発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

発達支援 発達理解

発語のない子どもたちとの関わりを通して学んだこと

投稿日:2020年6月26日 更新日:

私は以前、療育施設で発達につまずきのあるお子さんたちを支援する仕事をしていました。

障害の程度も様々でしたが、比較的障害が重いお子さんたちが多く、医療的なケアが必要なお子さんたちもいました。

そうした職場環境の中で、私が最初に苦労した点は、発語のない子どもたちとの関わりです。

それまで、言葉を通してのやり取りがほとんどだったこともあり、正直、関わり方、遊び方など全くわからない状態でした。

そこで、今回は、私の療育施設での経験から、発語のない子どもたちと、どのように関わってきたのか、そして、関わりを通して学んだことをお伝えしていこうと思います。

私が療育施設で最初に担当したクラスは10名で、発語のない子どもたちが大半を占めていました。

ですので、最初は、子どもたちが何を必要としており、何を伝えようとしているのかがわからなく、手探り状態でした。子どもたちの後を追って何がしていのかを考えるなど、自分が先導で動くことが難しい状態でした。

周囲の先輩職員を見ると、なぜ子どもたちが伝えたいことが、発語なしでもわかるのかという疑問が強くありましたが、それを実感するには行動してみるしかありません。

私はとにかく自分が得意とする(というより好きな)、体を使ったダイナミックな遊びをたくさん行いました。すると、次第に子どもたちが自分のところに多く集まってくるようになりました。子どもたちは、面白い、面白そうなところに集まるということは、昔も今も一貫して見られる共通の特徴です。

そうした中で、遊びを通して、子どもたちが何を期待しているかが少しずつ分かるようになってきました。とにかく、子どもたちとのやり取りが活発化してきました。

それは例えば、ブランコを“おして”、乗り物に“のせて”、スキンシップ遊びを“もういっかい”という感じで、言葉はなくても、手引きや発声などで伝えることが増えてきました。

私は子どもたちの要求行動が、次第に、非言語的コミュニケーション(身振りやジェスチャーなど)と言われるものから推測できるようになってきました。

こうした要求行動は遊び場面だけでなく、他の生活場面でもくみ取れるようになってきました。

もちろん子どもたちとのやり取りは、子どもの要求行動だけに限りません。私が伝えたことを、子どもたちが「理解」するという側面もあります。

当然、子どもたちは、すぐに私が伝えた内容がわかるということは少なく、生活経験の繰り返しで理解していくということが多くあります。

つまり、ある状況に応じて、その状況にふさわしい言葉を伝えていくということで徐々に理解が進むという感じです。

こうして考えると、言葉はある一側面しか伝えていないと感じます。つまり、ある状況のある一部を切り取ったものという感じです。

私は、こうした経験を通して、発語がなくても子どもたちと意思疎通ができるということを実感し、そして、言葉とは、文脈や状況を共有するという経験から生まれるものであると考えるようになりました。

ですので、意思疎通をしていく上で、言葉(音声言語)以外が持つ重要性なども療育経験から理解できるようになったと思います。

こうした経験は、人が言葉を学習する以前の段階に、どのような学びをしているのかという、発達理解への問いの動機付けにもなりました。

つまり、発語のないお子さんたちとの関わりは、彼らとの意思疎通を実際どうやっていけばいいのかという実践に留まらず、言語以前の人の発達への理解への問いも同時にもたらせてくれました。

私は、「なぜ人は言葉を話すようになるのか?」「言葉を話す発達の前提条件とは?」などの問いを立て、様々な書物を読み込みました。

自分で調べていく中で、乳幼児が生誕してから発語に至るまで実に多くの経験を重ね、その中で様々な能力が育っていること、言葉を話すためには、身体機能や発声機能の発達、人との関係性の育ち、認知の発達など実に多くのものが関与していることが少しずつ理解できるようになりました。

発達支援の現場で、様々なことを経験していくことは、実践だけでなく、多くの人間への問いを生じさせるものだと改めて感じます。

こうした問いは、漠然と湧いてきたというよりも、自分が苦労したこと、また、苦労している最中から生じることが多いように思います。

私も日々の現場から、子どもたちとどうやって意思疎通をしていけばいいのか常に悩み考えていました。

そして、現場から問いを見つけ考え続けることは、その後の、発達理解と発達支援へ強く貢献するものだと思います。

今後も、自分の中で生じた問いに対して真剣に向き合っていきたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

スポンサーリンク

-発達支援, 発達理解

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

発達障害児が生活経験を重ねることの大切さについて考える

発達障害児の中には、様々な障害特性や知的な高低などによって状態像に違いが見られます。 最近では、もともとの障害特性や知的能力(変動はありますが)に加えて、社会に適応する能力の重要性が指摘されるようにな …

発達支援(遊び編):遊びでみられる困難さとその対応、そして成長について

発達障害のある子どもたちは関わり方の面で特別な対応や配慮が必要になることがあります。 例えば、見通しの持ちにくさがある、切り替えが悪い、感覚の過敏さ・鈍感さがある、自分が思ったことを直ぐに口にしてしま …

発達支援(回想編):療育施設での二年を振り返る

前回の記事では療育施設での一年間の体験から学んだことや課題などについてお伝えしました。 そこで、今回は前回の記事に引き続き、その後の一年をプラスした療育施設での二年を振り返りながら、その中での学びや課 …

発達支援(理論編):発達支援の現場で役立つ視点について

前回・前々回と療育施設の現場で役立つ視点についてお話してきました(参照「発達支援(理論編):療育施設で役立つ視点について①」、「発達支援(理論編):療育施設で役立つ視点について②」)。 療育施設には、 …

チームで支援するときのリーダーの役割について発達支援の現場から考える

発達支援の現場で様々な人たちと協力して支援を行うことは大切です。 その中で、リーダーの存在は複数の人をまとめるためにも、支援の方向性を作る上でも非常に重要です。   そこで今回は、発達支援の …