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療育現場に活用できる愛着(愛着障害)の視点

投稿日:2022年9月24日 更新日:

著者は長年療育現場で発達に躓きのあるお子さんたちと関わってきています。

その中には、愛着に問題を抱えている子どもたちもおります。

愛着に問題を抱えている子どもたちへの支援は一筋縄ではいかないといった印象がこれまでの経験からあります。

 

それでは、愛着に問題を抱える子どもに対して療育現場で何ができるのでしょうか?

 

今回は、療育現場に活用できる愛着(愛着障害)の視点について、著者の経験談も合わせてお伝えしていきます。

その際に、愛着障害への支援といった専門的レベルの内容ではなく、ある程度誰にでも可能な考え方についてお伝えしていきます。

 

 

今回参照する資料は「岡田尊司(2016)愛着障害の克服:「愛着アプローチ」で、人は変われる.光文社新書.」です。

 

 

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療育現場に活用できる愛着(愛着障害)の視点

以下、著書を引用しながら見ていきます。

だが、ある意味、何をするかよりも、もっと大事なことがあるのかもしれない。それは、「子どもが楽しんでやっているか」ということと、「療育の担当者やその場所が、子どもにとって安全基地となっているか」ということである。

 

大きな進歩が見られたケースを見返してみると、この二つが満たされているように思う。この二つの特徴は、もしかしたら、同じ一つのことなのかもしれない。

 

著書の内容では、療育に改善効果が期待される要因として、以上の二つ、「子どもが楽しんでいる」ことと、「担当スタッフや活動場所が安全基地となっている」を挙げています。

そして、特に愛着に問題を抱えているケース(愛着障害など)には、「安全基地」がキーワードになります。つまり、関わるスタッフの安心感や活動場所の安心感などが大切になります。

さらに、こうした「安全基地」と「子どもが楽しく過ごす」ことは非常に関連性が深いことが考えられます。

子どもたちは、その場の雰囲気が安心できる、関わるスタッフが肯定的に接してくれるなどを「安心基地」として、その結果、「子どもが楽しく過ごす」に繋がっていくのだと予測できるからです。

 

関連記事:「療育は必要か?-療育経験からその必要性について考える-

 

 


それでは、この点をさらに深堀するために、次に著者の経験談についてお伝えします。

 

著者の経験談

著者は現在に至るまで長年、発達障害の子どもたちや、愛着に問題を抱えている子どもたちを療育現場で見てきました。

その中で、何か不満が多い子ども、問題を起こす子どもの多くが、安心感や安全感が不足しているように感じることが多くありました。

また、これまでの経験上、安心感や安全感を持てるような経験をうまく育めなかったことも要因としてあるかと思います。

こうした子どもに対して、著者を含めたチームでは、その子に合った環境を整えるようにしています。

それは、活動内容(本人が楽しめる活動の提案や工夫)、安心できる場所(静かな環境、集中できる環境など)、活動の見通しの設定(その子に合わせてスケジュールを立てる、未来への安心感を持たせるなど)、関わるスタッフがその子の好む関わりをしてくれるなど、人的・物的などの環境調整といった様々なものが挙げられます。

こうした一人ひとりに合った環境調整や関わりをしていく中で、さらに大切なことは、発達的視点をもった理解です。

つまり、誰かと比較するのではその子自身の成長や環境の変化から生じる困り感や興味関心の変化を元に、今後どのようか関わりが必要かといった発達的な理解です。

こうしてみると非常に高度な専門性が要求されるように思いますが、著者が働いている現場には、学生スタッフなどまだこの領域での経験が少ない方も多くおります。

こうした人たちの関わりを見ていて大切だと感じるのは、子どもたち一人ひとりを理解しようという姿勢なのだと思います。

関わり方のうまい人は、必ずしも自分のこれでの関わり方に固執しません。

つまり、相手の状態や発達過程に応じて自分の関わり方を変化できる人のことだと思います。

もちろん、基本となる関わり方や方針は前提としてあるかもしれませんが、その中で、自己修正していくことが必要なのだと思います。

このようにして、子どもを理解しようとする柔軟な姿勢のある人を中心としてその活動場所の雰囲気が作られていきます。

そして、スタッフの関わり方や活動場所の雰囲気が子どもに安心感・安全感を与えます。

つまり、「安全基地」となるわけです。

子どもたちの表情を見ていても、安心感・安全感のある子どもたちは、伸び伸びと活動を楽しんでいます。つまり、「子どもが楽しく過ごす」様子と「安全基地」とはお互いに密接に関連し合っているのだと実感しています。

もちろん、深刻な愛着障害を抱えた児童においては、専門的な知識や介入が必要になるのだと思います。

また、発達障害についても、同様に専門的な知識は必要不可欠だと考えます。

これまで述べてきた視点は、あくまで子どもたちに関わる態度や姿勢、考え方についてといった点を強調しておきたいと思います。

そして、これまで述べてきた「安全基地」と「子どもが楽しく過ごす」の2つの視点は、愛着に問題を抱えている子どもだけではなく、全ての療育現場で必要不可欠な視点だと思います。

 

 


以上、療育現場に活用できる愛着(愛着障害)の視点について見てきました。

療育現場には様々な子どもたちが通所してきいます。

そのため、子どもたちのニーズも一人ひとり異なります。

一方で、今回取り上げた「安全基地」と「子どもが楽しく過ごす」の2つの視点はどの子どもたちにとっても大切な考え方だと思います。

また、この2つの視点は、愛着に問題を抱えている子どもに対して、大きな効果を長期的にみると発揮するのだと思います。

私自身、まだまだ未熟ですが、今後も愛着(愛着障害)という視点を療育現場に取り入れていきながら、日々の実践を大切にしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

岡田尊司(2016)愛着障害の克服:「愛着アプローチ」で、人は変われる.光文社新書.

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