療育で大切なことには、様々なものがあるかと思います。
今回は、著者の療育経験も踏まえ、「積極性」と「達成感」をキーワードに、療育で大切なことをお伝えします。
今回、参照する資料は「平岩幹男(2012)自閉症スペクトラム障害:療育と対応を考える.岩波新書.」です。
「積極性」と「達成感」について
以下に著書を引用します。
どのような療育方法を使ったとしても、対応には共通する部分があります。(略)脳の防火壁を壊して刺激を入れるにはどうするか、どうすれば子どもが「積極的に」行動するようになるのか、どうすれば子どもが「達成感」を得ることができるようになるのか、こうしたことを引き出すことが対応の基本です。
著書の内容から、療育の基本対応において共通する点があり、それが「積極性」と「達成感」を引き出すことだとされています。
著者も長年療育に携わっていますが、この「積極性」と「達成感」を引き出すことは子どもたちとの関わりにおいてとても大切だと実感しています。
「積極性」を引き出すためには、動機付けの視点がとても重要です
つまり、子どもが何に興味を示しているのかを良く観察し、一緒にその活動を共有することです。
そして、興味のある活動を通して、「達成感」を得る機会が増えていきます。
「達成感」を得るとまた、次の活動への意欲が高まるなど「積極性」がさらに引き出されます。
つまり、「積極性」は行動への動機、「達成感」は行動の結果といったように同時に進行していくのだと思います。
それでは次に、この二点の大切さについて著者の療育経験からお伝えします。
著者の経験談
小学3年生のA君は放課後の過ごしとしてゲーム以外になかなか興味を持てるものがありませんでした。
我々スタッフは、A君が好きなゲームをベースに、ゲームに出てくる武器作りを実際に作ることはできないかを考えました。
あるスタッフはがYouTube上でちょうど良い、段ボール工作の動画を発見しました。
それをA君に提案したことで、A君は段ボール工作に少しずつ興味が湧いてきました。
そこで、A君と一日の活動で一つの段ボールの武器を作るという目標を立てました。
もちろん、完成しない場合には次回に持ち越します。
こうした計画立てた取り組みの結果、A君はスタッフと段ボールでの武器作りを楽しみに事業所に通うようになりました。
一つ武器ができると「達成感」が得られ、次の活動への動機付け、つまり、「積極性」が引き出されます。
こうしたA君の興味関心をベースに、「積極性」と「達成感」が徐々に引き出されていきました。
こうした「積極性」と「達成感」は他のお子さんとの関わりでも良く見られます。
そのため、療育で大切な基本対応だということが確かに著者の経験を通しても実感としてあります。
療育というと何か特別な技法や方法などを想定される人もいるかもしれません。
もちろん、特別な技法や方法の活用も状況や場面によっては必要だと思います。
しかし、A君の事例のように以外にもシンプルに思える対応がとても大切だということも事実としてあります。
私自身、今後も専門的な療法の方法を学びながらも、今回取り上げた、「積極性」と「達成感」を引き出せるような関わりにも力を入れていきたいと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
平岩幹男(2012)自閉症スペクトラム障害:療育と対応を考える.岩波新書.