日々の現場で療育に携わる仕事をしていると、その瞬間瞬間に目がとらわれてしまい、そもそも何を目的として行っているのかを忘れてしまうことがあります。
現場は、日々、自然と課題が降ってきますので、課題に対応するだけで、非常に多くの時間とエネルギーを費やします。
もちろん、目の前の課題を考えることはとても大切です。
しかし、何のために行っているかという先の視点、つまり、目標(ゴール)を意識しないと道に迷うことがあります。
目標は個々に応じて当然異なりますが、療育という広い観点で考えたときに多くの人に当てはまる目的もあるかと思います。
そこで、今回は療育現場に長年携わっている著者が、療育の目的を考えることの大切さについてお伝えします。
今回参照する資料は「原哲也(2021)発達障害の子の療育が全部わかる本.講談社.」です。
療育の目的について
それでは早速著書を引用します。
「社会で生きていけるようになる」ことは、子育てのひとつのゴールと思います。
幼かった子どももやがて思春期を迎え、社会のなかで、それぞれの場所で生きていく。その過程で子どもはさまざまな困難に出会います。
そのとき子どもを支えるのは「私は私でいいのだ」という自尊心と、自尊心に支えられた生きる意欲、生活のなかに楽しみがあること、人に助けてもらいながら困難を解決する力だと私は思います。
以上が引用文です。
この引用文の中には、様々な大切なポイントが見られます。
一つ目は、自分への自信です。
思春期などの困難な時期・そして、社会の中で生きていくためには、一定以上のエネルギーが必要です。こうしたエネルギーを、療育を通して養うことが重要です。。
著者は現在、放課後等デイサービスで学童期の療育を行っています。その中で、思春期以後の発達を考えて、大人との信頼、他児との関わりからくる自信の構築などを大切にしています。
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二つ目は、興味関心を深め・広げることです。
社会の中で生きていくために、そして、困難なことを乗り越えるためにも、楽しさが生活の中にあることが重要です。
そのために、著者は子どもたちの興味関心を通しての関わりに重きをおいています。また、興味関心は強みにもなります。本人の強みを発見し、伸ばすことも療育においてとても大切です。
三つ目は、人に相談する力・助けをかりる力です。
人は何でも一人でこなすことは不可能です。特に、発達に躓きがあると、様々な困難さが人生の中に生じます。こうした困難さを把握し、人に頼る力はとても重要です。
著者も、現場で子どもたちが大人と相談してうまくいったという体験を多く持ってもらえるような支援を心掛けています。
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著者のコメント
以上の内容を踏まえて、次に、著者が療育の目的を考えることの大切さについて述べていきます。
社会の中で生きていくためには様々な力が必要です。
それは、前述した、自分への自信や楽しみがあること、人に力をかりる力でもあります。
著者は10年程度前に、療育に携わる仕事を始めました。
当時は、目の前のことに夢中で、子どもたちの将来を考える余裕や経験などもない状態でした。
その内容は、日々のトラブルへの対処や、子どもたちの行動(大人も含む)の意図や現在の発達段階はどのレベルか、そして、どのような配慮や支援が有効であるかを考えることに多くを費やしていました。どちかというと短期の視点が多かったと思います。
もちろん、長期的な視野を持つことの重要性は頭では理解していましたが、体が追いついていない状態でした。
それから、10年程度が経過し、少しは経験と知識がついてきました。
そして、最近になってようやく子どもたちの将来を冷静に考えることができるようになってきました。
子どもたちの将来を考えるようになってようやく、療育の目的とは?といった問いに対する自分なりの様々な答えが出てくるようになりました。
人間、目的がないとなかなか前進することが難しいと思います。
私自身、これまでの療育経験を踏まえ、療育の目的を考えることで、今どのような関わりが大切なのか、後の発達において今の関わりがどのような意味を持つのか、という視野の広がりを実感できるようになってきました。
詳細は、前述した療育の目的についても含め、他の記事にも記載しております。また、今後も記事にしていきたいと思います。
今後も子どもたちへ、より良い発達支援ができように、将来的な展望をもった関わりも大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
原哲也(2021)発達障害の子の療育が全部わかる本.講談社.