発達支援に携わる人たちにとって様々な専門性が必要になります。
一方で、関わる子どもたちの状態像や関わるフィールドなどによっても求められる専門性に違いが出てきます。
それでは、発達支援の専門性を考える上で、多くの領域において大切となる視点はあるのでしょうか?
今回は、発達支援の専門性について、発達の最近接領域をキーワードに、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら理解を深めていきたいと思います。
今回参照する資料は「本田秀夫(2017)自閉スペクトラム症の理解と支援.星和書店.」です。
発達支援の専門性について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
支援の専門性とは何かということを考えてみます。それは、一人ひとりの子どもにとって、適切な発達の最近接領域を見極めることなのではないかと思います。
著書の内容から、発達支援の専門性として、〝発達の最近接領域″を見極める力であると記載されています。
もちろん、発達支援の専門性には様々なものがあります。
一方で、子どもの支援に携わる人たちにおいて、〝発達の最近接領域″の視点は共通する専門力だと言えます。
発達の最近接領域について
以下、著書を引用しながら見ていきます。
発達の最近接領域というのは、ロシアのヴィゴツキーという学者が提唱した概念です。自分では到達できないけれども、他の人の援助があれば問題解決が比較的簡単にできる領域のことを指します。
一人では少し時間がかかりますが、誰かがちょっとヒントを与えてあげるだけで、自分で合点がいき、学習ができる。そのことによって、教育の効果がある。ですから、その人の発達の最近接領域をうまく見つけて、教える、というのが、教育の極意だというわけです。
著書の内容から、〝発達の最近接領域″とは、一人で解決できる部分と他者の力をかりることで解決できる部分の差(領域)だと言えます。
逆に、子ども一人でできる限界を見極めることでもあります。
一人でできる限界を見極めることで、そこから少しのサポートを加えることで、学習が進むという視点です。
こうした視点を身につけていくためには、発達に関する様々な知識の習得に加え、日頃の子どもの様子をよく観察していきながら、一緒の何かに取り組む経験がとても重要です。
著者のコメント
私自身も発達支援の現場の経験から、できる点とそうでない点の見極め、そして、できないのであればどのようなサポートが必要かということは日々考えるところでもあります。
難しいのは、長期のスパンを考えたときに、今、子たちがどの段階を歩んでいるかという理解です。
これは長年経験を重ねても(まだ短いですが)簡単に答えのでないところでもあります。
その中で、私が大切にしている点をお伝えします。
少し抽象的な表現になりますが、一般的や常識的なというフレームを外し、その子の得意・不得意を理解しようとする姿勢です。
過去の私自身、一般的な発達という認識が強くあり、それは自分が受けた教育や家庭環境など社会環境が大きく影響していると思います。
こうした、既存のフレームに子どもたちを当てはめるとうまくいかないことが、これまでの経験上多くあったように思います。
大切なのは人それぞれ固有の発達があり、それぞれの人生があるとうことです。
そのため、一般的・常識的という枠ではなく、その子が生きやすくなるためにどのようなサポートや社会資源が必要なのかを考えていくことが大切だと思います。
そして、その子の得意・不得意を理解することは非常に大切です。
得意・不得意を理解することは発達特性を理解することにも繋がります。そうした中で、先ほどでてきた発達の最近接領域についての視点が必要です。
つまり、得意な点をさらに伸ばし、苦手なところをどうサポートしていくかという関わりです。
得意なことは興味・関心など好きなことにも繋がります。
また、好きなことは得意なことになる可能性もあります。こうしたポジティブな部分を伸ばすことは将来の楽しさや余暇の充実、社会へ貢献する力などにも影響してくるかと思います。
不得意、苦手なところに関しては、他者がサポートすることでそれに対処するための方法を知ったり、他者に相談できるスキルを身に付けることが重要になります。
発達支援の専門性とは、その子なりの発達を理解しようとする姿勢や、得意・不得意へのサポート、そして、子どもから大人までの多様な関わりを通して得られる事例や知識をヒントに、柔軟な発想や様々な解決策などを活かして関われることだと思います。
今後も経験や学びを重ねる中で、発達支援の専門性への理解や新たな視点などもお伝えできればと考えています。
私自身まだまだ力不足ですが、自分のペースでじっくり力をつけていきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
本田秀夫(2017)自閉スペクトラム症の理解と支援.星和書店.