発達理解・発達支援・ブログ

人間の多様な理解と支援を目指して!

大切なこと 療育

療育で大切なこと【〝振り返る力“を育てることについて考える】

投稿日:2022年12月31日 更新日:

療育(発達支援)には、大切なことが多くあります。

その中で、例えば、何か物事がうまく行かない、進まないという子どもたちが、次にうまくいくためには、〝振り返る力“を育てることが大切になります。

つまり、〝振り返る力“とは、うまくいかなかったことについて、何が原因で次にどうすればいいかを考えることです。

 

それでは、〝振り返る力“を育てるためには、どのような取り組みが必要となるのでしょうか?

 

そこで、今回は、療育で大切なことの中で、〝振り返る力“を育てることについて、臨床発達心理士である著者の経験談も交えながら考えを深めていきたいと思います。

 

 

今回参照する資料は「岡田尊司(2017)子どものための発達トレーニング.PHP新書.」です。

 

 

スポンサーリンク

療育で大切なこと【〝振り返る力“を育てることについて考える】

著書の中では、〝振り返る力“を育てるためには以下のような事が大切だとしています(以下、著書引用)。

最近あったことを思い出して、その状況を話してもらうことが、とても大事なトレーニングになります。最初は自分のしたことや経緯さえよく覚えていないということも多いのですが、話を丁寧に聞いていくうちに、段々思い出せるようになったり、順序立てて話すことができるようになったりします。きっかけやそのときの気持ち、自分の反応の仕方、もっといい対処などについて考えるアプローチは、認知療法と呼ばれるトレーニング法です。

 

著書の内容から、〝振り返る力“を育てるために大切なことは、最近の出来事を思い出しその内容を話すということが良いトレーニングになると記載されています。

もちろん、こうした言葉による振り返りは、言語能力に依存しているため、言葉によって考える力、言葉によって自分の思いを伝える力などが発達・成長している必要があります。

このように、〝振り返る力“には、一定程度の言語能力が必要となり、自分の体験を思い出すことを繰り返していくことで、思い出す力、話の内容をまとめる力がついてきます。

そのため、〝振り返る力“を育てるためには、まずは言葉で様々な出来事を他者に伝える力と、他者に伝えたい経験があることが重要になります。

もちろん、経験を思い出しながら話をまとめるためには、大人が言葉を補うなどの手助けが重要です。

このように、起こった出来事を言葉で思い出す力が育まれていく中で、自分の行動のどの点がいけなかったのか、そして、修正・改善すべき点はどこにあるのかを大人と一緒に考えていくことで、次に繋がるプラスの行動が取れるようになっていきます。

著書にもあるように、こうした考え・行動を修正する取り組みを認知療法と言います。

認知療法とは、これまでもっていた考え方を別の視点から見るように練習し修正する方法であり、思考の変化、そして行動のプラスの変化を生じさせるものです。

 

 


それでは次に、著者の体験談から〝振り返る力“が育まれた経験談について見ていきます。

 

著者の経験談

小学校6年生のAちゃんの例を取り上げます。

知的遅れのあるAちゃんは、自分の経験や思い、そして考えを言葉にすることができます。

一方で、Aちゃんはうまくいかないことがあると、大人に強く当たる場面が多くあります。

それも言葉にする前に、かんしゃく気味になります。

著者は、Aちゃんが落ち着いている時に、以前見られたうまくいかなかった体験について一緒に振り返るようにしています。

以前のAちゃんはなかなかうまくいかなかった体験を思い出すことができませんでした。

しかし、著者や他のスタッフなどと思い出す作業を一緒にしていくことで、徐々に体験を言葉でまとめていくことができるようになってきました。

 

そして、次のステップです。

うまくいかなかった体験の中で、著者と一緒にどうすればうまくいくようになるのかを考える取り組みをしていきました。

最初は、ほとんど著者のアイディアを取り入れるか、よくわからないといった曖昧な発信が多く見られました。

しかし、回数を重ねていく中で、Aちゃん自身の言葉から改善方法を提案してくるようになりました。

そして、実際に改善策を実行しうまくいく機会が増えたことで、Aちゃんは体験を言葉にして、その体験から改善策などプラスに繋がる次への行動を考える頻度が増えていきました。

著者はAちゃんとの関わりから、〝振り返る力“を育てるためには、過去の失敗経験を言葉で思い出しまとめていく力、そして、その中で改善方法をAちゃんと大人が一緒に考えていき(はじめは大人が先導となる)、その方法がうまくいったという成功体験を少しずつ積み重ねていくことが非常に大切なことであると実感させられました。

 

 


以上、療育で大切なこと【〝振り返る力“を育てることについて考える】について見てきました。

“振り返る力”を育てることは療育においてとても大切なことです。

しかし、この力を育てるためには、時間を要します。

私自身、まだまだ未熟ではありますが、今後も療育で大切なことを自らの経験を〝振り返る“ことで日々アップデートしていきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

岡田尊司(2017)子どものための発達トレーニング.PHP新書.

スポンサーリンク

-大切なこと, 療育

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

療育の成果について-感情のコントロールについて-

療育の成果について、どのような働きかけが成果に繋がったのかを特定することは難しいことです。まず、何を持って成果と言えるのか、そして、成果には様々な要因が絡んでいるからだと思います。 さらに、成果(変化 …

分かち合いコミュニケーションについて-療育経験を通して考える-

療育現場では様々な子どもたちと心の交流があります。 例えば、遊びを通して楽しかったという経験やうまくできなかったという経験などを共有することです。 こうした心の交流とはある意味、ことば文化を共有するこ …

【療育(発達支援)の専門性】オーダーメイドの支援で大切なこと

著者は長年、発達障害など発達に躓きのある子どもたちへの療育(発達支援)をしてきています。 子どもたちとの関わりを通して、子どもたちにはそれぞれ異なる〝心″があり、そして、異なる〝発達″を辿るということ …

関係の質の違いが子どもの行動を変える-療育現場で関わりの難しい子どもの事例を通して考える-

療育現場で子どもたちと関わっていると、子ども⇔大人といった二者関係の違いによって子どもの行動にも様々な違いあるように思います。 例えば、A君にとって大人のTさんは工作遊びが得意といったよく遊んでくれる …

感覚統合について【療育現場で活かすために】

発達障害など発達につまずきのある人たちの中には独特の感覚が見られる場合があります。 例を挙げると非常に多くのものがあります。 例えば、落ち着きがない、高い所に登るのが好き、よく体を何かにぶつける、不器 …