の知的障害
- 発達凸凹→ASDやADHD、LDなどが該当。知的にはグレーゾーンから正常知能以上。
- トラウマ系発達障害→虐待、いじめ、など環境からマイナスな影響を強く受けており、症状として不適応状態が見られる。発達障害と似た状態像を示す場合もある。また、一次要因として発達凸凹があり、それに二次要因として虐待などの環境の影響を受けている場合もある。
著書での3つの分類を再度整理してみました。
著書ではこられ三つのグループの対応して、1.器質系発達障害→特別な対応が必要、2.発達凸凹→本人にあった環境を整えること、3.トラウマ系発達障害→トラウマ治療と家族療法が必要、としています。
著者は、未就学児の療育で1の子どもたちを、そして、現在の放課後等デイサービスでの療育で2の子どもたちを、そして、過去の児童相談所で3の子どもたちを、それぞれ見る機会が多くありました。
それでは、次に著者の療育体験を踏まえて、1~3の子どもたちの状態像について簡単にお伝えしていきます。
1.器質系発達障害について
多くは、特別支援学校の所属している子どもたちかと思います。
著者は、小学校に上がる前の未就学児への療育を以前していました。
この子どもたちの状態像の多くは、発語がないか、あっても単語レベルといった状態です。また、自閉症児においては、こだわり行動が強く見られます。
さらに、知的障害と自閉症は症状が重度になると両者の差が少なくなると言われていますが、著者も重度の知的障害と重度の自閉症との関わりで、コミュニケーションの取りにくさやこだわりの強さなど共通する部分も多くあったと感じます。
このタイプの子どもたちは、非常に個別の理解や対応が必要だと感じます。
彼らとの関わりを通して、言葉とは何か?関係性を結ぶとは何か?など、人間が発達するとはどのような事かを非常に考えさせられました。
2.発達凸凹について
著者が現在の放課後等デイサービスで関わっている児童の多くが発達凸凹に該当するかと思います。
知的レベルもIQ50以上で、中には知能が非常に高いと思われる子もいます。
こうした子どもたちの理解は、ASDやADHD、LDなどの発達特性の理解が非常に重要です。
また、こうした発達特性は重複するケースもあるため、どのような特性が強く出ているのかを理解することもまた重要です。
まさに、発達凸凹というだけあり、できる部分とそうでない部分、周囲とかみ合う所とそうでない所など、凸凹が見られるのも特徴です。
こうした子どもたちには、特性を踏まえての環境調整がとても大切になります。
そして、その中で、いかに自己肯定感を育んでいくこともまた重要だと実感しています。
良い居場所があり、その中で安心した過ごしができる、信頼できる大人や友だちがいるということが放課後等デイサービスでの療育には大切だと感じています。
3.トラウマ系発達障害
著書が昔児童相談所に勤務していた頃に、このタイプの子どもが多くいたように思います。
主に虐待ケースが多かったため、何らかのフラッシュバックや解離性の症状なども見られました。
最近では愛着障害の認知が進んだため、より愛着障害への理解が増していると感じる一方で、対応は非常に困難であると感じます。
時々、療育現場にもこうしたタイプの子どもが症状の程度の差はあれいるように思います。
療育スタッフが対応に苦しむ最大のタイプがトラウマ系発達障害ではないかとさえ思えるほど、彼らへの支援はうまく進捗しないように思えます。
その意味では、医療などと連携を取り、専門的な治療や家族療法などの支援も課題であると感じます。
以上、発達障害の3つのグループについて【療育経験を通して考える】について見てきました。
発達障害をいくつかの指標に基づいて分類することにより、子どもたちの状態像の理解や対応方法へのより効率的な情報を収集することが可能になると考えます。
もちろん、その中で、子どもたち一人ひとりのニーズは異なりますので、あくまでも、今回は発達障害といった広義な概念を少しでも整理できればといった思いで書きました。
著者は、現代において、発達障害といった言葉が独り歩きするくらい、社会の中に広がっていると実感しています。
その中には、高機能自閉症をはじめ、ADHDやグレーゾーン、そして、二次障害としての愛着障害などの社会的認知が進んだことが要因としてあると思っています。
その中で、そもそも知的障害はどこにいったのか?昔ながらの自閉症はどこに位置づくのか?などの疑問もありました。
発達障害といった広義の概念は時代とともにその内容は変化していきます。
それは、研究の進歩であったり、当事者の困り感の発信などにより、少しずつ改良されていくのだと思います。
そんな中で、私たちが目指すべきは、多様性を認め合う共生社会の実現です。
発達障害といった少し周囲とは異なる人たちへの理解が進むことは、人間が持つ多様性の理解に繋がり、多様な人たちが共生する社会への実現に近づく契機になると思います。
私自身、まだまだ未熟ですが、今後も人間の多様な理解と支援を目指して、現場と知識の双方を大切にしていきながら、その中で学んだことを情報発信していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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杉山登志郎・白柳直子(2021)教えて 発達障害・発達凸凹のこと.IAP出版.