療育の成果について、どのような働きかけが成果に繋がったのかを特定することは難しいことです。まず、何を持って成果と言えるのか、そして、成果には様々な要因が絡んでいるからだと思います。
さらに、成果(変化)にも、短期のものと長期のものなど時間軸の捉えの違いによって見えてくるもの、内容が異なるかと思います。
そこで今回は、私自身の放課後等デイサービスでの長期の子どもたちとの関わりからポジティブな変化が見られた例を長期の視点から以下に事例を簡単に紹介したいと思います。
療育の成果について-感情のコントロールについて-
A君の例→感情のコントロールが少しずつ身に付いてきた例
小学4年生のA君は、私が所属している放課後等デイサービスを低学年の頃から利用しているお子さんです。
低学年の頃は、自分の思い通りにいかないと、暴言を吐いたり、物を投げるなどのかんしゃくを起こす頻度が多いお子さんでした。
思い通りにいかない例として、遊びたい子どもとうまく遊べない、自分が作りたい工作がうまく進まない(イメージと違うなど)など、かんしゃくの理由が特定できるものもありましたが、急に他児に暴言を吐いたり、物を投げるなど、衝動的な行動(要因の特定が難しいもの)も多く見られました。
どちらかというと、以前はかんしゃくの要因の特定が難しい行動の方が多かったように思います。
こうしてかんしゃくが起こると、感情が高ぶっているので、気持ちを落ち着けるまで時間がかかります。
我々スタッフは、危険な行動は体を張ってとめ、できるだけ静かで人のいない場所にA君を連れていきクールダウンを促しました。
そして、A君の感情状態をそっと言葉がけするようにもしました。例えば、「今少しテンション高いよ」などです。
以前は、この体を張ってとめるときにもなかなか抑えがきかないことが多くありました。
こうして落ち着いた後に、本児と言葉で振り返る(何が気になったのか・嫌だったのか・そしてこうした方がいいなどの提案など)といったことを繰り返してきました。
こうした経験を重ねると、私たちスタッフは、どのような状況でかんしゃくが起こるのかが予測できるようになってきました。
そのため、事前にかんしゃくが起こらない環境、つまり予防線を張ることがとても重要になってきます。
予防線の中には、他児との距離(トラブルになりそうな他児と環境をわけること)、他児へ遊びの誘いをして断られることもあると事前に伝えておくこと(事前に起こりうることを伝える)、代替案を相談しておくこと(思い通りにいかない場合)、器物破損に繋がりそうなものをできるだけ目の前に出しておかないこと、常に大人が傍にいるなどがあります。
こうして、①かんしゃくが起こりにくい環境を設定すること(予防線をはる)、②起こった後に落ち着ける環境でクールダウンをはかること、③振り返ることなどの対応を数年間取ってきました。
現在のA君は、まだまだ感情のコントロールがうまくいくわけではありませんが、以前と比べ、すぐに物を投げたりするなど衝動的な行動が大幅に減ったこと、うまくいかなかった際に、自分から「もっとこうしたかった!」など、言葉で大人に伝えることが増えたこと、代替案の提案が通り気持ちの切り替えがうまくできるようになってきたなどの変化が見られてきました。
以上が、A君のここ数年間の変化です。
今回は感情のコントロールを中心に、かんしゃくが起こる場面や内容などについて事例からお伝えしてきましたが、こうした対応には、負の感情→対応→落ち着く、といったサイクルかと思いすが、なによりも重要だと感じるのは叱責する頻度を少なくし、本人の頑張りやできたところ・できるようになったところを褒めることだと思います。
こうした経験を重ねながら、本人は自分は大切にされ認められている、大人は安心できる存在であると言った自他への肯定的な感情を持つことができるのだと思います。
こうしたかんしゃくが頻繁に起こるお子さんは、とにかく感情のコントロールが苦手です。
そして、対応する大人も非常に精神的エネルギーを使います。特に、ご家庭は大変かと思います。
1人の人が抱えることなく、できるだけ多くの人で協力しながら、支援体制を取っていくことが重要かと思います。そして、長い目をみて少しの成長を見守っていくといった忍耐も大切だと思います。
今度も子供たちへより良い支援ができるように頑張っていこうと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。