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発達障害の進路選択について-自閉症を例に考える-

投稿日:2022年4月22日 更新日:

 

発達障害の進路選択について保護者の方は特に気になることかと思います。

発達障害の方の中には、知的レベルが高く、学校の勉強なども非常にできるお子さんもいます。

発達障害にも、自閉症やADHD、学習障害など様々なタイプがあり、これらは重複しているケースも多くあります。

そのため、発達水準や知的水準を見ても一人ひとり状態像が多様です。

 

関連記事:「発達障害の重複(併存)について-療育経験から理解と支援について考える-

 

そこで、今回はこうした発達障害の中で、自閉症に焦点を当て、自閉症の進路選択について大切とすべき点や、著者の体験談などをお伝えします。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

今回、参照する資料は、「本田秀夫(2017)自閉スペクトラム症の理解と支援.星和書店.」です。

 

 

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自閉症の進路選択について大切にすべき点

以下に著書を引用します。

これは私見ですが、その子の知的水準から期待される水準よりも少し低いレベルの適応水準になる子のほうが多いと思います。(略)彼らの進路選択を考えるときには、知的水準に加えて、彼らのコミュニケーションや対人関係の異常に基づいて、もうワンランク下げていかないと、うまくいかないかもしれません。さらに、二次障害がある場合には、さらにもうワンランク下げなければいけないことがあるかもしれません。

 

著書では、自閉症の場合には、知的水準より少し低めの進路選択をした方が良く、その理由として、対人関係やコミュニケーションに難しさがあるためと考えています。

著者もこの考えには同意です。

その理由として、学校は必ずしも勉強だけをする場ではなく、友人関係や部活動などもあるため、対人コミュニケーションにも多くの労力を費やすからです。

そのため、対人コミュニケーションなどに苦手さのある自閉症の方は、そちらに多くのエネルギーがとられ、学校レベルが知的水準の同程度のレベルでは、本人が一杯一杯になってしまうことが想定されます。

少し余裕を持って学校生活を送れるように、進路選択では少しレベルを下げた学校選びが重要だと思います。

 

 


それでは、次に自閉症の進路選択について著者の体験談を述べていきたいと思います。

 

著者の体験談

現在、成人の自閉症のAさんを例に取り上げます。

Aさんは、現在、30代中盤です。そのため、Aさんが義務教育を受けていた時代には、特別支援教育はなく、発達障害への認識も乏しい時代でした。

Aさんは、普通高校に進路を選びました。Aさんの当時の学力でちょうど入学できるというレベルの学校でした。

保護者からすれば、学力レベルにあった学校を選択するということが普通かと思います。

しかし、Aさんは、その後、部活動にも色々と挑戦するもうまくいかず、友だちという友だちもほとんどできず、非常に辛い学校生活になりました。

さらに、学校の勉強も学年が増すごとについていけず、というよりも、やる気力がなくなってしまったという感じでした。

Aさんの事例を振り返って見ても、学校生活には学力など知的レベル以外に大切な能力があります。それは、社会スキルや生活スキルであったりします。

 

関連記事:「療育で大切なこと-学力よりも生活スキル-

 

そのため、進路選択の際には、こうした総合能力なども判断した上で、学校を選ぶ必要があるかと思います。

また、校風など学校独特の教育観などもあるため、学校見学なども重要かと思います。

Aさんの学校は、それほど縛りがきつくなく、ゆったりとしたところもあったおかげで、なんとかAさんは卒業することができました。

 

発達障害の進路選択は単純に学力など知的レベル以外の判断基準も重要になります。

私自身、今関わっている子どもたちが少しでも楽しい学校生活を送っていけるように、今できることを、療育現場を通して実践していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

本田秀夫(2017)自閉スペクトラム症の理解と支援.星和書店.

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