療育現場で、発達障害のある子どもたちと関わっていると、時に非常に難しいケースが混在していることがあります。
その中には、二次障害が発症しているケースも少なからずあるように思います。
それでは、発達障害の二次障害とは一体何でしょうか?
そこで、今回は発達障害の二次障害について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら考えを深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「齊藤万比古(編著)(2009)発達障害が引き起こす二次障害へのケアとサポート.学研.」です。
発達障害の二次障害とは何か?
以下、著書を引用しながら見ていきます。
二次障害とは、(中略)時間経過の途上で出会った外傷的な経験や対人交流から与えられた数ある痕跡のうち、精神障害の診断にあてはまるもののことと理解してよいのではないだろうか。
いうまでもなく、問題の多い環境や外傷的なでき事がいつも二次障害を引き起こすわけではない。むしろ、そのような環境やでき事が有効なストレス対処法や成熟度の高い人格傾向を獲得させてくれる契機になることも少なくないということを忘れてはならない。
発達障害の二次障害というと、一次要因として、ASDやADHDなどの発達特性があり、その上にさらに、二次障害といった精神障害が重なった(重複)した状態ということになります。
著書の内容から、二次障害の発症要因にも様々ありますが、「心に傷を負う」ということになります。
一方で、こうした「心に傷を負う」ような外傷体験はすべての子どもに二次障害を引き起こすものではなく、中には、心の成熟においての契機になることもあるということです。
しかし、当然ながら、外傷となる経験を負うようなことはできるだけ避けた方が好ましい成長に繋がります。
二次障害には大きく分けると、外在化と内在化があります。
外在化の例として、反抗挑戦症や素行症など反社会的な行動に繋がっていく障害であり、内在化の例として、不安障害、気分障害、強迫性障害、うつや引きこもりなどがあります。
それでは次に、著者の療育経験から発達障害の二次障害について見ていきます。
著者の経験談
著者はこれまでの療育経験から発達障害の二次障害が想定される事例を少なからず見てきました。
二次障害の内容としては、不安障害や反抗挑戦症などです。
二次障害の背景にも様々な要因が想定されます。
例えば、親子関係(愛着関係)の問題、学校への適応の問題などです。
こうした二次障害が見られる、あるいはその傾向が見られる子どもたちに対して、ASDやADHDなどの発達特性に応じた理解と対応だけでは限界があると感じています。
それは、特性に応じた対応を継続していっても、なかなか支援の効果が期待できないからです。
また、関わるスタッフがその子の状態理解を共有していくにあたり、一次の特性理解だけでは腑に落ちないことが多くあるように思います。
一方で、二次障害が生じていない子どもにおいては、理解と支援が比較的スムーズに進むように思います。
このような子どもたちにおいては、未来を見据えて今できる関わりに対応をフォーカスすることで少しずつ支援が進捗していくという実感があります。
二次障害が生じているケースには、二次障害への理解と対応を試みていかないと、支援がうまく進まないように思います。
著者が見てきた二次障害が生じている子どもたちには、一次障害の発達特性の理解と対応に加え、二次障害の理解と対応も含めた全体像への支援を行っていくことで少しずつですが、支援がうまく進み始めてきたというケースもあります。
何よりも関わり手が、自分たちが行っている理解と支援に納得感が持てるかどうかがとても大切だと思います。
以上、発達障害の二次障害について【療育経験を通して考える】について見てきました。
発達障害の二次障害は症状の程度に個人差はあれ、非常に療育現場で対応していて難しいケースが多く混在しているように思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も発達障害の二次障害への理解を深めていけるように、様々な二次障害への理解と発症のプロセスや対応などについても学びを深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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齊藤万比古(編著)(2009)発達障害が引き起こす二次障害へのケアとサポート.学研.