療育現場で発達に躓きのあるお子さんたちと接しているとスキンシップが取りにくい事例に多く出会います。
一方でスキンシップを非常に求めてくる子もいます。
そんな中、子どもたちを支援するスタッフにもスキンシップへの考え方に違いあります。
例えば、スキンシップはどんどん取った方が良いと思うスタッフも入れば、抱き癖などが付くので制限した方が良いと考える方もいます。
そこで、今回は療育におけるスキンシップの重要性について、著者の体験や考えも併せてお伝えします。
今回参考にする資料は、「山口創(2004)子どもの「脳」は肌にある.光文社新書.」となります。
スキンシップは必要か?
それではさっそく参考書を引用しスキンシップの重要性を述べたいと思います。
「抱っこ」や「おんぶ」についても、「子どもを抱くと抱き癖がつくからあまり抱いてはいけない」という意見もある。
しかし、抱き癖がつくことよりも、抱かれ足りないことから起こってくる将来的な心の問題のほうが、はるかに深刻であることは、これまで繰り返し述べてきたとおりである。また、自立を促すために早く親から引き離すよりも、特に乳幼児期にたっぷりとスキンシップをしたほうが、依存心を減少させ自立心を育てるのだということも、もうおわかりだろう。
抱っこ、おんぶ、添い寝は、ぜひお勧めしたいスキンシップなのである。
著者もこうした考えには同意します。
スキンシップを取りすぎて問題となった経験はこれまでなく、むしろ、取らなかったことで生じる心の発達の方が深刻であると思います。
それでは、次に療育現場での著者の体験談について述べます。
著者の体験談
当時未就学のA君
私が療育施設で働いていた頃に出会った自閉症のお子さんです。知的にも重度で発語もない6歳の男の子でした。
周囲にとても過敏に反応することが多く、私は最初、A君に触れることすらできませんでした。
彼との関係に変化が生じたのは、A君の好きな遊びを隣で模倣したことに始まります。この遊びを期に、A君は私の膝にのってくるようになりました。次に、私の手を引いて
お願いしてきたり、遊びに誘う姿が出てきました。
そして、その後は「抱っこ」が増えるなどスキンシップの関わりが増えていきました。
こうした変化の中で、A君の情緒は安定していった印象があります。
不安でぐずったりするとスキンシップを取って落ち着くことも増え、また、A君からスキンシップを求めてくる様子も多く、大人と体を使った遊びがよりできるようになりました。
以上、短いですが事例の紹介になります。
著者のコメント
A君のような事例は特に未就学の療育をしていると多く出会います。
スキンシップを通して、情緒が安定していくケースはこれまでの私の療育経験から豊富に見られます。
そのため、スキンシップがうまく取れない、手を繋げないお子さんなどの方が後の発達において気になる印象があります。
私自身、療育現場で、「抱っこ」、「手を繋ぐ」、「こちょこちょ」遊びなどをさりげなく取り入れながら相手との距離感を把握するようにしています。
こうしたスキンシップから相手がどのような対人距離を持っているのかを肌感覚で捉えることができると思います。
また、スキンシップがうまくとれない要因としても、様々あるかと思います。
例えば、感覚過敏がある、自閉症など発達特性があり人との距離感がわからない、スキンシップを大人とあまりとってこなかったなど様々な要因があるかと思います。
こうした要因をアセスメントすることもとても大切だと思います。
私自身、スキンシップが後の情緒・心の発達にとても重要であるということを理解しながら、今後も日々の支援に携わっていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
山口創(2004)子どもの「脳」は肌にある.光文社新書.