発達支援の現場(療育現場)には、様々な発達に躓きのあるお子さんたちがやってきます。
著者は長年療育現場に携わっていますが、子どもたちへの対応で非常に難しいと感じるのは、「叱り方」です。
子育てされている方や発達支援の現場で関わっている方には共通する悩みだと思います。
子どもが良き行動をしたときに「褒める」のは比較的行動として取りやすいと思いますが、難しいのは「叱る」方です。
特に発達に躓きのあるお子さんたちは、問題となる行動をとることがあります。問題行動(周囲が勝手にそう感じているものも含め)は、行動をとる要因や背景となる環境、発達段階などによっても異なってきます。
今回は、療育現場で子どもたいちへの「叱り方」について、著者の体験等も踏まえながらお伝えします。
今回参照する資料は、「本田秀夫(2021)子どもの発達障害:子育てで大切なこと、やってはいけないこと.SB新書.」です。
「叱り方」について
以下に著書を引用します。
叱り方のキーワードは「本気」です。子どもに行動を改めてほしいと思ったら、そのための方法を本気で考える。それが叱り方のポイントです。叱るのがうまい人はいろいろと考えたうえで叱るので、めったに子どもを叱りません。
著者の内容で大切な視点は、「本気」で叱るということです。そして、叱り方がうまい人は子どものことを「本気」で考えるため、むしろ叱ることが非常に少ないということです。
著者も療育現場で子どもたちの行動をよくよく観察していくと、行動には様々な要因が関連していることが見えてきます。
そのため、「叱る」というよりも、本人の気持ちを受け止めること、行動の意味を考え共感的態度で接すること、他の方法などを提案するなどの関わりに変化していきます。
こうした関わりは簡単にはできません。関わり手にも気持ちの余裕などエネルギーがないと難しく、また、長く子どもたちと関わってこないと行動の意味が見えてこないからです。
しかし、著者の現場感覚では、「本気」で子どもたちと向き合い、上記のような関わり方をとった方が、長い目で見たときに、子どもたちの自尊心や自己有能感などにポジティブな影響を与えることは確かだと思います。
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それでは、このような「本気」の「叱り方」を常に意識しないといけないのでしょうか?
著者の中では、さらに「叱り方」を3種類に分類しています。
それでは、次に「叱り方」の種類について見ていきます。
「叱り方」の種類について
以下に著書を引用します。
私は「叱る」は大きく3種類に分かれると思っています。
①教えるために「叱る」
②憂さ晴らしのために「叱る」
③その場をおさめるために「叱る」
親が子どもに行動を改めてほしいと思って叱っている場合、その効果があるのは「①教えるために叱る」だけです。
著書の中では、上記の①~③の3種類の「叱り方」があるとして、子どもの行動を改善するために効果があるのは、①の教えるために「叱る」だけだと述べています。
また、著書の中では、②と③のような「叱り方」がけっしてダメとは言及しておらず、上記のような3種類の「叱り方」があることを認識し、最終的に子どもの行動を本当の意味で変えるには①の「叱り方」が大切だとしています。
著者も、仕事上での関わりですので、②の憂さ晴らしのために「叱る」ということはありませんが、ご家庭の保護者などにとっては非常にストレスフルな環境下での育児であれば②のようなことが起こってしまうかもしれません。
また、③のその場をおさめるために「叱る」ということは、私は時々行います。どうしても集団行動などでトラブルが収まらず、トラブルが膨らんでいきそうなときなど、その場を一時的に収めることを目的に「叱る」ことがあります。
著者の内容を読んでこのような「叱り方」の種類を意識することで、今自分がどのような関わりかを子どもたちにしているのかを客観視することが重要だと思います。
そして、①の教えるために「叱る」ことが大切だということを再認識しました。
冒頭にも述べましたが、発達に躓きのあるお子さんたちは、大人側すると行動の意味がよくわからない・わかりにくい問題とされる行動をとることがあります。
しかし、その行動には様々な意味があること、様々な要因があることを考えていく必要があり、こうした子どもたちの行動をポジティブに改善するためには、教えるために「本気」で「叱る」ということが大切なのだと思います。
私自身、目まぐるしく変わる現場の子どもたちの行動に対して、少しでも後の発達が豊かになるような関わりをしていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
本田秀夫(2021)子どもの発達障害:子育てで大切なこと、やってはいけないこと.SB新書.