療育現場には様々なお子さんたちがいます。
それは、ASDやADHDなど発達に凸凹がある人、知的障害のように全体的な発達がゆっくりである人など非常に多様です。
こうした発達に躓きのあるお子さんたちを理解する視点として「発達の機能間連関」の視点があります。
今回は、発達の機能間連関について説明していきながら、著者がこの視点を療育現場で取り入れたことで役だったことについてお伝えします。
今回、参照する資料は、「麻生武・浜田寿美男(編)(2005)よくわかる臨床発達心理学第3版.ミネルヴァ書房.」です。
「発達の機能間連関」とは?
以下、著者からの引用です。
心理的要因に限っても、子どもの認知的発達、言語的発達、社会・情動的発達、粗大運動・微細運動の発達といったそれぞれの領域の発達に加えて、領域間の関連(発達の機能間連関)から子どもを理解しようとする姿勢が大切になってきます。
臨床発達心理学では、認知発達、言語発達、社会・情動発達という各領域のテキストがあります。運動発達に関しては、他の領域に比べて研究が進んでいないこともあり、一冊のテキストにもまだまとまっていないのが現状です。
臨床発達心理学については、「臨床発達心理学とは?-療育経験からその視点の重要性を考える-」をお読みください。
発達の機能間連関は、こうした領域間を関連付けながら人を理解するものです。
こうした発達の機能間連関ですが、この視点が療育現場でどのように役立つのかを以下にお伝えします。
著者のコメント
1.横の視点→様々な能力の関連が理解できるようになる
運動発達、認知発達、言語発達、社会・情動発達といった領域の関連は、どれかが単独に発達するわけではありません。
例えば、歩行可能となり自分の世界が広がることは、3次元理解といった空間把握に影響します。つまり、運動の発達が認知の発達に影響します。
例えば、養育者との深い情動交流を通して形成される愛着関係は、その後、自己の社会での振る舞いに影響します。つまり、情動の発達と社会性の発達は関連づきます。
例えば、他者の意図や信念の理解(心の理論の理解)は、言語発達がある程度進んでいないとできないという研究結果が出ています。つまり、認知発達と言語発達は関連づきます。
このように、いくつか例を見てもお分かりいただけるかと思いますが、様々な能力は相互に関連を持ちながら発達します。
療育現場で発達に躓きのあるお子さんたちは、こうした能力の凸凹が激しいケース、あるいは、知的障害など全体的な発達がゆっくりなケースもあります。
発達の機能間連関を理解していくことで、こうした特性のあるお子さんへの理解をするのに役立てることができます。
2.縦の視点→より詳細な時間軸での理解ができるようになる
例えば、定型児であれば、ある程度物事を学習するために必要な家庭環境・学習環境が整っていれば、自然と身に付くことができます(全てとは言えませんが)。
つまり、成熟を待てばできる要素が多くあります。
○歳には○○ができるようになるというある一時点での理解です。
これに対して、より詳細な時間軸での理解は、ある一時点での理解だけではなく、○○ができるにはどのようなメカニズムが必要かというより詳細な理解です。
例えば、ことばを話せるようになるには(単語が出るのは)○歳頃、歩行できるようになるには〇歳頃という理解ではなく、ことばを話せるようになる・歩行できるようになるにはどのようなメカニズムが必要か?という時間軸での理解です。
こうしたメカニズムの理解は当然1.様々な能力の関連が理解できるようになる、でお伝えした、領域間の繋がりとも関連してきます。
例えば、ことばを話せるようになるには、言語の発達だけではなく、認知の発達も関連してきます。
こうした各能力が時間軸に沿ってどのように関連して発達していくのかという理解が療育現場では役に立ちます。それは、個人間差・個人内差がある発達曲線を理解することでもあります。
以上、療育現場で役立つ発達の機能間連関の著者のコメントになります。
振り返ると、横と縦の視点を詳細に理解していくことが療育現場では役立つということなります。
それだけ、療育現場には、様々なお子さんたちがいるということでもあります。
私自身、まだまだ未熟ですが、こうした臨床発達心理学で大切にされている、発達の機能間連関についての理解を今後も現場を通して深めていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
麻生武・浜田寿美男(編)(2005)よくわかる臨床発達心理学第3版.ミネルヴァ書房.