
療育の成果について、どのような働きかけが成果に繋がったのかを特定することは難しいことです。
まず、何を持って成果と言えるのか、そして、成果には様々な要因が絡んでいるからだと言えます。
さらに、成果(変化)にも、短期のものと長期のものなど時間軸の捉えの違いによって見えてくるもの、内容が異なります。
そこで、今回は、私自身の放課後等デイサービスでの長期の子どもたちとの関わりからポジティブな変化が見られた例を長期の視点から以下に事例を簡単に紹介したいと思います。
※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。
今回、参考となる資料として「行動障害について太田ステージから考える」になります。
療育の成果について-他害行動について-
Aさんの事例→他害行動が減った例
当時小学校高学年のAさんは、私が所属している放課後等デイサービスに来ており、小学校低学年の頃から関わりのあるお子さんで、とても可愛らしく元気で、一度気を許すと人懐っこいところがあります。
こうした性格の一方、低学年の頃は、他児を叩く行動などが頻繁にあり、他児とトラブルになることがよくありました。
他児を叩く状況としては、Aさんがイライラしている、他児が急に近づいてくる、他児との関わりでうまくいかない時などによく起こっていました。言葉で「いやだ!」などと伝える前に手が出てしまうという感じです。
この時のAさんは、状況の理解が難しく、他児の行動の意味の理解も困難で、自分の気持ちをコントロールすることが非常に難しい状況でした。
我々スタッフは、Aさんに対して、信頼できる大人を担当につけ、他児との関わり方をコーディネートしたり、トラブルになりやすい他児と環境を分けるなどの対応を取ってきました。
さらに、Aさんがイライラした時など、一度クールダウンをした後で、気持ちを聞き取ったり、言葉での伝え方をモデリングするなどの対応もとってきました。また、Aさんの好む遊びの中で、他者とうまく関わることができたという体験も可能な限り多くつくってきました。
こうした対応を継続した結果、少しずつではありますが、他害行動は減っていきました。
低学年時に手を出す行動から、泣いて大人に伝える、我慢して別の行動をする、気分転換をする、自分の気持ちを紙に書いて伝えるなどの様々な変化が出てきました。
小学校高学年のAさんは、他害行動はほとんどなくなりました。
信頼して遊べる大人の数も増え、遊びのレパートリーも増え、そして何より仲の良い友達ができました。
こうして見違える進歩を遂げたAさんですが、こうした変化は過去をじっくりと遡らないと見えてこないことかと思います。
以上、療育の成果について-他害行動について-見てきました。
他害行動はそれに向き合うスタッフから見て非常に対応が難しいものです。精神的なエネルギーも非常に多く使います。
おそらく日々関わっているスタッフや、特に一番身近で関わるご両親などは日々の関わりで精一杯かと思います。
しかし、長いスパンをかけて支援を行うことで良き方向へと変化を遂げることが可能かと思います。
こうした、変化の中で、認知の発達、社会性の発達、情動の発達など様々な変化が相互に連動しながら成長しているのを感じます。
Aさん自身も、状況の理解が進み、他者との関わりもうまくなり、自分の気持ちのコントロールも上手になりました。
子どもたちの成長は個々によって非常に違います。一人ひとりの成長とじっくり向き合いながら今後も日々の現場での実践を大切にしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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