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療育の成果について-ごっこ遊びを通したイメージの共有-

投稿日:2022年1月15日 更新日:

 

療育の成果について、どのような働きかけが成果に繋がったのかを特定することは難しいことです。

まず、何を持って成果と言えるのか、そして、成果には様々な要因が絡んでいるからだと言えます。

さらに、成果(変化)にも、短期のものと長期のものなど時間軸の捉えの違いによって見えてくるもの、内容が異なります。

 

そこで、今回は、私自身の放課後等デイサービスでの長期の子どもたちとの関わりからポジティブな変化が見られた例を長期の視点から以下に事例を簡単に紹介したいと思います。

 

※この記事は、臨床発達心理士として10年以上療育現場に携わり、修士号(教育学・心理学)を有する筆者が執筆しています。

 

 

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療育の成果について-ごっこ遊びを通したイメージの共有-

Aさんの例→ごっこ遊びを通してイメージを共有することが増えた例

当時小学校中学年のAさんは低学年時からごっこ遊びが好きなお子さんでした。

ごっこ遊びの中には、キャンプごっこ、買い物ごっこ、ラーメン屋ごっこ、ドライブごっこなど様々なものがあり、Aさんから「やりたい!」と提案してきます。

Aさんが低学年時の頃は、Aさんが思い描くイメージと関わる大人(スタッフ)のイメージがなかなかかみ合わずにうまく遊びが進まないことが多くありました。

それも、Aさんが思い描くイメージのスケールがとても壮大で、大人がそれに応えることが難しかったのだと思います。それに加え、Aさんはイメージしたものと現実とのギャップのズレが大きくなってしまうことも、Aさんと大人のズレの要因としてありました。

Aさんはごっこ遊びに必要なものを大人に作って欲しいと要求することが多く、完成品を見て違うと言ったり、一度、細かい部分を気にすると何度も修正や作り直そうとすることも多くありました。

また、思い通りにいかないと、イライラしたり、かんしゃくを起こすこともよくありました。

私たちスタッフは、Aさんの頭の中のイメージを理解するために、試行錯誤を重ねながら、Aさんの言葉1つ1つに耳を傾けながら、遊びを進めました。

つまり、何か特別な対応を取ったのではなく、丁寧に関わり続けたの一言に尽きるかと思います。そして、Aさんの「○○ごっこをして遊びたい!」といった、思いを大切にしてきました。

こうした対応を重ねることで、低学年時にはうまくかみ合うことが多くはなかったAさんとのごっこ遊びも、Aさんが求めているイメージが少しずつ理解できるようになり、かみ合うことも増えていきました。

これには、Aさん自身もごっこ遊びを通して、大人とイメージを共有することで、かみ合った経験、ズレ経験などをもとに、試行錯誤を繰り返したことも成長の大きな要因としてあるかと思います。

つまり、Aさん自身が、他者が持つイメージを理解する力がついてきたともいえます。

その後のAさんは、変わらずごっこ遊びを楽しんでいます!

もちろんイメージが大人とかみ合わないこともありますが、以前とは違い、大人が提案したことなども「いいね!」など、大人のイメージを理解する場面が増えてきたり、イメージがかみ合わない場合にも、イライラする様子は少なくなりました。

 

 


以上、療育の成果について-ごっこ遊びを通したイメージの共有-について見てきました。

当初は、Aさんはまだ低学年ということもあり、生活経験の少なさからくる認知発達の未成熟さや、大人との共有体験の少なさなどがあったかと思いますが、徐々に遊びを基点とした生活経験を重ねることで、これらの能力が高まったのだと思います。

一見すると、普段ごっこ遊びの中で、その意味などを考える機会は少ないのですが、こうした事例を通して遊びの意味を掘り下げることも、子どもたちの成長を振り返るためには必要かと思います。

それと同時に、支援者側の関わりの意味もより深く見えてくると感じます。

今後も日々の療育を大切にしていきながら、自分たちの行為の意味や、子どもたちの成長を振り返ることも行っていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

関連記事:「【療育(発達支援)で大切なこと】〝イメージする力″を育てることの重要性

 


療育実践で参考になる書籍一覧に関する記事を以下に載せます。

関連記事:「発達障害の支援に関するおすすめ本【初級~中級編】

 

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-成果, 療育

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