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併存 発達性協調運動障害

発達性協調運動障害と他の発達障害との関係(併存)について

投稿日:2022年11月4日 更新日:

発達性協調運動障害(DCD)とは、不器用さといった協調運動の問題が社会生活に持続的に支障が出ている状態のことを言います。

発達性協調運動障害は、発達障害の一つに含まれます。

 

関連記事:「不器用さについて考える:発達性協調運動障害とは?

 

発達障害というと、自閉症(ASD)や、注意欠如多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などが有名です。

また、発達障害は単独で見られるというよりも(自閉症のみ)、2つ以上見られるなど併存することも多い(自閉症+ADHDなど)と言われています。

 

それでは、発達性協調運動障害は他の発達障害とどのような関係にあるのでしょうか?

また、併存率などはどの程度なのでしょうか?

 

そこで、今回は、発達性協調運動障害と他の発達障害との関係(併存)について、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら、考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「辻井正次・宮原資英(監修)澤江幸則・増田貴人・七木田敦(編著)(2019)発達性協調運動障害[DCD]不器用さのある子どもの理解と支援.金子書房.」です。

 

 

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発達性協調運動障害と他の発達障害との関係(併存)について

以下、書著を引用します。

DCDは、AD/HDの30-50%、SLDの50%、特異的言語障害の30%に併存する。特に、DCDとAD/HDの併存については、DSMにおいて重複が認められていたこともあり、以前からDAMP症候群(Deficit in Attention, Motor control and Perception)、DCD Plus, Distinct subtype of AD/HDとして報告されている。

 

臨床的には、ASDとDCDが多く存在することはよく知られており、DSM-5において、ようやくASDとDCDの併存が認められた

 

ASDの約3/4に、姿勢制御、筋肉の低緊張、微細運動、協調、過剰な随伴運動など軽微な運動障害(MND)が存在する

 

著書には、発達性協調運動障害(DCD)は、他の発達障害(ADHD、ASD、SLDなど)に高い割合で併存すると記載されています。

中でも、ASDには多くの運動の問題が見られ、DCD‐5以降から、DCDとASDの併存診断が可能となったことから、今後ますますASDにおいても運動の問題への理解と支援が必要になってくるということが示唆されます。

また、ADHDは協調運動に苦手さを持つ人も多いことから、協調運動の苦手さとADHDの特性である不注意・多動性・衝動性との関連性が示唆されています。

SLDにおいても50%の併存率と高い割合で協調の問題が見られており、学習面においても、不器用さの問題は軽視できない状態にあると言えます。

 

 


それでは次に、発達性協調運動障害と他の発達障害の関係(併存)の視点の大切さについて、著者の経験談をお伝えします。

 

著者の経験談

著者は長年、療育現場で多くの子どもたちと関わってきています。また、成人当事者とも一緒に仕事をする機会が多くあります。

こうした経験から言えることは、不器用さといった協調運動の問題は軽視できないということです。

発達障害と言うと、どうしても自閉症だと対人関係やコミュニケーションの困難さに焦点があたります。

一方で、著者の経験からも、自閉症児者の多くは、何らかの不器用さが見られるという実感があります。

もちろん、療育現場に通所してきている子どもたちは、発達特性から生じる困り感により個別の配慮を受けることができます。

個別の配慮を前提とした環境にいると、苦手さやできないことに何らかのサポートがもらえます。

そのため、不器用さといった運動の問題が仮に大きく取り上げられることはないにせよ、自然と困り感には配慮が取られているように思います。

 

一方で、成人当事者など大人の方は、なかなか理解や配慮が受けられないことがあるように思います。

こうした人たちは、職員という立場の方が多いため、仕事上やらなければならないことが多くあります。

それは、例え、不器用さゆえに業務の遂行が非常にゆっくりであったり、うまくできない場合でもやるべきことになります。

一方で、対人関係・コミュニケーションへの苦手さは比較的にスムーズに理解されるように思います。

それは、成人当事者と一緒に働く人たちがある程度の理解と知識があるからだと思います。

また、自閉症への社会的な理解が高まっていることも要因としてあるように思います。

そういった意味で、不器用さといった協調運動の問題への理解も、障害の併存といった観点から理解を深めていくことで(例えば、自閉症+不器用さ)、適切な配慮を受けられやすい環境になっていくのだと思います。

こうした併存の視点があることは、当事者の日常生活の様々な困り感を理解することに繋がり、無理な強制や精神論にならずに、根拠にそった適切な議論に繋がる契機になると思います。

もちろん、共に働く人たちや発達障害児を支える人たちへの負担は増加しますが、本来の共生社会とは、お互いを理解し尊重する社会なのだと思います。

私自身、理想となる共生社会への実現には、まだまだ程遠いと感じておりますが、これまで、発達障害児者の困難さを多く見てきた経験から目指すべき方向は、「共生」であり、「強制」ではないと感じています。

 

 


以上、発達性協調運動と他の発達障害との関係(併存)について見てきました。

様々な発達障害が併存するという理解を通して、困り感の要因について根拠を持って理解していくことがとても大切なのだと思います。

私自身、自分が苦手としていたことを(おそらく特性上)、周囲の大人の精神論・根性論に押しつぶされそうになりながらも、何とか必死にもがいていた過去を思い出すと、そこから得られたものよりも失ったものの方が多かったように思います。

そのため、本来苦手としていることの要因を分析すること、そして、無理なくその人に合った学習方法や配慮をしていくことがとても大切なのだと思います。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も、不器用さといった運動の問題への理解も深めていながら、他の発達障害との関連性についても学びを深めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

辻井正次・宮原資英(監修)澤江幸則・増田貴人・七木田敦(編著)(2019)発達性協調運動障害[DCD]不器用さのある子どもの理解と支援.金子書房.

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