療育の成果について、どのような働きかけが成果に繋がったのかを特定することは難しいことです。まず、何を持って成果と言えるのか、そして、成果には様々な要因が絡んでいるからだと思います。
さらに、成果(変化)にも、短期のものと長期のものなど時間軸の捉えの違いによって見えてくるもの、内容が異なるかと思います。
そこで今回は、私自身の放課後等デイサービスでの長期の子どもたちとの関わりからポジティブな変化が見られた例を長期の視点から以下に事例を簡単に紹介したいと思います。
療育の成果について-仲間関係を通して-
A君の事例→仲間との関わりを通して自己肯定感が高まった例
小学校4年生のA君は、私が所属している放課後等デイサービスに3年生から通い始めた子です。
通い始めた当初は、大人との関わりが中心でアクティブに活動する様子が多い印象でした。そこから少しずつ、他児との関わりも増えていき、大人から同年代へと興味が移行していきました。
学校でほとんど友人がいないA君は、友だちを欲してる思いが強くあり、近い年代の男子を遊びの誘う様子が増えていきました。
しかし、その誘い方も初めは他児の腕を引っ張るなど強引な誘い方が多く、また、誘いに断れた時には、急に不機嫌になりその場から立ち去り一人で泣くことも多くありました。
大人が話しかけても「うるさい!くるな!」など、話に応じることもなく、「自分はいなくてもよい」などひどく自己否定感が強い状態になることもありました。
また、断られることへの不安からか、一時は、遊びたい子が誘いにのってくるまでは、少し不安そうな表情をしてくることもありました。
我々スタッフは、A君に対して、①遊びへの誘い方(言葉での伝え方)、②断れた時に何をして過ごすのかの事前の相談、③断られた際に他児の意図や思いを伝えること(けっしてA君が嫌いで遊びたくないわけではないことなど)、④うまく関われて時に直ぐに肯定的なフィードバックを返す、などの取り組みを継続してきました。
こうした取り組みを継続することで、A君が他児を誘うときに言葉で伝えることが増え、断れた時にも違う選択肢を考えるなど、以前のようにひどく落ち込む様子は少なくなりました。
また、次第に他児と関わる頻度が増したことで、お互いの思いを理解し合える様子も増えていきました。こうした関わりを通して、お互い大切な存在であり、一緒に楽しく過ごすことができる仲間であるという意識が芽生えてきたことを強く感じます。
今では、関われる子もだいぶ増え、遊びのレパートリーも、工作、野球ごっこ、戦いごっこ、カードゲーム、レゴブロックなど他児から刺激を受け、多くの遊びを自分の中に取り入れ、また、A君から遊びの提案をする場面も多くなりました。
本人の口からも、放課後等デイサービスに対して、「楽しい!」、「今日は長く遊べるから最高!」など、非常に活きいきして来所することも多くなってきました。
この事例を通して、子どもたちにとって学校外での環境やそこで出会う人たちの関わりがとても大切であり、そして、関係性の中で、自己肯定感が育まれるといったことも体感として合わせて学ぶことができました。
様々な環境があることは、ある特定の環境でうまくいかなくなった時のリスクヘッジになります。
また、将来的に自分で違う環境を選択できるヒントを得たり、学校外にも様々な他児や大人がいるといったネットワークの拡張にも繋がるかと思います。
私自身、今後も、子どもたち一人ひとりの思いや意図などをくみ取りながら、より良い支援ができるように日々の実践を大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。