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療育の効果について考える【発達凸凹を対象とした特別なトレーニングに意味はあるのか】

投稿日:2022年10月24日 更新日:

発達凸凹とは、認知に大きな偏りが見られる人たちのことを指します。

そして、発達障害とは、発達凸凹+適応障害だと考えられています。

 

関連記事:「発達障害の3つのグループについて【療育経験を通して考える】

 

著者は現在、放課後等デイサービスで発達に躓きのある子どもたちに療育をしています。

その中には、発達凸凹の子どもたちも多く見られます。

療育をしていく中で感じる疑問は、自分たちが取り組んでいる療育に効果はあるのか?

もしあるのであれば、どういった要因が作用しているのか?

ないのであれば何が欠けているのか?などの素朴なものです。

 

そこで、今回は療育の効果について、臨床発達心理士である著者の経験談も踏まえて、発達凸凹を対象とした特別なトレーニングに意味はあるのかについて理解を深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「杉山登志郎・白柳直子(2021)教えて 発達障害・発達凸凹のこと.IAP出版.」です。

 

 

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療育の効果について考える【発達凸凹を対象とした特別なトレーニングに意味はあるのか】

以下、著書を引用しながら見ていきます。

最初は確かにぐんと伸びる。でも数年後には、療育を<した>グループと<していない>グループにあった差はなくなります。療育する・しないに係わらず、凸凹ごと、脳のはたらきが発達して追いつくからです。

 

正常なはたらきかけで対応している限り、それで何とかなってくれるのが発達凸凹。

 

著書の内容から、発達凸凹の子どもたちへの特別なトレーニングは、効果は見られるも、脳の成長に伴い、その効果の差はいずれなくなっていくと記載されています。

つまり、脳はある程度の年齢になると(10歳前後)自然と成長することで、これまで遅れていたかに見える状態もいずれは追いつくということが言えます。

もちろん、発達凸凹の子どもたちの状態像も多様であるため、脳の成長に伴い追いつく(周囲から見て気にならない)かどうかについて、早急に結論を出すことはできません。

また、知的な遅れがあると、定型児よりも全体的にゆっくりな発達曲線を描いて成長していくと言えます。

一方で、発達凸凹の子どもたちは、それだけ脳の成長が定型児と異なりゆっくりと成長していくといった視点を持つことで、子どもたちに対して行う過度な教育やトレーニングなどを見直すきっかけになると言えます。

 

関連記事:「発達凸凹の特徴について【脳の成長から考える】

 

また、療育にも様々な方法があります。

例えば、個別療育、集団療育、ソーシャルスキルトレーニング、運動療法、感覚統合療法、音楽療法、家族療法など様々あります。

そのため、療育内容や療育頻度(時間や期間)によっても捉えられる療育の意味合いは変わってくると言えます。

 

 


それでは、仮に発達凸凹の子どもたちにとって療育の効果がないのであれば、療育を受けることの意味はないのでしょうか?

そして、今回取り上げた、いずれは療育を受けずとも脳の成長に伴い発達が追いつくのであれば療育を受ける意味はないのでしょうか?

 

 


それでは、次にこの点について、著書の経験談を通しての見解を述べていきたいと思います。

 

著者の経験談からの見解

著者の療育経験から結論を先に言いますと、療育を受けるかどうかは、人によって異なるということです。

療育には様々なものがあります。

著者が勤める療育現場では、居場所支援や保護者支援などをはじめ、放課後子どもたちが安心して楽しく過ごせる場を提供することに重きをおいています。

そのため、○○療法など何か特別な方法などは活用していません。

もちろん、個別のニーズに沿って、課題となるものに対して、個別に働きかけることはしています。

しかし、それはあくまでも、能力を向上させる、スキルを向上させるといったこと以上に、子どもたちが楽しめる場を提供するといったことが支援の割合として大きいと思います。

その中で、部分的にスキルを学習するためのサポートなどは行うことはあります。

しかし、それはあくまで部分であり、大きな目標・目的ではないと考えています。

そのため、著者は療育の効果を考えることもしますが、それ以上に、子どもたちに「ここに通えてよかった!楽しかった!また来週も行きたい!」などといった、心を動かすような体験価値を作くることが大切だと考えています。

また、学校や家庭以外の居場所支援、他者との繋がりなどコミュニティ支援の視点も大切だと考えています。

 

まとめると、療育のニーズは人により異なり、その効果も異なると思います。

効果についてもスキルの学習といった点ではいずれは成長に伴い追いつくことも多くあるかもしれません。

一方で、保護者の安心感やレスパイト的な視点、居場所支援などにおいて療育の意味は非常にあると考えます。

そして、最も大切だと感じることは、子どもたちが日々を楽しく過ごすこと、そして、多くの経験から得られる自信を獲得することだと思います。

こうした心のエネルギーが満たされることで、次のライフステージを乗り越える力の獲得に繋がっていくのだと思います。

そのため、特定の能力を鍛えるといった視点以上、療育には様々な効果や意味があるのだと思います。

また、本人が無理せず楽しく行えているのであれば、そして、自信の獲得に繋がるのであれば、トレーニング的な療育にも意味が出てくるのかもしれません。

 

 


以上、療育の効果について考える【発達凸凹を対象とした特別なトレーニングに意味はあるのか】について見てきました。

こうして記事を書いていて思うことは、療育といった言葉が持つ意味の広さと深さです。

そして、療育は実際に関わるスタッフと療育を受けた人たちがどのようにその体験を振り返り、効果や意味があったのかを感じ・考えることが大切なのだと思います。

私自身、まだまだ未熟ですが、今後も療育を通して、子どもたが安心して楽しく活動できる場を作っていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

 


発達凸凹に関するお勧め書籍紹介

関連記事:「発達凸凹に関するおすすめ本【初級編】

 

 

杉山登志郎・白柳直子(2021)教えて 発達障害・発達凸凹のこと.IAP出版.

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