著者が勤める療育現場には、様々な発達特性や知的障害のある子どもたちがおります。
ASDやADHDなどの発達特性(狭義の発達障害)や知的障害(DSM-5では発達障害の一つとされている)などは、どれか一つだけが顕著に目立っているお子さんはむしろ少ない印象です。
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例えば、ASD単独、ASD+ADHD、ASD+知的障害など様々なタイプがあります。
その中で、著者が理解と関わりで難しいのは、発達特性と知的障害をどのように理解し関わり方を工夫していけば良いか?ということです。
そこで、今回は、発達障害と知的障害の理解と対応について、著者の経験なども踏まえてお伝えします。
この場合の発達障害とは狭義の発達障害を指します(ASD、ASHD、LDなど)。
今回参照する資料は、「本田秀夫(2021)子どもの発達障害:子育てで大切なこと、やってはいけないこと.SB新書.」です。
発達障害と知的障害の理解と対応について
以下に著書の内容を引用します。
発達障害と知的障害は重複することがありますが、私はこの2つもわけて考えたほうがよいと思っています。発達障害は発達の特性があって生活上の支障がある状態です。知的障害は、知的能力が平均に比べて低く、生活上の支障につながっている状態です。(略)発達障害と知的障害を重複している子には、発達の特性への対応と、知的能力への対応をそれぞれ検討します。(略)発達障害と知的障害を分けてそれぞれへの対応を考えたほうが検討しやすいというのが、私の考えです。
著者は現場で発達障害と知的障害の両方を持つお子さんと関わる機会がありますが、この内容を見て学ぶところが大いにありました。
大切なポイントは、発達障害と知的障害とを分けて考えることで一人ひとりにあった理解と対応ができることだと思います。
両者の概念は重複しているとわかりにくく、そして、理解や対応も特徴のある部分に偏ってしまうこともあります。
重要なのは、発達障害と知的障害それぞれの理解です。
発達障害であれば特性上、対応面や行動面などある部分に特化して苦手さをもっているため、特性への理解と対応が重要です。知的障害であれば、全般的な発達の遅れから、生活面や学習面、そして、社会的な側面などに影響しますので、様々な面での理解と支援が必要になってきます。
それでは、次に、発達障害と知的障害に関する著者の体験談についてお伝えします。
著者の体験談
成人男性のAさんは、高校入学頃に広汎性発達障害(現在は自閉症スペクトラム障害)と診断を受けました。
当時のAさんは、こうした診断名もあってからか、自閉症の苦手さがある対人面やコミュニケーションなどに特化した理解や支援を多く受けていました。
その後、Aさんはこうした自閉症といった発達特性への理解が進んだことで、自分への理解と周囲からの理解を受けやすい状況となりました。
しかし、就労などで躓きが見られことをきっかけに、発達特性のみの理解では難しい面がでてきました。
もともと、Aさんは、幼い頃から、生活面や学習面、社会的な側面など全般的な発達が周囲よりもゆっくり育っていました。また、知能指数も平均よりも下回る水準でした。
こうした点から、知的障害といった理解も必要であるといった視点が遅れながらも組み込まれてきました。
こうした発達障害の理解に加え、知的障害への理解が深まることで、Aさんは社会の中での困難さの要因をより深く分析できるようになりました。
現在のAさんは、こうした理解のおかげで、以前より、うまくいかなさに対して悲観的になる様子は少なくなりました。また、周囲の協力や理解も広がってきました。
現在は当時のAさんが子どもの頃と比べて、格段に発達障害への理解が広がっています。
だからこそ、発達障害への重複への理解や知的障害への理解も併せて考えていくことが今後さらに必要になってくるかと思います。
私自身、日々の療育現場を通して、多様な発達理解と発達支援を目指していけるように学びを深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
本田秀夫(2021)子どもの発達障害:子育てで大切なこと、やってはいけないこと.SB新書.