私はこれまで療育施設や放課後等デイサービスなどで発達につまずきのある子どもたちを対象に療育をしてきました。
そうした中で、子どもたちは「遊び」を通して、新しいことを学んだり、自ら意欲的に取り組もうとするなど主体性を発揮する場面が見られます。
その中での、難しさとして、「遊び」の中で個々に応じて対応や配慮などを考えていく必要があるということです。私も「遊び」のアイディアを広げるために様々な保育本や障害関係の本からヒントを得てきましたが、最終的には、支援者がその子に合った遊びを創意工夫するということが必要になると感じています。
今回は、「制作遊び」を例に取り、遊びを考え進める上での難しさや実際の取り組みなどについてお伝えしていこうと思います。
「制作遊び」は、多くの方がこれまでやってきた遊びかと思います。例えば、楽器づくりなどを考えた場合には、紙コップの中に鈴を入れて出口をふさぐと一つの楽器になります。紙コップに絵を描いたり、シールを貼ったりすることで、オリジナルな楽器が完成します。
私が療育施設にいた時に(未就学児が対象)、担当したクラスでも「制作遊び」は行いました。「楽器づくり」「食べ物づくり」など、大人が色々と子どもたちが好きそうなものを話し合い決めてきました。
その中での難しさとして、イメージする力(完成に向けて)、道具を使う力(目と手の協応動作)など、様々な能力を使うということがあります。こうした能力が個々によって非常に異なってくるため、事前にあるいはやりながらアセスメントを取っていく必要があります。
例えば、イメージする力に関しては、見本があればできるのか、見本までの工程を細分化して見せるとできるのか、イメージすることは難しいので大人と一緒にやるのか、といった視点です。また、道具を使う力に関しては、書くこと、切ることなど、一つとっても様々な発達段階があります。
こうしてどこまでできて、どこからができないという視点がとても大切です。その両者の幅をできるだけ縮め、そこを大人が手伝うことで子どもたちは何かができたときに達成感を得ることができると感じます。
私はこの視点を大切にしてきましたし、今の現場(放課後等デイサービス)でも子どもの発達を考える際に非常に役に立つ視点ですが、思いのほか難易度が高いです。こうした視点は子どもたちとの関わりを繰り返し観察しないと理解が難しい内容かと思います。
以上の視点から、私は、「制作遊び」をする際に、次のことに注意して取り組んできました。
①見本の提示のわかりやすさを意識する。
まずは、完成品を見せることが大切です。完成までのプロセスも提示できるといいのですが、クラス全体でやると難しいので、個別対応の場合にはプロセスの提示、集団での対応の場合には子どもたちの間に大人が入りサポートするという体制をとっていました。
②道具の使用の発達段階を意識する。
これはどこまで道具の操作ができるのかということです。道具の操作が難しい時など、手で色をつける(スタンプなどで)などできるだけ難易度を下げるようにしています。
また、描くという動作一つとっても、ペンやクレヨンなどの握り方、空いている手の使い方(紙をしっかり押さえているかなど)、視線の向け方など、様々な発達段階がありますので、個々の能力とその能力に合った道具の使用、そして、大人のサポートが必要になります。
以上、私が「制作遊び」をする際に意識してきた点を見てきました。
最後に少し年齢が進んだ小学生の「制作遊び」の事例とそこから学んだことをお伝えします。
小学生といっても個々に応じて能力や発達段階が異なるため、簡単に比較はできませんが、そうした中で、イメージする力や道具の使用が成長した子どもたちがたくさんいます。
イメージする力に関しは、大人と何度も同じ工作を作ることで、一人でもイメージできるようになり、どのような材料が必要で、どのような工程を経てできるのかを体験を通して学ぶことができた子どもも多くいます。
また、道具の使用に関しても、うまくテープで貼ることがきるようになった、ハサミをうまく使えるようになった子どもなど多くの成長が見られます。
こうして小学生や未就学児を通して言えることは、経験の持つ重要性と、その子に合った「遊び」の提示とサポートだと感じます。
今回は「制作遊び」を取り上げましたが、他の「遊び」や生活場面においても、支援する大人が子どもの能力を把握することはとても大切で、できるところとそうでないところに支援の必要性が出てきます。
今後も子どもたちの成長にプラスの影響を与えていけるように、個々の能力を把握しながら、適切なサポートを考えていきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。