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発達障害の特性を「選好性」という視点から考える

投稿日:2020年5月8日 更新日:

自閉症スペクトラム障害のある人は、苦手なものにはほとんど関心を示さないなど、興味・関心の偏りが強いと言われています。

一方、自分の興味・関心に没頭したり、興味・関心を優先させる傾向があるといった発達特性があります。

ADHDの方であれば、落ち着きがなく、多動傾向の人が多くいます。逆に、不注意優位でおとなしいなどの発達特性の人もいます。

ADHDの多動性は一見落ち着きがないという負の側面もありながらも、見方を変えると行動力のある好奇心旺盛な人と見られるかもしれません。

 

こうした発達障害の特性に関しては、見方を変えるとポジティブな要素も見えてきます。

精神科医の本田秀夫さんはこうした発達障害の特性を「選好性」というキーワードで説明しています。

著者はこの「選好性」が発達障害のある方を理解する上で非常に大切な視点だと思っています。

 

それでは、選好性とは一体どのようなことを指すのでしょうか?

 

今回は、発達障害の特性を「選好性」という視点から考えるについて、臨床発達心理士である著者の意見も交えながら理解を深めていきたいと思います。

 

今回参照する資料は「本田秀夫(2018)発達障害:生きづらさを抱える少数派の「種族」たち.SB新書.」です。

 

 

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発達障害の特性を「選好性」という視点から考える

それでは、以下、「選好性」とは何かについて説明していきながら、発達障害に見られる‟特性”を‟選好性”の視点に置き換えて見ていきます。

 

まず選好性についてです。選好性(preference)とは、「○○よりも○○を優先する」ということを指します。

つまり、発達の特性を「○○が苦手」というネガティブな意味で捉えるのではなく、「○○よりも○○を優先する」という視点で捉えたほうが自然だとする見方のことを言います。

 

「選好性」の偏りの視点で自閉症とADHDの特性を見ていくと次のようになります。

「自閉症の特性ある人は、対人関係よりもこだわりを優先する」

「ADHDの特性がある人は、じっとしていることが苦手だが、それは思い立ったらすぐに行動に移せるという長所でもある」

こうした視点で捉えるほうが、ある意味、発達障害の特性を的確に捉えているのではないかと思います。

 

 

著者のコメント

次に、著者自身の経験談をもとに、なぜ「選好性」という視点が重要なのかをお伝えしていきます。

著者の療育現場には、様々な発達につまずきのある子どもたちがいます。

子どもたちが示す行動は、時には、注意をしたくなるなど気になる行動も多く見られます。

例えば、①帰りの時間になっても遊びをなかなかやめられない、②次から次へとすぐに違うものに興味が移り、落ち着きがなく、よくトラブルを招いてしまう、③自分が言いたいことをすぐに口に出してしまうといった行動です。

このような行動は、大人(発達障害の特性のある)にも強弱はあるも見らる特徴だと思います。

このような行動は世間一般ではあまり好ましくないとされているかと思います。

 

ここで、先の行動を「選好性」という視点から捉えなおすと、次のようになります。

①帰りの時間になっても遊びをなかなかやめられない➢社会のルールや集団行動より、自分の興味・関心のあるものを優先し、何かにハマると周囲の状況を気にすることなく、高い集中力をもって物事に取り組むことができる。

②次から次へとすぐに違うものに興味が移り、落ち着きがない➢周りの状況や人目を気にすること以上に、自分の好奇心を優先し、多くのことに興味を持ち、高い行動力を発揮し開拓していく力がある。

③自分の言いたいことをすぐに口に出してしまう➢場の状況を読んだりすること以上に、自分が言いたいことや考えを主張することを優先し、周囲に流されることが少なく、どこでも自分の感じたことや意見を言うことができる。

 

以上、取り上げたのは一例ですが、かなりポジティブな表現になったかと思います。

著者自身、上記のような行動(選好性に置き換える前の行動)に対してネガティブな印象を持つことも当然あります。

一方で、子どもたちを深く理解し、より良い関係になったと思えるときには、それまでの過程で、何らかの子どもに対する視点や見方の修正が行われていることが多いと感じます。

視点や見方の修正は、著者のこれまでの固有の視点に疑いを持ち、ある意味、先に述べた「選好性(○○よりも○○を優先する)」による特性の理解が少なからず入り込んだ感覚があったように思います。

 

こうしたことに気づいた例として、以下のような経験がありました。

黙々と絵を描くA君や折り紙をするB君が帰り際にもなかなか活動をやめられないが、長いスパンでみると非常に絵がうまくなり、折り紙が得意になるなどです。

他にも、多動で落ち着きのないトラブルメーカーのC君が、気づくと面白い遊びを考えたり、他の子供たちを率いてリーダーシップを発揮していたなどです。

このように発達障害のある人たちを理解し、支援していくためには、「選好性」について理解を深めていくことが大切であり、そして、発達特性に応じた配慮された環境をつくっていくことが重要であると言えます。

私自身まだまだ未熟ではありますが、今後も自分の固有の考えや視点に常に疑問を持ちながら、相手を理解するための様々な視点について学びを深めていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

本田秀夫(2018)発達障害:生きづらさを抱える少数派の「種族」たち.SB新書.

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