著者は長年、発達に躓きのある子どもたちに療育をしています。
その中で、ここ半年前頃から積極的にタブレットを活用するようにしました。
その理由が、自分で調べたいものを調べる、動画鑑賞を楽しむ、など過ごしの幅を広げようとしたためです。
もちろん、子どもたちからの要望があったということもあります。
それでは、半年以上、療育現場でタブレットを活用してみて子どもたちの過ごしにどのような変化が生じているのでしょうか?
そこで、今回は、療育現場でのタブレット活用の好ましい変化について、臨床発達心理士である著者の経験談から考えを深めていきたいと思います。
療育現場でのタブレット活用の好ましい変化
好ましい変化を感じるものとして、①過ごしの幅が広がった、②タブレットを活用した制作活動、③興味関心を大人や他児と共有する機会が増えた、の3点が大きくあります。
それでは、以下、3点について見ていきます。
①過ごしの幅が広がった
タブレットを活用する前には、遊びのバリエーションが少ない子もいました。
特に、体を使って他児や大人と遊ぶというダイナミックな遊びよりも静かにゆっくりと過ごしたい子どもに多い印象があります。
もちろん、その子の好きそうな感触遊び、製作遊び、お絵描き遊び、本などを提案して過ごしていましたが、こうした遊びの多くは毎回やるというものではありませんでした。
一方、タブレットに関しては、時間を決めて提示することで、活動のルーティンに毎回組み込まれるほど人気となりました。
そして、活動の幅が増えたこと、楽しみなことが増えたことで、以前よりも楽しんで活動する様子が増えたという感じがします。
②タブレットを活用した制作活動
療育現場には、折り紙や工作など製作遊びを夢中で行う子どもたちも多くいます。
発達に躓きのある子どもたちの中には、製作遊びの際に、作り方の手順が動画を見た方がイメージをしやすいという子も多くいます。
また、著者も実際に作り方の動画を見た方がスムーズに作れるため、教える側の利点もあります。
タブレットを活用し、製作遊びの手本となる動画を見ることで、作りたいものを自分で調べ(時には大人と一緒に)、完成像をイメージし、それに向けてどのような材料が必要で、どのような手順で作成していけばいいかなどを考える手助けになります。
また、関わり手の大人も子どもに応じてどのようなサポートが必要なのかをこうしたやり取りを重ねていく中で、掴めるようになっていくと思います。
製作遊びにタブレットを活用していくことで、製作遊びの質が高まったという子どもたちは多くいると実感しています。
③興味関心を大人や他児と共有する機会が増えた
タブレットを使用した動画鑑賞などは一人の時間を楽しむ以外にも、他者と動画の内容について共有・共感したいという動機づけにもなります。
療育現場では、一人の子どもが見ている動画内容に他児も興味を持ち、興味・関心から両者の接点が生まれたというケースもあります。
特に、ASDの子どもなど、興味・関心に対しては、多くの知識を持っていることが多いため、興味・関心が他者との会話の糸口になることがよくあります。
また、タブレットで動画を流しながら、数名でのごっこ遊びに活用するなど、子どもたちなりの工夫も見られるようになっています。
以上、療育現場でのタブレット活用について好ましい変化について見てきました。
タブレットを現場に導入した当時は、ルール設定を考えるなど、どちらかというとタブレットの貸し借りがうまくいかないトラブルへの対処方法や楽しみな活動の比重がタブレットよりになってしまうのではないかという懸念材料がありました。
しかし、半年以上が経つ頃には、子どもたちは大人が決めたルールを概ね守る様子が定着し、その中で、一人ひとりの楽しみ方、遊びの幅が広がり、他者との興味・関心を通した繋がりが増えるなど、むしろ好ましい変化の方が多く見られていると思います。
私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も子どもたちの遊びの幅・活動の幅を広げていけるように、様々なアプローチを試みていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。