発達障害の治療には様々なものがあります。
今回は、著者の療育経験も交えながら、生物学的・心理学的・社会的の3視点から発達障害の治療についてお伝えします。
今回参照する資料は、「本田秀夫(2013)子どもから大人への発達精神医学:自閉症スペクトラム・ADHD・知的障害の基礎と実践.金剛出版.」です。
著書の中では、発達障害への治療として、問題を見極めることの重要性を指摘しています。
その中で(以下、書著引用)・・・
問題の性質の重点が生物学的、心理学的、社会的のいずれにあるのかは、治療方針に直結する重要な問題である。
といった、生物学的、心理学的、社会的の3視点から問題を見極めることの重要性を指摘しています。
それでは、以下、それぞれについて著者の療育経験を踏まえてお伝えします。
生物学的な視点から発達障害の治療を考える
生物学的な治療というと、主なものとして薬物療法があります。
著者が勤める療育現場にも、服薬をしているお子さんが多くおります。
その際に大切にしていることは、服薬後の生活への影響です。
生活の様々な場面で、例えば、食欲の変化、活動量の変化、睡眠の変化、学習への集中の変化、多動・衝動性の変化など、観察すべきポイント(副作用の影響)は多くあります。
また、経過観察も重要で、服薬後すぐに効果はあったが、ある程度の期間が経つと、効果が減少した(ように見える)など時間を追ってみることも大切です。
薬物療法は、専門家の医師との相談により、服薬のタイミングや量などの調整が入ります。
著者が見ている子のどの中にも、服薬後、生活が安定した子も多くいるため、薬物療法の効果はあると実感しています。
心理学的な視点から発達障害の治療を考える
まさに、著者が専門とする領域ですが、心理学的というと非常に漠然としたイメージがるかと思います。
それもそのはずで、心理学が扱う領域は非常に広いからです。
著者が学生時代に心理学を専攻して感じたのは、その領域の広さでした。
感覚や知覚や認知なども取り扱っているのだとある種の驚きがありました。
その中で著者が大切にしている視点は、人への信頼(愛着関係など)、活動への動機づけ(やる気、モチベーション)、人とうまくやっていく力(社会性・コミュニケーション能力)、感情のコントロール(感情調整)、物事を知る力・理解する力(認知能力)など上げればきりがないほど様々なものがあります。
そのため、心理学的な視点からの治療には様々なものがあります。また、治療というよりかは、支援といった言葉を使った方がしっくりくるかもしれません。
少し例を挙げると、人への不信感が強くなってる子への支援として、愛着からのアプローチがとても役に立ちます。
愛着からのアプローチで大切なのは、まずは一人の大人と信頼(安心感・安全感など)を構築していくことから始まります。
その他、なかなか活動に興味が持てない子に対して、活動への動機づけとして、本人の興味関心を活用していくことが重要です。
まずは、本人にとって何が好きかを知ることから始まり、興味関心を通して活動を他者と共有・共感していく過程が、活動を動機づける上でとても大切になります。
このように、心理学的な視点からのアプローチは非常に様々なものがあり、その効果の評価の仕方も多様だと思います。
社会的な視点から発達障害への治療を考える
社会的な視点とは、本人を取り巻くすべての環境を指します。
そのため、本人が過ごす・活動する環境から、家族、学校、地域、時代など様々なスケールがあります。
著者が勤める現場でも、生活のアセスメントはとても大切にしています。
社会的な視点からのアプローチの例として以下のようなものがあります。
学校で友人がいないお子さんへのアプローチとして、学校外で友だち関係を築ける場を提供するというものです。
著者が勤める療育現場にも、友だち関係を欲しているお子さんがおります。
そうしたお子さんに対して、放課後等デイサービスのように関われる場や活動を提供することはとても重要だと感じています。
こうした社会的な視点からの課題解決もとても重要な視点になります。
以上、発達障害の治療について、3つの視点から見てきました。
振り返ってみて大切だと思うことは、改めて問題を特定すること、そして、その問題の解決には様々な視点からのアプローチがあるということだと思います。
今後も現場を通して、問題を特定する力を身につけ、問題を解決するための様々なアプローチを実践していきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
関連記事:「ASDの治療について-有効な治療は何か?-」
本田秀夫(2013)子どもから大人への発達精神医学:自閉症スペクトラム・ADHD・知的障害の基礎と実践.金剛出版.