療育現場で働いていると「遊び」が非常に重要となるため、日々、子どもたちが楽しめる「遊び」の内容を考える必要性が出てきます。
私は以前、療育施設で指導員として発達につまずきのあるお子さんたちを相手に療育をしていました。
以前は遊びのプロになろうという意識でいましたが、子どもたちがハマれる遊びを提案し実行することは思いのほか簡単ではありませんでした。
しかし、プロ意識をもって日々試行錯誤することはとても大切であり、そんな日々の積み重ねが後々自分の成長を感じることに繋がることも多くあります。
今回は、私が療育施設で働いていた頃の経験をもとに、「遊び」の展開の難しさと大切さについてお伝えしていこうと思います。
ここでいう「遊び」の展開とは、ある遊びをより発展させるということを意味します。例えば、プラレール遊びを子どもと支援者でやっていたときに、周囲の他児も巻き込んで巨大な線路を作るなどが例として考えられます。
私が遊びの展開を意識したもの、先輩職員が遊びを単発で終えることなく、次々と子どもたちの様子を見ながら発展させていくことを見てきたことにあります。
こうした技量は思いのほか難しいです。
私は当時は、遊びについての知識がほとんどなかったため、日々の実践に加えて、遊びの本や動画などからそうした知識を収集していました。ですが、そうしたものに書かれている内容は、自分の現場にいるような発達につまずきのあるお子さんたちを対象としたものは少なく、その多くは保育系のジャンルである一般的な発達を対象とした遊び一覧でした。
こうした書籍は、単発での遊びが描かれていることが多く、遊びの展開の仕方などはあまり書かれていません。それも実際に保育園などで園児の様子を見ると、単発の遊びに非常に長い時間没頭している姿を見ることがありますが、自分が関わっていた子どもたちは、単発の遊びに直ぐに飽きてしまうお子さんも多くいました。そうしたことから、大人側の遊びを発展させるという創造性が必要になります。
さらに、発達につまずきのあるお子さんたちは、遊び方などもこちらが予想していたこととは違う反応を示すことが多くあります。
ですので、実際にやってみた感じで子どもたちの反応を見ていきながら、遊びを組み立てていく必要があります。まずは、自分の先輩職員がやっていた遊びを手本としながら、その中に、私なりに考えた遊びの要素を加えていきました。
こうした細かい積み重ねをしていくことで、遊びの展開へのヒントが見えてくることがよくあります。
最後に私が遊びの展開の大切さを感じた場面についてエピソードをお話します。
私が以前勤めていた園では、毎日、設定遊びという事前に準備した集団遊びを行っていました。遊びの流れとして、朝の集まり(手遊びや紙芝居、呼名)→設定遊びという流れになっています。
私は、設定遊びとして、的当てゲームを考えました。的にゴムが付いていて、ゴムの先にはボールがついています。それを引っ張って話すと的が勢いよく倒れます!
的には子どもたちが好きだったバイキンマンのイラストを描き、朝の集まりでは、アンパンマンの紙芝居など、アンパンマン三昧という形で事前に準備しました。もちろん、当時のクラスの子どもたちが好きだったことも把握していましたし、的当ての個々の技量なども私なりに把握していまいた。
実際にやってみると、子どもたちは朝の集まりからよく私の動きや私が見せたものなどをじっと見る様子が多かったように思います。こうした子どもたちの興味が、表情などから伝わってきたのを今でもよく覚えています。そして、的当ても一人ひとり楽しんで取り組んでいました。その時の表情も“バイキンマンを倒してやるぞ!”という表情にも見えました。
このように一つの遊びをとってもやり方次第で子どもたちの興味や関心を引く方法は色々あるのだと感じましたし、その中で、遊びを単発で終えずに、展開していくことで、子どもたちの興味の幅や深さをさらに伸ばすことができるのだと感じました。
こうした遊びの展開は日々の子どもたちとの関わりからヒントを得られることが多いので、すぐにやろうとしてもうまくいかないことが多くあります。ですので、長いスパンの中で少しずつという感覚でいいのだと思います。
大切なのは、日々の現場での子どもたちの様子をよく観察すること、実際に関わることから多くのヒントが生まれ、それを応用する力だと思います。
私も以前の現場から遊びの深さを学ぶことができたように思います。
今後もより良い療育をしていけるように「遊び」をキーワードに日々の実践を大切にしていきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。