療育(発達支援)には、主に治療と教育といった側面があります。
そして、障害など発達に躓きのある子どもたちへの理解と支援を行うことで自立や社会参加を目指すものとされています。
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著者も療育施設や放課後等デイサービスなどの経験を通して、障害への理解を深めていきながら、どのような支援が個々において必要であるかを日々考えています。
そうした中で、非常に重要だと痛感しているのは、二次障害の予防です。
そう感じるのはすでに二次障害として、行動面に出ている子ども、その傾向のある子との関わりがとても難しいと感じるからです。
そこで、今回は療育の重要性について、二次障害の予防の観点から、著者の考えも踏まえてお伝えします。
今回参照する資料は、「原哲也(2021)発達障害の子の療育が全部わかる本.講談社.」です。
療育の重要性:二次障害の予防の観点から
以下に著書を引用します。
二次障害は生まれつきの特性ではなく、特性の理解と適切な対応で予防・改善できるものです。適期に療育を始め、適切な理解と対応を続けることによって二次障害を予防しましょう。
発達障害がわかったことで、(略)対応ができて社会参加できるようになったという話も聞きます。このことからも、発達障害の早期発見、子どもの特性の理解と個々人に適した支援をする適切な「療育」がとても大事であることがわかります。
療育の重要性を考えたときに大切な視点はたくさんあります。
それは例えば、様々な発達特性の理解、障害への理解であったり、理解に基づいた個々への配慮や支援があります。
これらをさらに細かく具体化すると、様々な理解様式や支援方法が上がってくるかと思います。
こうした療育を通しての理解や支援を行うことは、二次障害の予防に必要不可欠です。
著者は二次障害が生じている(生じていると思わる)事例にこれまで多く関わってきました。
二次障害は起こった後の対応も当然重要ですが、まずは、起こる前に未然に防ぐということがとても重要です。
人間は問題が生じる前には意外と気づかないことが多いのだと思います(著者も含め)。そのため、「まだ大丈夫」「とりあえず様子を見よう」ということになりがちです。
重要なのは、こうした考えにストップをかけ修正することです。
つまり、「○○の状態が続いて大丈夫か?」「なぜ○○の状態になっているのか?」「○○の状態を良い状態にするにはどのような対応が重要か?」など、問いを持ち、問題となっている背景要因を考え、対応策を練るなど、止まった思考に待ったをかけ修正することが重要です。
それでは次に、二次障害が生じている(と思われる)子どもとの関わりを通して学んだ著者の考えをお伝えします。
著者のコメント
著者は現在、放課後等デイサービスで療育に携わる仕事をしています。
子どもたちとの関わりで大変だと感じるのは、二次障害が生じている(と思われる)子と関わりです。
二次障害にも様々な行動特徴があるかと思います。
中には、すぐにキレるなど感情のコントロールが難しいお子さん、もの投げや他害のあるお子さん、相手を挑発し度々喧嘩を起こすお子さん、自傷のあるお子さんなど様々なケースがあります。
当然、こうした行動の背景は一人ひとり異なります。
難しいのは、もともとの発達障害などとの区別です。例えば、愛着障害とADHDの行動特徴は似ている面もあります。
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こうしたもともともっている一次障害としての発達障害の上に、二次障害が重なることで、一次障害と二次障害両方の理解と支援が必要になってきます。
さらに、二次障害が生じていることで、理解もそうですが、支援とその効果を実感できるには様々な取り組み内容の工夫と効果に要する時間もかかります。
なかなか療育がうまく進まない事例の中には、二次障害のケースもあるかと思います。
こうした経験を通して、著者は二次障害の予防としての療育がとても重要であると考えます。
問題は起こった後に対処するのではなく、起こる前に対処するという予防的な視点が大切であると思います。
療育現場には非常に多様な子どもたちが通所してきます。
私自身も、まだまだ未熟ではありますが、今後も多様な発達を理解していきながら、一人ひとりの発達を支え、二次障害を予防していけるように日々の実践を大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
原哲也(2021)発達障害の子の療育が全部わかる本.講談社.