発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

発達障害 知的障害

【発達障害と知的障害の理解と対応について】療育経験を通して考える

投稿日:2022年4月23日 更新日:

著者が勤める療育現場には、発達障害知的障害のある子どもたちがいます。

自閉症(自閉症スペクトラム障害:ASD)やADHD(注意欠如多動症)などの発達特性(狭義の発達障害)や知的障害(DSM-5では発達障害の一つとされている)などは、どれか一つの症状だけが顕著に目立っている子どもは少ない印象があります。

例えば、ASD単独、ASD+ADHD、ASD+知的障害など様々なタイプが見られます。

その中で、著者が理解と関わりで難しいのは、発達障害と知的障害をどのように理解し関わり方を工夫していけば良いか?ということです。

 

それでは、発達障害と知的障害への理解と対応について、どのような視点が重要だと考えられているのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達障害と知的障害の理解と対応について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は、「本田秀夫(2021)子どもの発達障害:子育てで大切なこと、やってはいけないこと.SB新書.」です。

 

 

スポンサーリンク

 

 

発達障害と知的障害の理解と対応について

以下に著書の内容を引用します。

発達障害と知的障害は重複することがありますが、私はこの2つもわけて考えたほうがよいと思っています。発達障害は発達の特性があって生活上の支障がある状態です。知的障害は、知的能力が平均に比べて低く、生活上の支障につながっている状態です。(略)発達障害と知的障害を重複している子には、発達の特性への対応と、知的能力への対応をそれぞれ検討します。(略)発達障害と知的障害を分けてそれぞれへの対応を考えたほうが検討しやすいというのが、私の考えです。

 

著者は現場で発達障害と知的障害の両方を持つお子さんと関わる機会がありますが、この内容を見て学ぶところが大いにありました。

大切なポイントは、発達障害と知的障害とを分けて考えることで一人ひとりにあった理解と対応ができることだと思います。

両者の概念は重複しているとわかりにくく、そして、理解や対応も特徴のある部分に偏ってしまうこともあります。

重要なのは、発達障害と知的障害それぞれの理解です。

発達障害であれば特性上、対応面や行動面などある部分に特化して苦手さをもっているため、特性への理解と対応が重要です。

知的障害であれば、全般的な発達の遅れから、生活面や学習面、そして、社会的な側面などに影響しますので、様々な面での理解と支援が必要になってきます。

 

 


それでは、次に、発達障害と知的障害に関する著者の体験談についてお伝えします。

 

著者の体験談

成人男性のAさんは、高校入学頃に広汎性発達障害(現在は自閉症スペクトラム障害)と診断を受けました。

当時のAさんは、こうした診断名もあってからか、自閉症の苦手さがある対人面やコミュニケーションなどに特化した理解や支援を多く受けていました。

その後、Aさんはこうした自閉症といった発達特性への理解が進んだことで、自分への理解と周囲からの理解を受けやすい状況となりました。

一方で、就労などで躓きが見られことをきっかけに、自閉症といった発達特性のみの理解では難しい面がでてきました。

もともと、Aさんは、幼い頃から、生活面や学習面、社会的な側面など全般的な発達が周囲よりもゆっくり育っていました。また、知能指数も平均よりも下回る水準でした。

こうした点から、知的障害といった理解も必要であるといった視点が遅れながらも組み込まれてきました。

こうした発達障害の理解に加え、知的障害への理解が深まることで、Aさんは社会の中での困難さの要因をより深く分析できるようになりました。

現在のAさんは、こうした理解のおかげで、以前より、うまくいかなさに対して悲観的になる様子は少なくなりました。また、周囲の協力や理解も広がってきました。

 

現在は当時のAさんが子どもの頃と比べて、格段に発達障害への理解が広がっています。

だからこそ、発達障害への重複への理解や知的障害への理解も併せて考えていくことが今後さらに必要になってくるかと思います。

私自身、日々の療育現場を通して、多様な発達理解と発達支援を目指していけるように学びを深めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 


発達障害に関するお勧め書籍紹介

関連記事:「発達障害に関するおすすめ本【初級~中級編】

 


知的障害に関するお勧め書籍紹介

関連記事:「知的障害に関するおすすめ本【初級~中級編】

 

 

本田秀夫(2021)子どもの発達障害:子育てで大切なこと、やってはいけないこと.SB新書.

スポンサーリンク

-発達障害, 知的障害

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

【発達障害の発症の頻度と重複(併存)について】療育経験を通して考える

発達障害(神経発達障害)には、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)、発達性協調運動障害(DCD)、知的障害(ID)など様々な症状が含まれています。 発達障 …

【発達に躓きのある子どもとは何か?】発達障害と定型発達の違いを通して考える

〝発達に躓きがある″、〝発達に遅れがある″子どもたちがいます。 こうした子どもたちに抱く印象として、何となく〝この子は普通の発達とは違うのではないか?″〝普通の発達より遅れているのではないか?″といっ …

発達障害の強みと弱みについて考える

発達障害児・者の中には、特異的な才能を持った人たちがいます。 例えば、見たものを映像のように記憶することができる人(サヴァン症候群の特徴でもあります)、一つの作業に非常に高い集中力を発揮する人、新しい …

発達障害の診断名はなぜ変わることがあるのか

著者は現在に至るまで発達障害関連の仕事を多くしてきました。 その中で、発達障害の診断名が変わる人がいるということを時々耳にします。 しかし、発達障害とは、先天性の脳の機能障害であるため、生育歴を含め、 …

【友達とのトラブルが多い発達障害児への対応】応用行動分析学の視点を通して考える

発達障害児は、発達特性や未学習・誤学習などが影響して正しい行動を学んでいない・学ぶ機会がない場合あります。 正しい行動を学習していくためには、困り感や問題行動などの背景要因を分析し、どのような対応をし …